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ゴダール「勝手にしやがれ」

今年はフランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールが亡くなった年でもありました。

彼の作品はまだ3作くらいしか観ていないので、ちっとも語れたクチではないのですが。

ただ、「勝手にしやがれ」はとても好きで、
20代のときにTSUTAYAで借りて鑑賞し、その時に初めてヌーヴェル・ヴァーグというものを知り、その世界観に一時期のめり込みました。

登場人物の突然のカメラ目線、シーンのぶつ切り、言葉が少なく、詩的。洒落た会話。服装も、音楽も、知的で刺激的。

当時は若輩者なりに、人の色気や知性やユーモアに刺激を受けていました。
時々「今のはなんだったの?」とついていけなくなる箇所があったりして、その意外性もまた魅力。一生懸命咀嚼して、何度もリピート再生しながら観ていました。

自動車泥棒、警察、パリの街。愛について男はやっぱり男だし、女はどこまでも女だ、という愉快で明白な事実も、実に映画だし、それを感じるのが楽しかった。

今年の5月にはミシェルを演じるジャン=ポール・ベルモンドの追悼もあって、映画館で観られました。

あのゴダール作品を大きなスクリーンで観られるなんて、と喜び勇んで観に行きました。

ジーン・セバーグ演じるヒロインのパトリシアが新聞を売るシーン「ニューヨーク ヘラルド トリビューン!」を、映画館の暗闇の中でレモネードを飲みながら顔じゅうで受け止めました。ときめいた。

上映が終わると、ある人がエンドロールの音楽を小声で口ずさみながら、余韻に浸った雰囲気で席からゆらっと立ち上がって帰っていって、その後ろ姿を見ながら、「そうなるのもわかる」と私も心の中で唱和した。

その4ヶ月後、訃報をネットニュースでみた。

何年経って観ても飽きない。ユーモア、哀しみ、喜び、沈黙、美しさ。
「いやぁ、映画を観たなぁ!」という、根源的な娯楽の楽しさを教えてもらえたことに、ありがとうと言いたいです。


しかし、今年は6月にドキュメンタリー映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」も観たのだよ。好きな人がどんどん逝った2022年。私的に大きな年でした。

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