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人材育成国際会議「ATD2020バーチャルカンファレンス」参加レポート

人材開発の国際会議「ATDカンファレンス」が今年はコロナの影響でバーチャルカンファレンスとして6月1日~5日に開催されました。
例年この時期に本部があるアメリカで「ICE(International Conference & Exposition)」という名で世界中から1万人を超える参加者がいる大イベントなのですが、今年は無理だろうなーと思っていたら、どうしてどうして、こんな時だからこそ学びを共有せねば(とスタッフの方が思ったかどうかは知りませんが)、しっかりバーチャル環境でのカンファレンスが開催されたのはさすがです。

私自身はATDのアジアパシフィックの大会には2014年から6年連続で参加していますが、本家のアメリカでの大会には参加したことがなく、いつかは参加したいなーと思っていた中で、参加といえるか微妙ではありますが、同じような雰囲気を味わえる大会に今回参加できたのは、今のコロナ禍でも数少ないいいことの一つでした。
ちなみに参加者は全体で約4500人、70か国以上から参加があり、日本からの参加者は200名ほど(国別ではアメリカ除けば1位)とのことです。

通常の大会は、参加者が会場に集まり、スピーカーがプレゼンするような形式ですが、今回は「ライブセッション」「オンデマンドのセッション」に分かれた構成で、キーノート(基調講演)及びキーノートスピーカーとの対話セッション等が毎日ライブであり、それ以外は基本的にはオンデマンドのセッションです。(セッション数は150以上)

バーチャルでの開催とはいえ、アメリカで開催している関係で、日本からの参加の場合は時差の問題があります。アメリカのビジネスアワーは概ね日本の夜から明け方に相当するため正直厳しい時間設定でしたが、キーノートは日本時間の22時ぐらいに設定されていて、なんとかライブで見られることができました。もちろんオンデマンドは、特にそんなことを気にする必要はないので、毎日少しずつ見ています。
ちなみに、オンデマンド(キーノートの録画含む)は90日間いつでも見られるので、9月頭まではインプットする機会として大いに活用していきたいです。

話題はやはりPostコロナ/Withコロナ

セッションの特徴としては、今まさにホットなテーマである、Postコロナ(アフターコロナ)、withコロナがホットトピックスの一つでした。こういう環境下での、リーダーのあり方やHRの役割、学び方の進化等に加えて、リモートワーク下での研修やワークショップなどのデリバリースキルについても多くのセッションがありました。元々バーチャルラーニングは昨今のトレンドの一つの方向性として確立していた中で、今回は更にそこが際立っていた印象です。ここからはこれまで見たセッションの中で(特に「リーダーシップ」関連)印象に残ったセッションやキーワードなどをいくつかご紹介します。

5日間の開催期間中、毎日キーノートスピーチがありました。ストレングスファインダーで有名なマーカス・バッキンガム氏や、「デジタルボディランゲージ」と銘打ったデジタル時代のコミュニケーションスタイルを提案してくれたErica Dhawan氏など、興味深いものがいくつかありましたが、個人的に一番印象的だったのが、ケン・ブランチャード氏のキーノートでした。

テーマは「The Importance of Creating A Compelling Personal Vision Statement: Why Now is the Perfect Time」
ブランチャード氏は御年81才。でも、そんなことをみじんも感じさせない、エネルギッシュなお話でした。こんな人生の大先輩に「ミッションステートメントを書こう」「10年後の将来図を描け!自分は91だけど」とか言われたら、それゃあ我々若造は何も言えません。
ATDの公式インスタグラムやFacebookでは、こんな感じでグラレコ(グラフィックレコーディング)がアップされていましたのでこちらもご参考まで。(キーノートはすべてグラレコかありました)

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ATD公式インスタグラムより

Postコロナとは?

非常に多くのセッションがある中で、テーマ名に明確に「Post COVID19」と入っているセッションや、セッションやテーマ名には入れてないものの、内容はまさにPOSTコロナを意識しているセッションも多くありました。
一方で、そこはほとんど意識していなかったセッションもあり、それらを対比してみることで、見えてくる特徴や大事なポイントもあったので、そんな観点で「コロナを意識していたセッション」と「さほど意識していなかったセッション」をそれぞれご紹介します。

① コロナを意識していたセッション

<その1>
「Leading Through Learning in Our Post COVID-19 World」

スピーカーはプリス・ネルソン氏とエド・コーヘン氏で、CLOとしてATDアワードを何度も受賞されたご経験とインドでの経験や著書から、学びを通して今何をすべきかを示してくれたセッションです。
タイトルに「Post COVID-19」とあるものの、そもそもまだPostコロナじゃないよね、という前提のもと、まだまだ不確実なことだらけで、「素早く組織を変える!」「社員を元気に!」といったメッセージと合わせて、混とんとする中での情報整理と次へのアクションの取り方をかなり具体的に紹介されていた実践的な内容でした。
ポイントは以下の通りです。
 ・30日/60日/90日のシナリオを作る。
 ・知っていること/起こりそうなこと/不明なことで情報を整理する。
  更にそれを「始めること」「止めること」「継続すること」に分類。
 ・その上で、それぞれを重要度/緊急度で整理する。
→実際にいくつか実例をあげて紹介されていましたので、すぐに役立ちそうな内容でした。
<その2>
「The Business as UNusual - Rewriting the Rules of Leadership in a Post-COVID World」
 こちらは、有事の際のリーダーの行動についてのセッションでした。ポイントは以下の通りです。
 ・3つの「R」が大事。(Recognize/Restore/Rewrite)
 ・共感やサポート
 ・自信を取り戻す
 ・優先順位付けや期待値の見直し
 ・身体的&心理的安全性

➁コロナをあまり意識していなかったセッション

<その1>
「Team Human: Creating a Better Workplace Culture」
タイトル名にもあるように「人間性」に焦点を当てて、より良い企業風土を作ろう!という内容でした。Culture Hackingというコンセプトで、以下のような点を強調されていました。
 ・人間性のある職場に戻そう!
 ・文化と風土は違う。文化は価値観の共有、風土は行動。
  なので、文化を変えるには風土を変える。
 ・そのために、意図的に行動しよう
  →雑談、Why?を話す、助け合う、認知/感謝、
   楽しむ、少しずつ良くしていく

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<その2>
「Acoustic Leadership: Developing a Leadership Culture That Resonates」
スピーカーは音楽好きのおじさんで、アコースティックギターになぞらえて、リーダーのあり方を示してくれました。
キーメッセージはこんな感じでした。
 ・リーダーに必要な3要素は、
  「シンプルさ」「信頼」「機会(を与える)」
 ・シンプルさがいい仕事につながる!
 ・信頼できるリーダーは完全ではない!
 ・メンバーに機会は与えよう!
 ・リーダーは文化を作る!
 ・心理的安全性がイノベーションを生む!

4つほどセッション紹介をしましたが、紹介しだすとキリがないので、このあたりにしておきます。
ここまで見て、あれ?結局やること、大事なことは有事であっても変わらないんだな、むしろ、原理原則的なことをより意識して取り組むことの大事さを教えられた感じがしました。こういう時こそ「基本に戻ろう」ということです。
そもそも何を前提にしているのかが明確でないまま、アフターだポストだと騒いでみても、どういう変化なのかを見極めないことには意味はなくなるということも改めて認識できたカンファレンスでした。

バーチャルカンファレンスの難しさ

最後に「バーチャル」という形式について。
既に多くの方が何らかのオンライン会議やセミナーには参加されていると思いますので、もはや当たり前のことばかりですが、改めて気づいたことをいくつか。

スピーカーの熱量が伝わりづらい。
特にキーノートの場合、聞く方の期待値も高まりますし、伝え方みたいな部分も大きな要素なのですが、なかなか伝わりづらいのは残念なところ。もちろん色々と工夫されている方もいらっしゃいましたが、やはりパッションみたいなものはどうしても感じづらいです。やはり、あの会場で感じる高揚感、空気感は何にも代えがたいものですし、他の参加者との偶然の出会いもオンサイトの魅力の一つです。

スピーカーのスキルが問われる。
これはプレゼン、研修、セミナー等、色々なことに言えるのですが、素晴らしいスピーカーが必ずしもオンラインではいいスピーカーとは限らないということです。単にライブだったものをオンラインに置き換えてみても同じ効果が得られるはずもなく、やはり全体デザインを事前に考えて、入念に準備をする必要性も改めて感じました。
また、基本的なことでは、やはりスライドがないと聞く方としてはかなりシンドイなという印象です。

時間は30分がベスト、長くても45分ぐらいで。
1時間だと、なかなか見ることへのハードルもあり、かつ集中力という点でも30分~45分が適切な時間だと感じました。

図2

今回は「Social27」というマイクロソフトのプラットフォーム上で実施されましたが(↑が画面です)、正直、こちらはあまりうまく活用できませんでした。(というか活用できた人はどれだけいたのかな?)
まだまだ見たいコンテンツを見切れていないので、少しずつしっかり吸収していきたいと思います。
なお、まだ参加可能とのことですので、これから見たいと思われる方はぜひ。

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