誰がセラピストを守るのか?〜SV自腹問題から考える〜
こんにちは。豊かに学び豊かに暮らす【フリーランス心理士×SNS起業】臨床心理士/公認心理師/精神保健福祉士のまりぃです。
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セラピストを守る責任は誰にある?
信頼しているスーパーヴァイザーがいます。
SVは一回10000円。
大学院の最終学年からずっとお世話になっている,超ベテランの先生です。
最近,SVについて考えたことがありました。
SVは高い
先述したように,私は一回のSVに60分10000円払っています。
この料金は,私がそのSVに持っていっているセラピーの一回料金の2倍以上になります。
体調が悪くて当日キャンセルすると,フルでキャンセル料をお支払いしなくてはならないので,その翌回は2万円になります。
でも,安全にセラピーを行うためには,独りよがりなセラピーをして,クライエントを害してしまうことを避けるためには,どうしてもSVが必要です。
ただ。
あるとき,ヴァイザーに聞きました。
「児童養護施設で働いている方とか,もっとハードなケースを持ってこられると思うんですけど,みなさんきっちりSVにいらっしゃるんですか?」
するとヴァイザーは答えました。
「生き延びるために必要なので,来ますよ」
ここで私は随分と考え込んでしまいました。
仕事のために行くSV費用をまるっとセラピスト本人が負担するのは当たり前なの?
児童養護施設の職員,プレイセラピスト兼生活指導員の求人は,よくみます。
地方にもよるのかもしれませんが,私が見かける求人はどれも驚くほど薄給です。
もちろん,SV代は自腹なんです。職場から出るわけではない。
(出るところもあるかもしれませんが,私の知っているところは皆さん自腹です)
……おかしくないですか?
児童養護施設の職員として,セラピーを全うしている。それが子どものためにはなる。でも,セラピスト自身が「生き延びる」必要があるような苛烈なセラピーであることが多い。そして,セラピストは,生き延びるために自腹でSVに行くんです。
毎週行けば月収の1/3位かかってしまうような料金設定の,SVに。
誰のために生き延びるのか?
残ったお金で,彼らは生活できるのでしょうか?
彼らは,なんのために,誰のためにそこまでして「生き延びて」その仕事をしているのでしょうか?
もし,それが仕事だというのなら。
彼らはそれで生活ができなくてはなりません。
生活費を圧迫するくらいの支出がないと「生き延びられない」仕事なんて,健全な仕事でしょうか?
整体とか病院に置き換えてください。
激しい肉体労働をしていて,毎週治療が必要になるとします。
その治療費で,収入の1/3がなくなるとしたら……
その仕事を辞めるのが「健康な心」の判断だと思うのです。
しかしなぜか,心理だとそうはならない。
クライエントのため,という欺瞞
だって,クラエントを,子どもたちを見捨てていけないじゃないか。
と言われたら,それはそうです。
大学院時代,コロナ禍初期に通学できなくて,セラピーを続けられなくなった後輩が,先生方や先輩,同期,後輩にまで「無責任だ」ガン詰めされて学校を辞めてしまったことを思い出します。
そうです,セラピーを引き受けるというのは,生半可な覚悟ではいけない。
人の人生がかかっています。
反面,じゃあ,セラピストは誰が守ってあげるのだろう?とも思うのです。
安全なセラピーのために,セラピストも守ってあげてほしい
雇用側は言います。
給料はこれだけですよ,SV代は出しません。
だから,クライエントのためにSVに行くかどうかは自分で決めてね。
しかしそのセラピーは苛烈で,きちんと治療効果を上げるためにはSVに行かないといけない(しかもある程度の料金設定になるような,しっかり考えられるベテランの先生のところに行かなきゃいけない)のなら,
セラピストを守る枠がないではありませんか?
セラピスト自身を守る枠があって初めて,クライエントを守ることができます。でないと,大学院後輩のあの子のように,ある日急にセラピストが「消える」ことになるのです。それは,クライエントを深く,深く傷つけることになります。
雇う側は「SVに行かなくてもいいんです」と言うかもしれない。
でもSVに行かないと,今度はクライエントにとって有益なセラピーが提供できない可能性が高くなります。
「それでもいいからSVに行かなくてもいい」と言う雇用者なら,それはクライエントのためを想っていない,ただの営利主義者です。
この話は,今の所ただの問題提起です。
心理職界隈で,当たり前とされているその慣習を,誰も疑問に思っていないことへの問題提起です。
誰も,と言うのは言いすぎました。
「助けてくれ」「給料が低すぎる」という声は挙がっています。
でもスーパーヴァイザー側や,雇用主に当たる側からはこの点を疑問に思う声が挙がっていないのです。
私の今の結論
だから,私は今,自分の身は自分で守ることにしています。
身を守れないような苛烈な職場には入らないこと。
自分でしっかり稼いで,キャンセルしても気持ちよくSVに一万円出せる自分であること。
それしか今はないのです。
だから,こんな本を書きました。
本当は,仕組みが変わるのが一番良いことです。
だけど,それには遠そうだから。
それは遠いけれど,だからと言って,見捨てておけないクライエントは,たくさんいます。
だから私は,自分で豊かになり,余裕を持って「あんまりお金出せないけどお願い!」と言われても,どうしても必要な時は引き受けてあげられる臨床心理士でありたいです。
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