相手を動かすのは共感! その共感も概念化が鍵となる
多くの人が気付いているように、ビジネスの現場では、正しい意見が通るとは限りません。
それどころか、あなたの意図を汲んでもらえず、トンチンカンな反応をされることもあるのではないでしょうか。その結果、あなたの提案に相手は動いてくれず、狙った効果も得られないのです。
しかしだからと言って、「私は正しいことを言っているのに、皆が理解してくれない」と言っている人には、大きな仕事が任されません。なぜなら、大きな仕事には、影響力を持つ様々なステークホルダー(=利害関係者)が存在するからです。彼らに、正しいことを正しく理解してもらう力がなければ、安心して仕事は任せられません。
つまり、正しいことを言うだけでは話にならないのです。
正しいことを正しく理解してもらう力があってはじめて、ビジネスの土俵に乗ることができます。
しかし、相手が上司や経営トップの場合、提案に同意してもらうのは容易なことではありません。
なぜでしょう。
彼らが首を縦に振らない最大の理由は、価値観や問題意識、思考ロジックの違いにあります。修羅場を何度も潜り抜けてきた彼らは、現場とはまったく違う観点からビジネスを見ています。
この違いが、双方の意思疎通に齟齬を生じさせているのです。
では、どうすればいいのでしょう。
どうすれば、相手と同じ土俵に乗れるのでしょう。
私は、そのためには「共感」が鍵になると考えています。
では、「共感」とはなんでしょうか。
私自身、「共感」という言葉の意味をはっきりと理解したのは、最近のことです。
「概念化」についての理解を深めるにつけ、概念化と共感とはつながっていることを理解し、その結果、現在では「共感とは何か」の答えを得ています。
「共感とは、自分が創り上げた概念を相手の中に移植する作業」です。
そもそも概念とは、物事の要素の相関関係を構造化したモデル(=概念モデル)、もしくはそれを言葉で表現したものです。その中には、考え方の枠組みや結論に至ったロジックなども含まれます。
つまり、経営層への提案を構造化すれば、皆さんが提案に至った理由や背景がシンプルに整理されるのです。
皆さんが、自分の概念を相手にうまく移植できれば、その概念(正確には概念モデル)をベースに相手と齟齬なく意見を交わせるようになります。
「あなたの言っていることは、これは○○の領域においてはほとんど意味をなさず、むしろ××のほうが効果的だということですね」などと、同じ概念の上で会話ができるようになればしめたものです。
少なくとも、意思疎通の齟齬から、意見を却下されることはなくなるはずです
逆に言えば、概念化できていない意見を相手に共感させるのは至難の業です。相手と意思疎通するためのベースが存在しないからです。
合意形成を成功させるには、まず自身の意見をきちんと概念化することが第一歩となるのです。
こんなことがありました。
そのとき私は、新事業開発チームのリーダーのプレゼンテーションに同席していました。その場には、役員クラスの錚々たる顔ぶれが並んでいました。
リーダーがひと通り説明を終えると、ひとりの役員が、説明の流れとは辻褄の合わない質問を始めました。リーダーは、その質問に直球で返していましたが、納得してもらえているようには見えませんでした。
私は気付いていました。この役員が頭に描いている概念モデルは、リーダーが拠り所にしているモデルとはかなりズレてしまっていたのです。
ふたりのモデルの齟齬を解決するには、さらに上位の概念化が必要でした。
見かねた私は、その場にあったホワイトボードに上位モデルとなる図表を描き、ふたりのモデルをその中に表現しました。
その後、しばらくは、ホワイトボードを囲んでの議論が続きました。
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