漫画レビュー33 キングダム
久しぶりの漫画紹介レビューです!
この漫画の1巻を読んだのが約2ヶ月前。
ようやく63巻まで読むことができたのでレビューしてみたいと思います。
今回の漫画はこちら「キングダム」
作者:原泰久
週刊ヤングジャンプにて2006年から現在まで連載中。
まずネタバレについてですが、実は中国の歴史を知れば大体のネタバレになってしまいます。
この漫画は紀元前230年くらい前、つまり約2250年前の中国統一の史実を基盤に描かれています。
でもあまりにも古すぎる歴史の為、残存している歴史書にも限界があるでしょうし、その時代の人間の思惑も多分に含まれているでしょうね。
作者である原さんはその隙間を埋めるようにして物語を展開しています。
その埋もれた歴史に彩りを与える才能がずば抜けていることや、漫画の構成が秀逸なので人気が爆発してアニメも4期と続き映画化もされています。
この漫画。63巻もある上に戦闘シーン以外での文字量は結構多いので読むのにとても時間が掛かりました。
2ヶ月で読みましたが、大分早いペースで読んでいます。
漫画を30年読んでいる自分でもこれだけ時間が掛かったので、一度ハマってしまうと仕事以外の時間を費やしてしまうので注意が必要です。
一度世界に入り込んでしまうと時間の許す限り読み続けてしまう魔力がありますね(~_~;)
63巻で14年間と長期連載ではありますが、作者様ご本人の発言と史実の進行度合いを考えると少なくとも100巻は越える計算になります。
原さんのモチベも下がっていないのですごい漫画家だと思います!
ちなみに自分は歴史に詳しくありません。
日本史ですらうろ覚えですが、この漫画は読んでいく内に流れで歴史背景が理解できるので、いちいち勉強する必要はないです。
むしろ勉強してしまうとこの先の展開が大体読めてしまうので調べない方が良い可能性までありますw
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では漫画自体の話に入ります。
第1巻は紀元前245年からスタートします。
当時の中国は7国に分かれていました。
その内の一番左側に位置する「秦」という国の最低層の身分である「下僕」(げぼく)という立場の人物の成り上がりを中心に描かれていきます。
もちろん他の6国の思惑も複雑に絡めて描写されています。
その「下僕」の主人公は「信」(しん)。10代半ばの少年です。
孤児である村の少しだけ有力者の奴隷のような立場で働いて生活していました。
下僕なだけあって待遇は悪く、ボロ小屋の藁で寝泊まりするような生活です。
彼には「漂」(ひょう)という同年代の同じ身分の相棒がいました。
彼とともに雑用仕事の合間に木刀で剣術鍛錬をしていました。
このように戦いの描写は迫力があります。
夢はいつか2人で大成すること。具体的には武将の華である「天下の大将軍」になることでした。
「信」は短絡的で本能で動く脳筋タイプ。
「漂」は思慮深い知能タイプです。
2人の剣の腕はほぼ互角ですが、1000回以上もの立ち合いを繰り返していて実戦経験はないものの一定以上のレベルに達していました。
ある日、立ち合いを士族に見られ漂を王宮に士官させたいと持ち掛けられます。
漂は申し出を受け1人王宮へ。
残された信は村での生活を続けていましたが、ある時 王宮での王室争いでの内紛が勃発したという噂を耳にします。
漂は大丈夫なのかと心配をしていたその夜に信の小屋へ血だらけの漂が訪れます。
要約すると第一王子に仕えていたけど第二王子の反乱により追い詰められた。この地図の場所へ行け。あとは頼む。といった内容を伝えられます。
漂は「俺はもう助からない。天下の大将軍になれ。」と言い残しこの世を去ります。
地図を託された信は旅に出ることにしました。
信は地図の場所へ行き、そこで運命的な出会いを果たします。
上記の秦国の王「政」(せい)そのものです。
「政」は弟に内乱を起こされ何とか逃げ出せたところでした。
そこに漂を殺した刺客も現れ………
この政との出会いからキングダムの物語は大きく展開していきます。
信は政との出会いを機に下僕から戦果を上げ続け成長し、出会いと別れを繰り返しながら目まぐるしい速度で昇格していきます。
まずは王宮の奪還。
そして中華統一(中国統一)を目指していきます。
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「信」は歴史上に実在する人物ですが謎の多い人物でもあるそうです。
でもだからこそ想像できる隙間が大きく、また下僕からの成り上がりという歴史を下の立場から多角的に見ることができる人物として最適だとして主人公に抜擢されたのでしょう。
最初は作者も「秦」国の王である「政」を主人公にするか迷ったみたいですが、戦国の世である中華統一を成すまでの過程には数えきれないほどの戦場を描く必要があるので武将である「信」を基盤にしたのだと思います。
この戦国世界では戦争をする際 一兵卒である歩兵からスタートです。
いわゆる数に数えられるだけの新兵からですね。
信も「政」との出会いからのごたごたから解放後は歩兵から始まりました。
歩兵は5人1組で組まされます。
その5人組のことを「伍(ご)」と呼び、班長のようなリーダーを決めて5人1組で戦場に赴きます。
武将の出世をざっと言うと 100人将、1000人将、3000人将、5000人将、将軍(10000人のトップ)、更にその上の立場の大将軍と段階があります。
信も例にもれず「伍(ご)」の段階を踏んでいきますが、63巻時点ではまだ大将軍になれていません。
作者である原さんは歴史の穴を想像や一部の解釈で丁寧に埋めています。
そして基本的に戦争を長尺で取り上げているので大きな戦いともなると何巻も費やします。
その戦争の見ごたえや戦果の上げ方がすごいのです。
初めて人を殺す重み、人を殺せなくて逆にすぐ殺されるなんてこともざらでその心理なんかも詳細に描かれています。
最初は人 対 人での戦闘がメインです。
少人数戦や大人数でのぶつかりなどシンプルです。
こういう戦いに入ったところまで読むともう引き返せません。
すでに漫画にハマったとみて良いでしょう。
でも巻数が進んで信が武将として成り上がるにつれ、陣形や相手の裏をかく戦略・心理戦なんかもこと細かに描写されていきます。
ここでこの漫画「キングダム」についての注意点を。
この漫画は戦いをリアルに生々しく描いています。
人殺しが毎回のようにありますし、時に人の残虐性や戦争犯罪のような描写も多々あります。
欠損も多いし、身体のどこでも斬られますのでその部分に関してのマイルドさはありません。
大人向けであることは間違いないですし、苦手な人もいるでしょう。
戦闘をいくつか見て「グロッ!これ無理だ。」と思ったら無理に読まなくても良いと思います。
それと武将や敵の中には残虐性の強いキャラもいくらかいます。
時々 拷問などの場面もあるのでそういうのが苦手な人は残酷シーンはいくらかページを飛ばしていくのもアリですね。
まぁ大体の人は苦手だと思いますがw
自分も敵への見せしめや戦意喪失を狙ったり、快楽に溺れる場面できついと思う時がいくらかありました。
そういう侵略戦争のリアルもこの漫画には結構ついてきますので、込み込みで総合的に楽しめればそれが一番ですね。
個人的見解ではありますが、戦闘・戦争が9割、政治が1割といった体感です。
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実は中国ではこの漫画の評判はあまり良い方ではないとの話もあります。
どうやらあまり歴史に興味がない人が多いのと、三国志のような有名な武将が活躍する話の方が燃えるからだそうです。
というより紀元前の中華統一や始皇帝への興味が薄いようです。
資料が残っていないということもあるのでしょう。
原泰久さんは歴史に埋もれた部分を想像して創造して膨らませてしかも面白いと思えるように構成しているのですごい才能の塊だと思います。
題材が題材なだけに面白く膨らませるのは難しいことでしょう。
日本で言うなら織田信長や秀吉 家康ではなく邪馬台国の一兵卒の話を取り上げているようなものかも…。
紀元前の戦国時代をリアルな戦場目線で描かれる世界を堪能できますのでぜひ大人にオススメしたい漫画の1つです!
ただ残虐な戦争というだけでなく、死んだ者の想いを生き残った人が背負っていくという場面もあり感動的で涙してしまう場面が何度もありました。
もし興味があれば読んでみてくださいな(*'▽')
1話の試し読みはヤングジャンプにてどうぞ↓↓
巻数が多いので漫画喫茶などで試しに何冊か読んでみることをオススメします。
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では今回はこんなところでノシ
メルカ