本屋はどう戦っているか1
前回は「雑誌ロス」について、私が思うところを述べました。
今回からそれを踏まえ、本屋はどう戦っているか述べようと思います。
本屋はどう戦えないか
本屋は値段で勝負が出来ない
「本屋はどう戦っているか」を述べていく前に、「本屋はどう戦えないか」が重要です。
前回述べたように、本屋は値段で勝負が出来ない制度になっています。
再販制度によって価格が固定なのです。
時限再販がもっと広がれば話は変わってきます。
けれども現状としては、体感できるほど広まりを見せていません。
「TSUTAYAには値引き雑誌がある」程度です。
TSUTAYAの値引き雑誌は、女性ファッション誌を中心にワゴンセールになっています。
男性ファッション誌もありますが微々たるもの。
元々の発行数や発注数が違いすぎるからです。
大量に売れるからこそ、大量に余るのです。
本屋は仕入れで勝負が出来るか?
仕入れ過ぎるからそうなるんじゃないか、という批判は、あり得るものだと思います。
しかしながら、本屋を責めてはいけません。
発売日以降に話題となって売り上げが乱高下する雑誌は、普通にあるものなのです。
女性ファッション誌に限った話ではありません。
そこで問題なのが「配本制度」です。
本屋は、発注した通りに仕入れることが出来ない時があるのです。
雑誌を含め、書籍はいきなり人気沸騰になると、中小の店舗も売り切れが生じます。
本屋は小売店なので卸売店(取次)に発注します。
が、発注数以下の数しか送られてこないのです。
配本制度は、大規模資本の大規模店舗を優先して配本します。売れるところに置きたいからです。
しかしながら、取次の在庫にも限りがあるので、小規模資本の小規模店舗に皺寄せがいきます。
5冊発注しても3冊しか入荷しないなんてことは、普通にあるのです。
西船橋のポップ姫の店のように。
ゆえに、「売れる今月号だけ大量にほしい」とは制度上(配本制度で)言えないものなのです。
本屋の仕入れは本屋の本意か?
売り切れで困る場合とは逆のケースもあります。
ベストセラーが取次に余っている場合です。
ベストセラーは増刷(ぞうさつ)がかかります。
※業界用語では増刷(ましずり)とされます。
ベストセラーであるため、大量に増刷されます。
すると一時的に、取次には余るわけです。
ゆえに、「このベストセラーだったら何冊でも」となり、中小の店舗に置かれることになります。
(別のベストセラーで「何冊だけ」であろうと。)
一大ブームとなったベストセラーが中小の店舗で一時的に在庫過剰となるのは、そのためです。
ベストセラーばっかり置き、個性のない店舗には魅力がありませんが、「ベストセラーであれば」なんとか入荷できる店舗があるのも現実です。
その割に何々は無いじゃないか、という批判が、的外れになり得るのが本屋なのです。
参考図書
「西船橋のポップ姫」が活躍する(炎上する)話は『レジまでの推理』のフィクションです。
フィクションですが、現在の本屋が置かれている現状や制度がよくわかると思います。
それ抜きにしても物語として優れています。
最後の一冊を売るシーンは感動ものです。
似鳥鶏(にたどりけい)さんの『レジまでの推理』はこちらです。