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創作小説『終末ド真ん中』

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人生で始めて失踪せずに書ききるつもりの長編小説です。 最初は毎週土曜日投稿の予定でしたが、シンプルに見られないのが恥ずかしくなって加速するように投稿してます。 なのでこのマガジ…
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小説『終末ド真ん中』♯1

小説『終末ド真ん中』♯1

かつて活気であろうこの街、崩壊してボロボロになったこの世界には風の音と波の音だけが響いている。
まさに終末ド真ん中のこの世界にやってきてしまった僕。

~3ヵ月前~
成人式を終えて同窓会に参加するも、何もすることが出来ないまま夜の道をふらふらと歩く俺は、普段飲まないお酒の影響からかいつもよりも増幅した負の感情を抑えるのに必死になっていた。

ダサい自分を戒めて、小さな都会を歩いたいたはずの自分はい

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小説『終末ド真ん中』♯2 

小説『終末ド真ん中』♯2 

前回はこちら

「パンッパンですよポッケ。」
「まあ、多分しばらくここには帰ってこないと思うからな。」
彼は手帳に書き込まれている抽象的な地図の中にロボットのイラストを書くと胸ポケットにしまった
その胸ポケット以外のポケットの中にはパンパンの食糧が詰まっている。
もちろん僕のポケットもパンパンである。
ロボットの中の冷蔵庫に貯蔵されていたものを取れる分くすねた。

人のロボットを結果的に盗んだこと

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小説『終末ド真ん中』#3

小説『終末ド真ん中』#3

相変わらずポケットはパンパンのまま錆びついた橋を渡り、街はずれの学校へやってきた。
「ボロボロではあるけど…」
「だいぶマシだな。」
中途半端に割れたガラス扉を潜り抜け、自分は破片を踏まないように電池がありそうな職員室へ向かう彼の後ろをついていく。

「大丈夫か?床危ねえし気を付けろよ。」
と、良いながらも頑丈そうな靴を履いているので軽快なステップでどんどん進んでいくので空気を読んで早歩きを試みる

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小説『終末ド真ん中』♯4

小説『終末ド真ん中』♯4

「……いこか。」
時間は分からないが、かなり早朝に目を覚ました彼に体を揺らされて僕は目を覚ます。
比較的守られている教室を借りて夜を乗り越えた僕らは、危険度と期待値を考えた結果これ以上の期待は無いと判断して学校を出た。
彼は簡易的な地図を書き記したメモ帳を開き、右手で顎をなぞりながら次行くべき場所を考えている。

「どこかあるかな…。」
地図を盗み見するとまだ展開されていない場所ばかりで、とくに東

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小説『終末ド真ん中』#5 

小説『終末ド真ん中』#5 

腐った匂いはまだまだ続くが、特にモンスターとかが出てくるわけではない。
ただ、匂いが強くなっているのは確かだ。
「大丈夫か?」
「カイさんは…?」
「俺はマジで運良く鼻詰まりが酷い日なんだ。」
はじめてだ、こんなにも鼻詰まりを羨ましいと思ったのは。
何度も口から吸っては鼻から空気を吐き続ける、じゃないと違うものまで吐いてしまう気がする。
「…なんか部屋っぽいところ?」
匂いの原因を突き止めた。

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小説『終末ド真ん中』#6

小説『終末ド真ん中』#6



「2527年…!?」
僕らが降り立った終末は、予想していたはるか未来なんかではなくてもっと目の前の世界。
さらに言えば…
「俺の…生まれる前?」
カイさんは放心状態だ。
僕のたった504年後、そして彼のたった504年前。

僕らの歴史のド真ん中は終末になっている現実、唖然とする以外なにも出来ない。

「というか…こんなもの習ってもなければ聞いたこともないぞ?」
僕らが恐竜の絶滅を知っているよう

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小説『終末ド真ん中』#7

小説『終末ド真ん中』#7

「うう、さっむいね。」
彼女は申し訳ないと言わんばかりの表情で小さく頭を下げ、カイさんも大丈夫ですと言わんばかりの表情で頭を下げる。
ほとんど息を漏らしてるだけの会話だけど通じ合うこの文化、世代が変わっても続く人間らしさに心が少しだけ暖かくなる。

「それにしても壊れてる…。」
予想以上の荒れた世界、頭の中では分かっていても実際目にすると全く違う。
カイさんは、結構夜も近づいてきて冷え込んできてい

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小説『終末ド真ん中』#8

小説『終末ド真ん中』#8

未来の見えない終末の世界をただただ歩く。
何もなくて平和なはずで、なのにどこかずっと寂しい世界。
昨日知ってしまった、この世界が壊れた理由。

「……」
唯一会話をできる彼らがいるおかげで何とか正気を保てているが、この世界を半年ひとりきりで生き続けていたカイさんの根気強さに感動している。
でも本当にこの世界から3031年の栄えた世界が出来るのだろうか。
軽い気持ちで終末なんて言っていたが、この世界

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小説『終末ド真ん中』#9

小説『終末ド真ん中』#9

https://note.com/mayuma0839/n/n30e4310ecf0d

前回はこちら

僕らが向かった先は学校の方面ではなく、最初にカイさんがすんでた拠点からさらにまっすぐ進んだ先の道。
三人で行こうとしていた謎の建物がある方向である。

前に手帳をチラッと盗み見したときにかかれていた地図の先、あの図が間違ってなければきっとそこに存在する。
「結構歩くわね…」
「いやー、キツいで

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小説『終末ド真ん中』#10(終)

小説『終末ド真ん中』#10(終)

前回はコチラから⤴

「失礼します。」
ジャラ男の大きな声で反射して震える僕らと塔に立ちはだかる大きな扉。
ゴゴゴと音を立てた壁は次第に開き、薄暗い部屋の中へと平気な顔で入っていく男たちについて行く。
「なんか変な匂いしませんか?」
理科室くらい独特な香りに包まれた塔の中、外の世界とはまるで別の世界のように螺旋状の階段を登っていく。

「…え、行き止まりじゃないですか。」
階段は瓦礫で塞がれて進め

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