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#読書感想文

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文芸書から自己啓発書まで、読書感想文として書き留めています。ご参考になれば幸いです。
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2023年8月の記事一覧

#読書感想文 岸本聡子(2022)『私がつかんだコモンと民主主義 日本人女性移民、ヨーロッパのNGOで働く』

#読書感想文 岸本聡子(2022)『私がつかんだコモンと民主主義 日本人女性移民、ヨーロッパのNGOで働く』

東京都の杉並区長である岸本聡子の『私がつかんだコモンと民主主義 日本人女性移民、ヨーロッパのNGOで働く』 を読んだ。

2022年7月に晶文社から出された単行本である。

本書では、岸本聡子が政治家になる前の活動家時代のことを知ることができる。彼女は1974年生まれの、いわゆるロスジェネ。彼女の5人きょうだいはみなロスジェネで、正社員になれたのは弟さん一人だけだと言う(p.72)。何とも過酷だが

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#読書感想文 柳美里(2017)『JR上野駅公園口』

#読書感想文 柳美里(2017)『JR上野駅公園口』

柳美里の『JR上野駅公園口』を読んだ。

わたしが読んだのは2017年出版の河出文庫版で、単行本は2014年に出版されている。

2020年にアメリカの全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞したことは記憶に新しい。

正直に言うと、わたしは柳美里が苦手だった。赤ん坊を抱く自分を単行本の表紙にしてしまう豪胆さに面を食らって以来、勝手に距離を置いていた。ただ、彼女は演劇出身であり、パフォーマンスをして、観衆

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#読書感想文 遠藤周作(2021)『深い河』

#読書感想文 遠藤周作(2021)『深い河』

遠藤周作の『深い河(ディープ・リバー)』を読んだ。2021年に出された改訂版の講談社文庫である。解説は研究者の金承哲。

『深い河』は1993年6月、遠藤が70歳のときに出版されている。彼は1996年に73歳で逝去してしているため、晩年の作品と言えるだろう。

深い河とは、ガンジス河を指す。妻を亡くした磯辺は妻に生まれ変わると告げら、日本人の生まれ変わりだと話す少女のいるインドに向かう。

磯辺、

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#読書感想文 遠藤周作(1988)『私にとって神とは』

#読書感想文 遠藤周作(1988)『私にとって神とは』

遠藤周作の『私にとって神とは』を読んだ。1988年に光文社文庫より出版されたものである。

遠藤周作は文学史的に言えば、第三の新人である。1923年生まれで戦中と戦後を生きた作家でクリスチャンとして知られている。

本作は、これまで人に質問されてきたことを遠藤周作自身がまとめて、質問と回答を構成している。自作自演の、ちょっと変わった趣向のインタビュー本である。

遠藤周作は母親が離婚をして、母親の

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