職員確保における、介護職のメンタルヘルスケアの重要性
介護現場では慢性的な人員不足が続いており、人材確保も困難である中、人材流出についても深刻な状況です。
このデータから推測するにも介護職員に関して、他の事業よりも職員の離職が多く、営業所単位では職員の流入よりも流出に関してマネジメントを要する箇所も出てくるのは容易に想像がつくでしょう。
本記事では、介護職における人材流出の要因と、組織全体で取り組むべき施策について解説していきます。
人材流出に関する2つの要因
身心状況の悪化
介護職員に関しては不規則勤務を行うものの、法定健康診断が年二回と義務付けられているが、法定健康診断のみで十分な機能を果たせている訳ではありません。
例え腰痛があろうと、精神的に働くことが困難になりつつあっても収入が減る、昇進に響くと考え、介護職員自体も素直に申告することは少なく、検診で見つかるような大病で仕事をセーブすることになるのは稀です。
昨今はいかに職員への負担を軽減するためICT導入を勧められるかに関して介護保険制度自体も注力し始めているのが現状です。
法定検診のみで満足し、現状の身体的負担を軽減する施策を講じない事業所は更なる離職や採用に苦戦を強いられるのは間違いない所でしょう。
こと身体上の健康管理に関しては女性の多い業種であり、妊娠等の本人も打ち明けるタイミングを常にうかがいながら職務に就く。もしくは言い出せずにカミングアウトと同時に退職をすることも個人的には多い印象です。
精神状態の悪化に関しても年一回のストレスチェックが事業規模によって必須となっているがそれをもって管理、把握できているかと言えば殆どあてには出来ないものが現状です。
職員側としても年一回のストレスチェックで異常値を出すと産業医の面談や配置転換や昇進への影響を懸念し、ストレスチェック自体を本来の状態どおりに記述しない事は想像にたやすいでしょう。
しかし職員個人のセルフケアに頼るだけでは限界があり、自身の精神状態悪化を早期に察知することも困難です。
また、職務外での大きな精神状態悪化の起因について組織内では察知することは不可能であり職員個人の精神的セルフマネジメントやセルフケアの方法を習得している必要が就労を続けていくうえでは必要です。
職場環境の悪化
職場環境の悪化を理由に退職をする職員が一定数存在し、これに至っては職員の多くに影響を及ぼす因子と言えます。
また、役職者や改革を進めるうえで孤立感を感じた役職者や、ミッションを遂行しきった後に訪れるバーンアウトにおいては中核職員にの多く組織において大きな痛手になるでしょう。
では組織として取り組むべき離職予防の観点から講じることの効果的な対策方法を用意する必要があります。
組織全体で取り組むべき施策
セルフケア・セルフマネジメント
職員全体に画一的に行うべき施策として、セルフケア、セルフマネジメントの手法を研修等で習得させることが一定の効果を上げます。
また、職員同士の衝突に関しても、関係性の悪化を引き起こすのは自らの思考による部分が大きく、一時的な感情をアンガーマネジメントコントロールする事によって離職防止、職場環境全体の悪化を回避する事にも大きく寄与します。
また、身体的、精神的セルフケアの手法が確立できずバーンアウトする職員は新卒、中間管理職等の環境の変化によって引き起こされる事が多く、転居、結婚等のライフプランにおいても同様であると言えます。
介護業界においては常に人材不足であり、頻繁な配置転換もストレスの要因となり得るため、企業側として、セルフケア、セルフマネジメントに対する研修会、助成費用等の福利厚生を確立することが全員に一定の効果をもたらします。
個別面談の有用性
定期的、積極的に面談という職員個人に時間を消費する行為は単純接触効果だけではなく、スタッフ一人一人に配慮を行える事業所であると伝える機会にもなるでしょう。
職域内外の情報を面談によって獲得することにより、メンタルダウンやバーンアウトの早期発見、未然の防止にも大きく寄与し、離職防止に大きな効果を発揮が期待できると考えます。
また、内部のハラスメント対策室や直接上長への相談が大きな心理的ハードルを生む場合も多く、義務付けられている産業医も同様で、なかなか相談の窓口としては壁が高く、完全外部のコンサルタントや相談窓口を積極的に推進することも重要な福利厚生の一環になると思われます。
執筆協力 ケアマネ介護福祉士