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人材育成国際会議"ATD24"参加レポート

今年も世界最大規模の人材育成国際会議ATD International Conference & Expo(通称:ATD-ICE)がアメリカ・ニューオーリンズで開催されました。
2020年はコロナ禍の真只中で初のバーチャルのみの開催、2021~2023年はバーチャルとリアルのハイブリッド開催でした。主催者発表の参加者数は、リアル(約9000人)、バーチャル(約1000人)とも昨年と大きな差はなかったものの、日本からの参加者が昨年を上回る159人でした。
 
去年は日本からの参加者が100人を超えてようやくリアル参加者が戻ってきた感はありましたが、まだまだリアル/バーチャルのハイブリッド開催という体でした。私は今年もバーチャル参加でしたが、いよいよ本格的にコロナ前のATD-ICEに戻った感が満載でした。というか、運営側の力の入れ具合(バーチャル参加用のコンテンツの数など)はあきらかにリアルにシフトしている印象で、300近いセッションの中でバーチャル視聴が可能なものは65コンテンツで、個人的には実質的にバーチャルは去年で終わってた、と感じました。
(なので参加を検討されいる方はぜひ現地に!)

全体の傾向

こちらがラーニングトラックと呼ばれている学習カテゴリごとのセッション数と構成比を去年と今年で比較したものです。
ラーニングトラックによって若干の増減はあるものの、何か大きな傾向があるわけではないですが、数年前から新たにラーニングトラックとして登場した「Future Readiness」は今回もセッション数は24、構成比としては9%で、以前からあるその他のラーニングトラックと同様、完全に一つのラーニングトラックとして定着した印象です。(後半ではここから印象に残ったセッションをご紹介します)

今年のトレンド

上述の通り、今年はバーチャル視聴でのセッションが限られていたこともあり、個人的には全体傾向を完全に掴めるほどの情報量は正直ありませんでした。その代わりと言っては何ですが、ATDジャパンの理事の皆さんの感想や、UMU社、IDEA社、日経新聞社などが主催した報告会での2次情報も踏まえると、バーンアウトやハイブリットな働き方を通じて見直されてきている「周囲との繋がり」や「心理的安全性」などを中心とした「人間らしさ」の重要性と生成AIの活用を代表する「テクノロジー活用」が二大トレンドだったと感じました。

キーノート

今年も3名の基調講演(キーノート)がありましたが、HRにとってなじみのある「モチベーション3.0」の著者ダニエル・ピンクがやはりダントツ印象に残りました。(他の2名は対話形式での話ということもあり、内容的にも正直「んー」という感じでした)
リンクトイン等のSNSでも既にポイントは紹介されていますが、概ねこんな内容でした。

ATD公式Xより
  1. 引き算的思考、やってはいけないリストを作る

  2. 一日の終わりにいい日だったか振り返る、進化しているかの確認/儀式

  3. Howの会話を2回減らして、Whyの会話を2回増やす

  4. 休憩もパフォーマンスの一部、15分の散歩をスケジュールする

  5. 大胆な決断をするための3つのテクニック

ちなみに英語だとこんな内容

  1. Create a To-Don’t list for the rest of the year.

  2. At the end of each day for the rest of the year, list three ways you made progress.

  3. Each week for the rest of the year, have two fewer conversations about “how” and two more about “why”.

  4. Schedule a 15-minute walk break every other afternoon for the rest of the year.

  5. Act more boldly by enlisting three powerful decision-making tools.

印象に残ったセッション

ここからは冒頭にご紹介した「Future Readiness」というラーニングトラックから印象に残ったセッションを2つご紹介します。
この2つをピックアップしたのは、今年の全体的な傾向の一つ「Humanity/人間らしさ」を高める、取り戻すために「個人でできること」「チームでできること」のアクションのヒントになるのでは?という理由からです。

Sisu: Boost the Core Competence of the 21st Century/ Syzmon Kudla

(セッションの概要)

  • SISUとは、意志の強さを表すフィンランドの概念で、具体的には、目的に対する粘り強さ、逆境に直面したときの根性、勇気、回復力などのこと。

  • 不安定で不確実な環境においては、SISUは21世紀の重要な能力となりうる。

  • SISUの考え方を取り入れることで、チームの粘り強さと回復力を高め、人生における課題にうまく対処できるヒントになる。

(このセッションのポイント)

  • 以前からパフォーマンス発揮についての研究を進めていて、特に最近ではコロナ禍からすぐに立ち直ったチームとそうでないチームの差は何か?ということを調査していた。

  • そんな中で、幸福度ランキング1位のフィンランドにあるSISUという概念に行きついた。

  • SISUは、古くからあるフィンランドにある概念/言葉で、21世紀を生き抜くためのコアコンピテンスなのではないかと考えている。

  • 表面的な満足は外からの影響を受けやすいが、内的なもの(生きる意志)は外から影響されにくい。

  • SISUを構成する4つの要素

・私たちは活力を回復する自己調整メカニズムを備えている。
・自尊心、謙虚さ、主体性の感覚を高めよう
・チームとして取り組めば課題が軽減される
・私たちは自分が思っているよりも強い。

こうして文字にすると、まあこんなものなのか、という程度の内容ですし、特に真新しい考え方というものではないと思います。
ただ、私の理解としては、昨今の変化の激しい環境下では誰しも少なからず周囲からの影響を受けやすくなっていて、自分を見失いがちになるけど、そんな中でもしっかり「自分」を意識し大切にしながら生きていくこと、そして時には周囲とも連携することの大切さがシンプルだけど大事なこと、ということを示唆していると感じたなかなかじわっ、とくる内容でした。
なお、SISUについてはさらに深く知りたい方は、書籍もいくつか出ているのでそちらをお勧めします。

Create a Culture of Belonging to Drive Employee Experience/Devin C. Hughes

感謝、メンターシップ、つながりの文化を作り上げることで、従業員と組織に真の影響を与える方法を学ぶ。

 (セッションの概要)

  • アメリカは幸福度ランキングが低下(15位→23位)。多くの人がGDD(gratitude deficit disorder/感謝欠乏症)に苦しんでいる。

  • Belonging(帰属意識)がないことによる影響は大きい($400-500B)

  • 感情、孤独感は伝染する。人は聞いてもらいたい、評価してもらいたい。

  • 笑顔の大切さ、感謝を伝えよう。ドーパミンが放出、感謝はスーパーパワー。

  • 企業文化を変えるためには「マインドセットを変える」「ルーティンを変える」「関係性を変える」ことが必要。

  • その中で、「ルーティン」をマインドフルな実践に変えてみる方法を紹介。(以下がその例です) 

このセッションテーマ「Belonging」は、ATDでは数年前からよく目にするようになった言葉で、D&Iが広く定着していく中で、DE&I  → DEIBというように、DとIに一つずつ要素が加わっている流れで比較的よく使われるようになったと理解しています。

こちらも最初のセッション同様、非常にシンブルな内容ではありますが、何か新しい取り組みを始めるのにはなかなかのパワーやハードルがあるのも事実です。それを日々のルーティンに乗せることで、習慣化しやすく、かつそれを周囲との繋がりや思いやりのある取り組みに変えてみることで、Belongingが高められるという地味だけど効きそうな内容でした。

まとめ

今回は「Humanity」というややふわっとしたテーマでのセッションを中心としたご紹介になりましたが、もう一つの大きなトレンドであるテクノロジー活用、特に生成AIの活用事例については、かなり具体的な取り組み事例が出てきていました。いくつかのセッションを見た印象としては、
・AIをうまくアシスタントとして使用する
・人とテクノロジーのお互いの良さを理解しそれぞれの強みを活かす
・単発での活用から全体の業務フローへの展開
・まずは使ってみることが大事。

といったことがポイントかなと感じました。(簡単ですみません)

ちなみに来年ATD25は、ワシントンDCです!

<最後に>

私が理事をしているATDメンバーネットワークジャパン(ATD-MNJ)からのお知らせです。
ATD-MNJではこの度、新たに(今更ですが)メルマガを発行することになりました。メルマガではATDやHR全般に関する様々な情報を発信していきますので、登録ご希望の方info@atdj.jp宛に以下をご連絡ください。

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・よみがな
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・ATDメンバーシップの有無
・ATDのイベントへの参加の有無

最後までお読みいただきありがとうございました。

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