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【読書感想】 2024年106冊目「功名が辻(二)」司馬遼太郎/文春文庫
pp.285--348 鳥毛の槍
運。 という。人は手軽に考える。秀吉は運がよかったから英雄の名を得たのだと。しかし運というのは英雄の最大不可欠の条件である。憑いている者を英雄という。才能器量があるだけでは、英雄の条件ではない。・・・
僕はいつも運に恵まれていると思っている。天恵、天からの恵みというべきか。いつもそれに助けられている。本当にありがたいことだ。
古来、妙なことだが陰気な大将が勝った例はまれである。 将士はみな秀吉を仰ぎ、 「筑前様、骨になっても光秀殿が首を打ちまするぞ」 と叫ぶ者もあり、叫ばぬ者はみな血色のいい笑顔を秀吉にむけていた。・・・
そう、大事なことは、機嫌のいいこと!
pp.349--381 賤ヶ岳
笑巌は笑いだした。 「それが悟りというものだ。逃げずに浮世の主人になれ。われがわが身の主人になれ。禅家に、随処に主となれ、という言葉があるわい」・・・
この場所、この今の立場から逃げずに戦う。
pp.382--458 家康、秀吉
「主人の一豊は、吏才は石田三成にはるかにおよばず、武勇は加藤清正の指ほどにもない凡庸な男だが、妻女だけは日本一であることよ」・・・
僕は、祖母、都さんのことをまた思い出していた。
pp.459--498 春日遅々
「律義者の三河殿」 といえば家康のことであった。 信長との同盟時代も、何度か信長に煮え湯をのまされてきたが、それでも離れずに信義ただ一つでついてきた。 家康の表看板といっていい。 「徳川殿はお約束に固い」 とか、 「徳川殿にさえ物を頼めばかなえてもくれるし、裏切られもせぬ」 ともいわれてきた。・・・
誠実さこそが、人として最大の武器。
pp.499--538 掛川六万石
秀吉は、さきの鶴松の死、こんどの秀頼の出生あたりから、すっかり愚人にかえってしまった。功成り、名遂げた英雄の晩年によくみられる愚人化が、秀吉のなかにはじまっている。・・・
人間のゴールが「死」であるからこそ、歳をとるごとに賢くなって最後を迎えたい。
pp.539--592 伏見桃山
「百才あって一誠足らず、という方がいらっしゃいますね」 ありあまるほどの才気がある。しかし他人のことを真剣に考えるほどの誠がない、──いわゆる「才覚者」のことを千代はいっているのである。・・・
いずれは、滅びゆく者たちのことだ。
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