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【墨絵本】線のたび

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埋もれていたスケッチブックを発掘したことから、思いつきで始まった物語。 墨絵本。
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2021年11月の記事一覧

線のたび(9)

線のたび(9)

宙の子は、懐かしく心地良さに
身を委ねたまま、眠りに落ちた。

しばらくして、深いところから
鳴り昇ってくる音に目を覚ました。

おぉ…ぅん…、おぉ…ぅん…おぉ…ぅん

体の奥底、深い深いところから湧き出てきて、
天に向かってゆっくりと上へ上へと響ながら
キ〜ンという軽やかで果てしなく広がる音。

「何処から聴こえてくるんだろう?」

宙の子は、自分の体がくるくると
渦を巻きながら、ゆっくりと上へ

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線のたび(8)

線のたび(8)

宙の子は、すれ違って行った何かを
見送ったあと、再び下へと進んだ。

あぁ、あの辺りかな?
段々と色が濃くなってきたなぁ。
あそこから降りてみよう。

宙の子は、近づくにつれて色がくっきりと観えてくるのを確かめながらグッとスピードを上げた。

宙の子は、深い、淡い、暖かく萌えている碧色の
雲のような塊の中に入って行った。

「なんだか、とっても優しい。
柔らかい翅の中に包まれているみたいだな…なん

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線のたび(7)

線のたび(7)

宙の子は、今から向かおうとしている、
遥か下に観える碧色らしき何処かから、真っ直ぐに昇ってくるモノに驚いた。

な、なんだろう…。

向かってくるモノは、深く濃い暗いような、
重たい、真っ黒な塊のようにみえた。
宙の子は、動きを止めて、じっと、それが
勢いよく昇ってくるのをじっと眺めていた。

それが近づいてくると、真っ黒ではなくて、
なにか、たくさんの色が織り混ざっていることがわかった。

そし

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線のたび(6)

線のたび(6)

落とした何かを探しに降りてきた事を
思い出した宙の子は、ぼんやりと何かを思いながら、スルスルと下へ下へと向かって伸びて行った。

仄かに、みどり色が見える場所に。
明るく見えて、なんとなく薄暗くも見えてきたあの場所に。

なんだったかなぁ、落としたモノ…。
さっき出会った子とおしゃべりしてたら、すっかり忘れちゃったなぁ…。

ま、そのうち思い出すかもしれないから、
いいかな。
今は、見えてきたたあ

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線のたび(5)

線のたび(5)

降りてきた宙の子は、下に、
下から昇ってきた天に、
それぞれ何かを探しに向かった。

宙の子は、うっすらと碧色に包まれた塊に向かって、真っ直ぐに降りて行った。さっきまで、一緒に居た子の気配を見出しながらも、少し違う何かを感じながら。

「ボクは、何を探しに行くんだっけ?」

天に向かった子と別れて、一人になった途端に、ふと思い出した。

「ああ、そうだったな。
落としたものを見つけに行くんだ…

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