「黄泉から」「無月物語」「母子像」〜久生十蘭短篇選より〜/久生十蘭、川崎賢子(編)
「久生十蘭短篇選/久生十蘭、川崎賢子(編)」の中から
「黄泉から」「無月物語」「母子像」の三作品を拝読しました📖´-
(2024,7,20 読了)
LINEオープンチャット読書会すみれで開催された「古き良き、そして以外と新鮮読書会〜久生十蘭〜」の課題作になっていたので拝読。
初めての久生十蘭です。そして、この会のお陰で久生十蘭という作家を知りました。
余談ですが、読書会に参加する度に私の知らない作家がこの世の中にはまだまだたくさん溢れていることを思い知らされ、読書好きとしての自分の未熟さを痛感すると同時に知らなかった作家と出逢える喜びに静かに震えています。
さて、久生十蘭。
聞くところによるとコアなファンがいる作家で、久生十蘭のファンのことを”ジュウラニアン”と呼ぶのだそうです。私の勝手なイメージですが、文筆家が好む作家なのかなと。
今回は課題作になっていた三作品だけ拝読したのですが……
これ本当に同じ人が描いた作品なのかと首を傾げたくなりました。三作品とも雰囲気が全然違う。まるで色んな作家の短篇が収録されているアンソロジーのような。
それだけで久生十蘭恐るべしとなった私でした。
「黄泉から」
霊的な物語というか、怪談というか……そうはいっても不気味さはなくどちらかというと幻想的な物語でした。
この物語を拝読して、人って自分に都合よく解釈するところあるよなと思った反面、一途な想いはいつか必ず伝わるんだという希望がもてた気がします。決してハッピーエンドではないけれど、少し心を救われたような読後感。
でもなぁ……やっぱりもっと早く気づいて……と思ってしまう私はひとりよがりな人間かもしれません。
「無月物語」
海外の事件をモデルにした物語なのだそうです。傍若無人な男に耐えかねて間接的に殺害し、死罪となった妻子。
拝読しているとどうしても妻子に肩入れしたくなるのですが……
殺害する以外の方法はなかったものかとも思ってしまいました。ただ、時代的にそれ以外の方法はなかったのかもしれません。
現代なら傍若無人な男から逃れる方法は他にもありそう。
しかしそれにしても死罪は酷い。なんともズンと重い気持ちになる読後感でした。
「母子像」
簡単にいうと母の理想像に囚われた息子と、母としての人生を放棄した母の物語とでもいいましょうか。
こちらもなかなかズンとした気持ちになる読後感でした。
決して母親の味方をする気にはなれないけれど、母の理想像に囚われている息子の存在はなかなかの重荷となり母は母で苦しんでいたような気もします。
なにかに囚われた人々の行く末は悲劇しかないのでしょうか。
とりあえず、今回の三作品はスッキリとした読後感ではありません。
ただただ、物語の中に惹き込まれる。きっと私はちゃんとした解釈はできてないけれど、久生十蘭の個性的な世界をもっともっと味わいたくなります。
先にも書いたように私の中で文筆家から好まれる作家というイメージがあるからか、この後に拝読した作品たちのところどころに久生十蘭の面影があるような気がしてなりませんでした。
私が久生十蘭を色んなところに探していただけかもしれないけれど。
「久生十蘭短篇選」には他にもたくさんの作品が収録されているので、また少しずつ拝読したいですし、今回拝読して三作品も時間を置いて再読したいです。
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