臨床心理士/公認心理師は心が読めるのか?問題について
松岡圭祐の「千里眼」シリーズ,流行りましたね。
ちなみに私は,「青い瞳とニュアージュ」も好きでした。
こんにちは!臨床心理士/公認心理師/精神保健福祉士/臨床発達心理士のまりぃです。
まだ若輩心理職で、【公認心理師試験・臨床心理士試験対策/心理学部生専用オンライン個別指導塾】や,【公認心理師・他専門職のための心理査定/カウンセリングはじめの一歩講座】,SNS発信/起業のお手伝い(伊藤まり名義)もやっています。
思いが高ぶって働き方・生き方の本まで書きました。読んでください。
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先日,X(Twitter)で,「公認心理師や臨床心理士は心なんか読めないに決まっているだろ」論議が活発になっていました。
どなたか学生さんが「心が読めないなんて謙遜するな」と投稿されたことに対して,心理職たちが「読めない」と応答していたようです。
しかし,私たちは本当に「心が読めない」のでしょうか?
心を操る?メンタリスト
平成の頃,メンタリストDaigoという方が人気を博したことがありました。
私の好きな海外ドラマ「メンタリスト」の主人公も,「メンタリスト」という職業です。
この方々は,相手の心を読み,自分の思うままに操っている……ように見える手品師です。奇術の一環ですね。
(メンリズムについての書籍を読むと,そのようにはっきり書かれています。ご興味のある方はぜひお調べください)
ですから,冒頭で述べた「千里眼」シリーズの主人公は臨床心理士なんですが,描写としては実は大間違い。あの主人公のやり口は,どちらかというとメンタリストよりです。
ですが,カウンセラーもこのような技術を持っている,と考えておられる方も多くおられるようには思います。
「心を読む」って?
実際,一般の方(公認心理師や臨床心理士の養成課程を経ていない方。各種通信教育や専門学校でカウンセラーの勉強をされた方も含む)が「心を読む」という時,それはどんな状態を指しているのでしょうか?
人の頭の中に「今日の夕飯は唐揚げにしよう」などのセリフがあって,それを読み取れる,ということ?
それとも,人の気持ちや感情を読み取ること?
犯人がいて,嘘をついているけれど,それを見抜くということ?
「心を読む」の定義は曖昧です。そもそも「心」の定義すら曖昧だと私は考えています。
だって,皆さま,これには同意していただけると思いますが,私たちは普段,頭の中で考える時,漫画のセリフのような文章を使って考えていませんよね?
「うーん,どうしよう」と口に出していうことはあっても,そう思っている時,そのセリフで考えているわけではなく,モヤモヤとした感情や考えがあるわけです。
だからこそ,ノートを書いたり日記を書いたりして「外在化」するとそのモヤモヤがスッキリするわけですね。
臨床心理士は,心が読める
しかし,です。
臨床心理士/公認心理師といった,大学院の養成課程でカウンセリングの訓練を受けたものは,ある意味で「心が読める」のではないかと私は考えています。
待って待って,偉い先生方,怒らないで。続きを読んでから判断してください。
単に話を聞いているだけではない
以前,学校のスクールカウンセラーについて「話を聞いて,校内ぶらぶらしているだけでお金がもらえていいなぁ」という皮肉を見たことがあります。
たしかに,一見そのように見えるので,目くじらは立てずに,しかし自分の勤務校ではそうは思われないよう,しっかりお役に立とうと思った次第なんですが,
実は私たち,単に話を聞いているだけではないんです。
だって,単に話を聞くだけだったら,友達でも家族でもいいわけです。
キャバ嬢でも占い師でも,チャット嬢でもいいんです。
(それぞれの方と対談した記事へリンクしています。こちら「臨床心理士にも精神科医にも相談したくない,とキッパリ言われて考えたこと」もご参考にどうぞ)
でも,私たちがいる。
なんなら大学院まで出て訓練を受けています。
そこまでしておいて,他の多くの方と同じ聴き方ではいけません。
専門家である理由があります。
臨床心理士が専門家である理由
しかしそれを一言で表すことはとても難しい。
だけど今から,伝えてみようと思います。
ちなみに,アプローチによってカウンセリングの手法は変わってくるので,ここで書くのは私が学んできた精神分析をベースにしたアプローチだと思ってください。
私たちは,話を聞く時,相手の心に想いを馳せています。
Freudが防衛機制という概念を提唱したり,FreudやJungが夢について考えたりしたように,本人が意識に昇らせている,その奥について想いを馳せています。
あるいはBionという人が,Kとかレバリー(物想い)という言葉を考えました。
このように私たちは「本人が,まだ“考える”に至っていないこと」に想いを馳せて,相談者様の「考える機能」を引き受けていることもあります。
それって,「心を読む」作業ではないでしょうか。
自分では分からないこと,辿り着けない心の深い部分に想いを馳せる。
「分かる」とはまた違う
それは,ボーダーラインパーソナリティの人がよくおっしゃる「私って,会ったら相手が大体どんな人が分かっちゃうんですよね」とはもちろん違う水準です。
「どんな人かわかっちゃう」と思っているのは,誰かの側面を見て,それを全面だと思うからです。そして,自分が受け取れない相手の「別の面」が出てきたら,認めない,切り捨てる,などの行動に出るので,「思った通りの人じゃない」自体には出会わなくて済みます。
ですから,これは病的な「分かる」なんですね。
もちろん,日常会話の中で「分かる〜!!」と言うのとも違います。
それは自分の枠の中で相手の気持ちを「分かる」わけですから,あくまで「似たような体験をした(ことがあると自分は思っている)ので,あなたの気持ちがわかる(と,自分は思っている)」だけのことです。
結論 だから,心を知る努力を
というわけで,私は一般の方に「臨床心理士って,心が読めるの?」と聞かれたら,まず「心を読む」の定義について話し合うことにしています。
(そして大体めんどくさいやつだと思われます!!笑)
このとき,メンタリストを想像しておられたのなら,チャンスとばかりに「心を想う」ことについて,私たちが普段どのように聴いているのかについて,お伝えしています。
私たちは奇術師ではありません。魔法使いでもありません。
でも,知ろうとする努力,想いを馳せる方法について,訓練された専門家です。
だから,心を知る努力を続けていきたいと思います。
参考文献
ありすぎるほどありますが,いくつか今日書いた記事の元になっている本を紹介しておきます。
藤山直樹(2008)集中講義・精神分析 上─精神分析とは何か フロイトの仕事,岩崎学術出版社
藤山直樹(2010)集中講義・精神分析 下 フロイト以後,岩崎学術出版社
松木邦裕(2009)精神分析体験:ビオンの宇宙―対象関係論を学ぶ 立志編,岩崎学術出版社
松木邦裕 (2015)「耳の傾け方―こころの臨床家を目指す人たちへ」,岩崎学術出版社
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