待ちに待った春玉の頃~春を彩る野菜達に心が躍ります~
春に旬の野菜がたくさん出てきました。
菜の花、アスパラガス、スナップエンドウ、たけのこ等々。
一年中目にするきゃべつも、春に旬な野菜達の代表格です。
〔春玉と寒玉〕
早春に出回るきゃべつは、球のしまりがふんわりと緩く葉質が軟らかい。
中まで鮮やかな黄緑色は目にもさわやかで、このタイプが春玉です。
食べると水みずしく甘みがあるため、レタスと同様にサラダ感覚で食べられます。
さっと一塩して即席漬けもありです。
この時季の春きゃべつが、私は大好物です。
サラダに良し、焼き肉に巻いても良し、いくらでも食べられるので野菜不足の心配がありません。
また、野菜料理が苦手という方にも、この季節のきゃべつは、手軽に食べられると人気です。
一方、きゃべつの球に隙間がないほど葉がしっかり巻き込み、内部が真っ白な品質を寒玉と言います。
極寒を超えて甘みは増していますが、葉が硬いため人気が今ひとつです。
ただし、煮込んでも煮崩れせずだし汁をよく吸うので、ロールキャベツ等の煮込み料理にとても合うと思っています。
また葉が水っぽくない為、炒め物にも向いています。
春玉、寒玉それぞれに合ったきゃべつ料理を楽しむと良いですね。
〔きゃべつとキャベジン〕
きゃべつは別名、球菜(たまな)・甘藍(かんらん)と言い、甘みはしょ糖によるものです。
栄養としては、100g当たり23㎉とヘルシーで、ビタミンCを41㎎含み、他の白食の結球葉野菜と比べても多い方です。
また、胃腸障害に有効とわかっているビタミンUを含むのも特徴です。
きゃべつとキャベジンの関係については、よく聞かれる質問です。
管理栄養士として簡単にご説明します。
ビタミンUは、他のビタミンとは異なってビタミン様の物質です。別名キャベジンといわれ、同じ名前の胃腸薬であまりにも有名です。
きゃべつの汁から発見されたキャベジンが、胃腸壁の修復に効果があるとして薬として販売されています。
キャベジンの正式名称は、メチルメチオニンスルホニウムクロリドといって、胃粘膜修復剤の働きをします。
きゃべつの汁の抗潰瘍成分として見つかった成分で、荒れて弱った胃粘膜を修復し胃を整えてくれることは知られています。
生きゃべつにはこのキャベジンが大量に含まれているため、健康な人の食べ方としては生で食べることがおすすめです。
しかし、すでに胃炎や潰瘍がある方は、きゃべつの繊維が消化の負担になるため、他の材料と一緒に煮て食べたほうが胃に優しいと言えます。
薬効と食品として食べる効果とは異なりますので、きゃべつをたくさん食べれば胃腸に良い、ということは必ずしもないと考えます。
〔きゃべつの品種はとても多い〕
きゃべつは歴史が古く、食材図鑑によると紀元前後にイタリアで初めて結球性きゃべつの記載が見られたと言うのです。
日本には18世紀初めの記載があり、本格的な導入は幕末になってからです。
最初は外国人居留地向けに生産されていたそうですが、徐々に日本人にも利用者が増えていきました。
明治末期から大正の初めには、一般的に食べられるようになったそうです。大正から昭和にかけて日本人の口に合う品種も育成され、時代と共に種類は分化してきました。
戦後は、給食用にも消費されるようになって、作付面積も生産量も拡大していったとのことです。
当時は蟯虫等の健康被害があり、生で食べず必ず加熱調理をしてから食べたと祖父母から聞いていたことを、私は思い出しました。
きゃべつは、大きく分けて三つの種まき時期と収穫時期の組み合わせがあり保存もしやすく、一年中食べられる野菜として家庭でも重宝されています。
① 春から初夏まき群
春から初夏に種をまき、夏から秋に収穫するグループで、高冷涼地で栽培されている高原きゃべつがこのグループです。
高温期の栽培に耐えているため、葉は多汁ですが、とうだち(花茎が伸びる力)は早く、結球のしまりが悪いため、生産も流通も今ひとつ困難と言われています。
②夏まき群
夏に種をまき、晩秋から初春にかけて収穫するグループです。
夏まき早生は年内に収穫するため栽培は難しくなく、夏まき中生は厳寒期に収穫されるため耐寒性があるそうです。夏まき晩生は初春に収穫されるので、夏まき群はほぼ一年中出回っていることになります。
夏まき中生から晩生の品種が、いわゆる寒玉と言われています。
③ 秋まき群
秋から冬にかけて種をまき、初春から初夏にかけて収穫するグループです。秋まきでも極早生はとうだちがしにくく、秋に早まきしてもとうだちしないそうです。
春玉とよばれ、葉が軟らかくみずみずしいのが特徴です。
秋まき極早生の中でも、特に葉がふっくらと軟らかく、多汁で球の中にまで黄緑色を帯びている品種を、晩冬から初春のこの時季に見かけます。
水みずしくて味が良いと言うことで大変人気が高い品種です。
私は、品種のきゃべつが手に入ると、さっと洗って水を切り、そのまま手でザックリとちぎって食べます。
そのまま食べても美味しいのですが、少量の塩、辛しマヨネーズ、みそ、アヒージョ、オリーブオイル等でサラダ感覚で食べると、さらに美味しくいただけます。
野菜不足や野菜が苦手な方には、手軽なのでおすすめです。
なお、赤きゃべつ(紫きゃべつ)もあります。
葉面が紫色ですが、普通のきゃべつと同じ仲間なのです。表面は紫色ですが葉肉は白色です。
紫色はアントシアニン系色素によるもので、子供の頃実験で行ったことがあると思いますが、酸性で赤くきれいに発色します。
従って、適度に切って茹でた紫きゃべつを、酢と油を使ったドレッシングで和えることで鮮やかな赤に発色し、緑色のサラダに添えるととてもきれいです。
きゃべつは分化した品種がいくつもあり、種類は種をまく時期によっても相当数あるそうです。
それぞれの時期の特徴を活かして、きゃべつ料理の使い分けを楽しんでいただけたらと思います。
今回もありがとうございました。