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#読書感想文

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文芸書から自己啓発書まで、読書感想文として書き留めています。ご参考になれば幸いです。
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#川上弘美

川上弘美(2006)『ざらざら』の読書感想文

川上弘美(2006)『ざらざら』の読書感想文

川上弘美の『ざらざら』を新潮文庫で読んだ。2006年にマガジンハウスから出版され、2011年に文庫化されている。もとは、「Ku:nel(クウネル)」で連載されていた短編集だという。解説は吉本由美である。

川上弘美の文体はなめらかである。決してその巧みさを強調したりはしない。描かれる世界も特別ではないように思わせるが、特別な世界を描いている。

この『ざらざら』の登場人物たちは、当たり前のように恋

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川上弘美(2003)『ニシノユキヒコの恋と冒険』の感想

川上弘美(2003)『ニシノユキヒコの恋と冒険』の感想

川上弘美の『ニシノユキヒコの恋と冒険』を新潮文庫で読んだ。単行本が2003年に出版され、2006年に文庫化されている。

読了して、まず思ったことは、なぜわたしの人生にニシノユキヒコは現れないのだろう、ということであった。

ニシノくんは、色男である。川上弘美は、現代の光源氏として、『源氏物語』の翻案として、『ニシノユキヒコの恋と冒険』を創造したのだと思われる。

十人の女性の目を通して、読者はニ

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川上弘美(2009)『これでよろしくて?』中公文庫の感想

川上弘美(2009)『これでよろしくて?』中公文庫の感想

川上弘美の『これでよろしくて?』を中公文庫で読んだ。2009年に中央公論社から単行本が出版され、2012年に文庫化されている。解説は長嶋有だ。

この小説は専業主婦の菜月が主人公で、井戸端会議的なサークル活動と夫の家族問題が主軸である。

川上弘美らしい飄々とした文体で、重苦しさはない。専業主婦になったとき、直面しなければならない問題が描かれていく。

それは夕飯の献立といった日々の営みのことであ

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