自分の頭を飼いならせ
定期的に腰を痛めてしまうわたし。つい最近も、ふとしたことで腰を痛めてしまい、家にこもりがちな日々を送っていた。だから、ここ最近はアッとなるような出来事がまったくなく、少し困ったまま今回のエッセイを書きはじめた。
そんな中でも、最近頑張っていることといえば、”夜更かしをせずに寝ること”だろうか。(――そんなこと、頑張ってるの?…そう、そんなことを頑張ってるの)
今年に入り、フリーランスの仕事一本で生計を立てるようになってから、”眠れない日々”がはじまった。朝から晩まで自宅で仕事をするようになって、会社に行って仕事をする・家に帰るといった日々の運動が激減。今までより体が疲れなくなり、眠りづらい体質になってしまったのだろう。
そんなわけで、ここ半年わたしを悩ませている”眠れない”を克服すべく奮闘中なのだが…。さまざまな「眠る方法」を試す中で、自分のある癖を見つけた。
それは、一度”考えること”がはじまると、永遠にいろんなことを考えてしまう癖だった。
たとえば仕事のことを考えていたとする。すると、過去に勤めていた職場の仲間や、それにまつわるエピソードを思い出し、そもそもなぜその職場で働くことになったのかを掘り下げ、最終的には学生時代に関わった人たちや彼らが話していた言葉、自分がどんな子どもだったのか、少しだけ遊んだ友達のこと、大切だった本の内容、図工で作った作品への思い入れ、図書館までの道のり、乾燥したラベンダーの花の香り、昔住んでいた家の間取り、その部屋に飾ってあった絵のこと……など芋づる式に記憶が呼び覚まされ、それらを果てがないほどに考え続けてしまうのだった。
少しでも気になることや不安なことがあると、”考えること”はすぐにはじまってしまう。これを止めないと、わたしはいつまでたっても眠りにつけない。一度、この”考えること”を止めずにいたところ、結局朝まで考えに考え続けてしまい、精神的にも肉体的にも大きなダメージを負った。
だから今は、ベッドに横になったあと何かを考えそうになると、頭の中にいるわたしが「ヤメヤメ!今は寝る時間!」と叫び、両手を振って思考を阻止している。
このように自分が少しでも早く眠りにつけるよう、日々意識はしているのだが、気を抜くと堰を切ったように”考えること”がはじまるのだから、厄介だ。そうして定期的に記憶が掘り起こされるからか、ときどき妙に懐かしい気持ちになったり、心の奥底にとどめておきたかったことまで思い出して、複雑な気持ちになったりする。
しかしながら「夏」はこれからが本番。最近は涼しい夜が続いているけれど、今よりももっと寝苦しい夜がやってくるはずだ…。そんな夜に備えて、わたしは自分の考えすぎちゃう頭を、イチ早く飼いならさなくてはいけないなと、今日もベッドに横になって考えるだろう。