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Product Liability Advocate(製造物責任)

本日の、テーマは損保マン業務に直結する話なので、少し堅めです。

訴訟大国アメリカで物議をかもしたとある有名な訴訟について争点や評価について自分なりにまとめます。

テーマは「製造物責任」

Q:どんな事例?

製造業者がとある「安全装置」を「標準装備」とせずに、「オプション提供」していた場合に、製品製造過程やデザイン自体の「設計瑕疵(ミス)」や「リスクテイカーへの説明責任」が問題になります。

特に、重機や商用乗り物では上記問題が顕在化しやすいと言えます。理由としては、重機作業は危険が伴うことが考えられます。他には、リース契約でリースユーザーが重機を使用する場合も多く、購入者は「安全装置」のオプション有無によるリスクについての説明を当然受けますが、リースユーザーへは適切にリスクが伝わらない可能性があります。

実際に、安全装置を「搭載していない」Bobcat社(ボブキャット社)の重機運転中の作業員が、倒木に潰されて死亡する事故が起きて、遺族から損害賠償請求が提起されました。 Fasolas v. Bobcat of N.Y., Inc., 2019 N.Y. LEXIS 1357 (NY May 9, 2019)

参考判例は?

上記事例の判断には、Scarangella v. Thomas Built Buses, Inc., 717 N.E.2d 679 (NY 1999)という判例があり、ニューヨーク控訴審でも参考にされました。

バス会社が購入者で、後退時の警報安全装置をオプションにできた場合にの製造物責任が争われた事例でした。

The Scarangella courtは、以下の3つの要素を満たす場合は、製造業者の責任免除を認めるとしました。 Scarangella exclusion(スカランジーラの例外適用要件)と言う。

購入者が製品の安全性能について知識が十分にある

・オプション性能がなくても不合理な危険が製品になく、(マーケットで)普遍的に使用されている実態がある

・購入者の特別な使用をする際に、安全性能の提供有無で危険と利益のバランスを保有できる立場にある

※この3要素が今回取扱う訴訟判断の肝の部分です

事例詳細(事故に至るまでの経緯)?

このBobcat社の重機事故では、ユーザーは購入者ではありません。購入者はレンタル会社で、ユーザーは本重機を借りているリースユーザーでした。

購入者が製品の安全性能について知識が十分にある

ポイント: 購入者=ユーザーではない

犠牲者はどんな使い方をしていた?

犠牲者は、Bobcat社のa skid steer loaderで9フィートの木を倒そうとしましたが、開かれた運転席に倒れてきた気に押しつぶされてしまいました。もし、オプション提供される“special applications kit”が、搭載されていれば天井とリア強化がされるので、運転席への侵入が防げ、凄惨な死亡事故を回避できた可能性があります。

一方で、重機はバケットをつけたり、アームをつけたり様々な使い方ができるものであり、ユーザーの使用方法により危険性は異なり、一律の危険性を製造会社が認識するのは困難ともいえる。

結果として、3審制の一審(陪審員)では、製造業者のScarangella exclusion(スカランジーラの例外適用要件)主張を退けて、製造業者の責任を認めた

控訴審では?

控訴審でも、一審同様にScarangella exclusion(スカランジーラの例外適用要件)を認めなかった。

The Appellate Division distinguished the Scarangella decision on the ground that “the buyer” in Fasolas was a rental yard, as opposed to the buyer in Scarangella, which was an employer.

製品の購入者=レンタル会社で、購入者=ユーザーではない

上記判断基準によります。

The Appellate Division reasoned that the third Scarangella factor could not be satisfied when the buyer of the product is a rental yard, holding that the rental yard was not in a position to balance the risks and benefits of the optional safety feature on behalf of its customers.

また、レンタル会社が顧客の使用実態にあわせて危険性と利益のバランスを保有する立場にもない、と判断しました。よって販売会社が賠償責任を負わないために立証必要な Scarangella exclusion(スカランジーラの例外適用要件)を否定しました。

The lesson of Fasolasこの事例からの学びは?

Scarangellaの販売会社の免責3要件の内、3番目の因子に焦点を当てて考える必要があると思います。

・購入者の特別な使用をする際に、安全性能の提供有無で危険と利益のバランスを保有できる立場にある

販売会社に比べて商品知識が乏しいユーザーの弱者保護に焦点を当てる場合、この判断は妥当と思います。

販売会社からすると、レンタル市場を経由して実際に販売車を使用するユーザーとの間接的な商取引になるため、上記訴訟判断は販売会社の立場からすると必要な法整備、環境整備、リスク含有の観点でコスト増が見込まれ、非常に厳しいものとなりました。

猫を電子レンジで温めてしまう、酔っ払って梯子に上ろうとして落下する等々、自社製品をどのように使うかはユーザー次第であり、一般的な常識が通用しない時もあります。

説明の十分性というWORDがありますが、説明は丁寧にし過ぎて悪いことはありません。分厚い取扱い説明書を貰うのは一般消費者の一人として嫌だなと思う反面、今回取り上げた事例のような犠牲者を今後ださないためにも販売メーカー、卸会社には説明の充足を今後とも改善していってもらいたいと思います。

それこそが、故人の最大の供養になると思います。

最後に

PL法が日本で制定されて以来、販売会社がユーザーの声を聴く機会は大きくなったと思います。

しかしながら、日本ではアメリカと違い、まわりと違うことをして失敗したことを恥ずかしいと隠すことが多い気がします。結果として、怪我をしたから、メーカーを訴えてやるといった行動は少ない気がします。

日本では、消費者センターへの通報で、解決することが多いといった要因もあります。

今回取り上げたアメリカでは、訴訟大国だけあって、日本よりも消費者に手厚い運営になっている気がします。

どちらがよりすぐれた文化というのではなく、両国の違いを認識することは重要と思いました。同時に、日本も陪審員制度が開始されたりと徐々に米国化が進んでおり、今回の事例のような訴訟が乱立する時代が来るのかもしれませんね。

今回は米国のPL事例を取り上げましたが、今後とも、国内外問わず、業界も問わずためになりそうな最新情報を収集して、noteにまとめていきたいと思います。

少しでも、皆様の参考になりましたら幸いです。

Thanks for reading thoroughly,

Tony@MBA損保マン

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