シェア
麻佑子
2020年2月7日 00:11
お気に入りのピアスを落としてしまった。すぐに探せる場所へは、すべて赴いたが見つからない。あまりのショックに、表情を忘れてしまった数時間。私の異変に気がついた息子、いつもなら逃げまわるはずの寝かしつけの時間になるやいなや、「ねんねするよー。」と、たましいの抜けきった私の手を取り、寝室へ連れて行ってくれた。元来、あわてんぼうな性格ではある。出かける時の、忘れ物の一つや二つは当たり前で、2
2020年2月6日 01:39
一つだけでいい。「これだけは」というものを決めてしまう。例えば、私は、寝る前の絵本の読み聞かせ。その日、感情に任せてほっぺをつねってしまい(最低)、子どもとの間に気まずい空気が流れていても、読み聞かせの時だけは、何事もなかったかのように、ごきげんで絵本を読む。ほぼ炭水化物しか与えられなかったなぁと罪悪感に身を浸しても、完璧な一日だったかのように、全力でやりきる。それができたらオッケーにす
2020年2月4日 00:13
朝がくるのが怖い。今日は一日、どうやって過ごそう。ずっと家の中にいるのはしんどい(私も子どもにとっても)。でも、どこにいったらいい?何をしよう?あそこもここも、この間行ったばかり。ネタ切れだ。もしも雨も降っていたら? 子どもは、一日一日、はっきりと気がつくほどに、目に見えて成長している。昨日できなかったことが、一晩寝たらできるようになっている。そんなかけがえのない一日なのに。
2020年1月31日 23:54
ーエッセイは、すでに有名な、名の知れた人が書くことに意味がある。ーどうやっても、その考えに行き着いてしまい、文章を書く手をとめてしまった。あの人の日常を、思考回路を知りたい。だから読む。となると、ただの一主婦である自分の書く文章など、一体、誰が読むのだろう。そのぼんやりとした想いを、宙ぶらりんのまま放置して、時には忘れたふりをして、しれっと文章を書いていた。そして大体は、意味のないことに
2019年1月6日 09:18
新年早々に、息子が水ぼうそうに感染した。旅行をひとつキャンセルしたものの、今年のお正月は、なるべく移動をせずに、ゆっくり過ごしたいねと話していたので、希望通りの過ごし方となった。 私も夫も、年末年始の数日間は実家で家族と過ごすこと以外してこない人生だった。大晦日には、年越しそばを食べ、次の日の朝には、年末に仕込んでおいたおせちと、家でついた餅を焼いて入れたお雑煮を食べる。それを3日頃まで繰り
2018年10月19日 19:45
息子が生まれてからというもの、一体、どれくらい初対面の人と話したことだろう。上京してからこの方、隣の部屋に住む人とさえ、一度も言葉を交わさぬまま引っ越したこともあるし、一日中、誰とも口をきかない日だって、ざらにあったというのに。 本当に、今までの私と同じ世界を生きているのだろうかと疑いたくなるほどに、一歩家の外に飛び出せば、最低5人以上の人と会話している。 通りすがりに、あら可愛い!
2018年10月18日 17:10
どうしてもの用事で、混雑する時間帯の電車に乗らなくては行けない日。 7ヶ月にして、早くも伝い歩きをする息子と一緒に乗り込むのには勇気がいる。もう、じっとしていることに耐えきれず、大きくのけぞっては、抱っこ紐から「出せ〜、出せ〜」という趣旨の奇声を発し続けることが、目に見えているからだ。優先席の前に進めば、ありがたいことに、席を譲っていただけることが多いのだが、先に述べたような状況に加え
2018年10月17日 10:49
時々、どうしても食べたくなる、贔屓のケバブ屋さんがある。電車を乗り継いで行く、仲良しの友人が住む街にあって、すでに常連になっている友人が、おいし〜よ〜っと、薄ら笑いを浮かべて連れて行ってくれたのが、きっかけだ。初めて自分でアルバイトをして、貯めたお金で旅した国がトルコだという話をしたら、すぐに店主と打ち解け、顔なじみになるまでに、そう時間はかからなかった。ともだちに会いに行くことを口実に、そ
2018年10月16日 10:21
ずっと、息子は豆腐が苦手なんだと思っていた。 友人に、離乳食に苦戦している話をしたら、お豆腐は良く食べるよ、と教えてもらったので、割と素材に気をつかい、国産大豆、天然にがりの絹ごし豆腐を購入した。しかし、一口含んだ途端、ぶーっと唇を震わせて吐き出す始末。かえり血ならぬ、かえり豆腐を浴びて、惨敗である。半泣きで、ダメだった〜と教えてくれた友人に報告すると、「うちの子は、ケンちゃん豆腐が好
2018年10月14日 23:35
今日も離乳食を食べません。7ヶ月。おも〜い腰をあげて、6ヶ月と10日で始まった、息子の食人生。そろそろ二回食に進む時期ですが、小さじ1も食べず…ぎゃーと逃げ出し、あちらこちらを、おかゆや豆腐やかぼちゃの食べかすで汚していく。私のセーターも、カピカピになったでんぷんが所々に付着している。「リトルモンスター…」「カオス…」思わずつぶやく。義理の姉から、「離乳食ノイローゼになったから、まゆ
2018年10月9日 14:42
ただ混んでいるからという理由で、多目的トイレを使ってしまってごめんなさい。ベビーカーごと入れて、オムツ替え台もできる、貴重な場所なのに。妊娠中に優先席に座るとき、奥の席も空いているのに、ドアに近い方に座ってしまい、ごめんなさい。ベビーカーで車両と車両の間の通路を塞いでしまい、通る人の冷たい視線を浴びてしまうということに気づけていませんでした。改札口、わざわざ通路の広い改札を身軽な私が使って
2018年10月7日 09:33
外出時のお供にする本を選ぶとき、いつも迷わず一冊の本を手にとる。アン・モロウ・リンドバーグ「海からの贈物」だ。 何度も読み返し、その度にいつも新しい発見があり、何回読んでも理解した気になれない、するめのような本である。吉田健一の翻訳と、落合恵子さんの翻訳、どちらも好きだ。(落合さんの翻訳の方には、1970年代になって、著者によって新しく書き加えられた一章がある。)持ち歩くときは、文庫本
2018年10月4日 05:12
誕生日が近づいてきた。子どもを産んではじめてむかえる自分の誕生日だ。いつも、ゆびおり数えて、待ちわびていた日。どんな風に祝ってもらえるだろう。どんな言葉をかけてもらえるだろう。どんな特別なことをしよう。自分だけの特別な日にしよう。10月にはいると、その準備にそわそわ、わくわくしていた。今年はどうだろう。日々の育児に追われ、特別感や、その日をむかえるうれしさは、半減している。自
2018年10月3日 21:57
あふれてくる愛は、尽きることのない泉のようだ。自分の中に、制御できない、そんな泉があるように感じる。ただ、その泉も無限ではないのだ。アン・モロウ・リンドバーグ「海からの贈りもの」の中でも、そのようなことが述べられている。女は与え続ける。子どもに。夫に。食事を、清潔な住居を、そして愛を。しかし泉は尽きる。だから女性は、自らの泉を時々満たさねばならない。アン・モロウ・リンドバー