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『木漏れ日に泳ぐ魚』恩田陸
描写が丁寧で、すごく、映像が目に浮かぶ本だなと思いながら読んでいた。映画みたいな本。部屋の中から、公園に設置された時計が見えるというところとか、すごく映像が浮かぶ。
でも、実はあまりにドラマチックな設定がどんどんと、たった一夜で明かされる。しかも物語がすすむきっかけは「実は〇〇」とか「忘れていたことを思い出す」とかで、実際にコンテにしようとすると、難しいかもしれない。
そう思うと、それぞれの脳
『異邦人(いりびと)』原田マハ
京都に住んで4年くらい経つのかな。
主人公は関東から京都に移り住んだというのを聞いて、親近感が持てるかしらと思って読み始めたのだけど、全然そんなことなかった。むしろ、なんというか積極的に京都の中心にぐいぐいと食い込み、かつ受け入れられていく菜穂が羨ましいような、怖いような感じだった。
京都という街は人を選ぶと思うし、私はきっとこの街ではずっと「異邦人」だと思う。けれど、菜穂はすっかりと、溶け込
『夢の浮橋』谷崎潤一郎
谷崎が愛した京の家という見学会に参加することになった。谷崎は「潺湲亭(せんかんてい)」と呼び、今は石村亭と呼ばれている、下鴨神社の近くの住宅。というか、邸宅。
そこが舞台の小説が『夢の浮橋』ということで、それならば、見学前に読まなければ!となって、檸檬の丸善(BALの地下)に買いに行った。
中央公論新社の文庫を買ったのだけど、「夢の浮橋」のほかに、「親不孝の思い出」、「高血圧症の思い出」、「四
『草花たちの静かな誓い』 宮本輝
Los Angelsに2泊することになって、この本を買ってみた。
もう疎遠になってしまった友人がいるんだけれど、その子が海外に行くときは、その土地の小説を読んで行くと言っていて。それから真似している。
ロサンゼルス、小説で調べると色々出てくるのだけど、あまり日本人の作家は出てこなくて、その中で、インタビューもあったのがこの本。
宮本輝は『錦繍』で出会って、素敵だなと思ったのだけど、次にパニッ
『密やかな結晶』 小川洋子
すごい哀しい話。
ある島に暮らす人は、だんだんといろんなものの記憶がなくなっていく。たとえば鳥。香水。エメラルドなど。そして、なくなっていくものの描写がとにかく綺麗。
小説の中に、なくなっていくものだけが納められたチェストがでてくるのだけど、素敵すぎる。デザインしたい。なんとなく、アールデコ調の脚付きのチェストかなと思っているけれど、もっとさりげなくてもいいかもしれない。昔の図書館にあった図書