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【育ててみた】甲子園の土で野菜はできるのか?
突然だが、みなさんの夏の楽しみは何だろうか。
わたしは毎年、甲子園をとても心待ちにしている。
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高校球児がひと夏にかける姿に、わたしたち大人も勇気をもらえる。
今年で誕生100年。
予選から大いに盛り上がり、たくさんのドラマが生まれていた。
決勝の京都国際VS関東第一戦も熱すぎた。ずっと感動しっぱなしだった…。
そして甲子園といえば、「甲子園の土」。
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出場チームの選手たちが土を袋に詰める姿は、日本の夏の風物詩といっても過言ではない。
・・・
時は遡って少し前、そんな甲子園の予選が始まり、熱が高まっていた私は、あるニュースを目にした。
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「おうち菜園」が人気 初心者でも簡単!袋のまま野菜を育てる…おしゃれな室内栽培キットも
家庭菜園の話題が、テレビで流れていたのだ。
アラサーになると野菜のありがたみが沁みてくる。だが、最近は値上がりも心配だ。たしかに、家庭菜園はアリかもしれない・・・
そのとき、ふとこんな疑問が浮かんだ。
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甲子園の土で育てた野菜。なんと夢のある響きだろう。
屈強な高校球児が育つ土なら、野菜ももりもり育つかもしれない。何より、そんな野菜があれば一口でも食べてみたい。
疑問の答えを求めていろいろ検索してみた。が、実際に作られた例はなく、本当に育つのか、どんな風に育つのかは分からなかった。
なら、自分で育ててみればいいじゃない?
高校球児の頑張る姿に感化されていた私は、この妄想を形にすべく、ひと夏のチャレンジに臨んだのだった。
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そもそも、甲子園の土は入手できるのか?
・ルート1:メルカリ
野菜を育てる前に、まずは甲子園の土を入手しないといけない。というか、間違いなくここが一番のハードルだ。
なんとか一般人でも甲子園の土を入手できる方法はないか。そんな気持ちでリサーチを開始した。すると・・・
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なんと、メルカリに甲子園の土が出品されていた。
その多くは、アクセサリーのような容器に封入されている。
少しグレーに感じつつも、商品内容を見てみると、どうやら次の2種類があるようだ。
①甲子園球場の生誕95周年イベントで、来場者に配られたもの
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阪神の本拠地、甲子園が1日に球場誕生95周年を迎え、記念イベントが行われた。甲子園歴史館ではこの日から「甲子園の土」を使用したキーホルダーを来場者に配るイベントが始まった。
②コロナで中止になった2020年の大会で、記念品として甲子園が高校球児に配布したもの
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プロ野球阪神と阪神甲子園球場は8日、全国の高校3年生の全野球部員約5万人に「甲子園の土入りキーホルダー」を贈ると発表した。新型コロナウイルスの影響で「夏の甲子園」という目標を失った球児のために、と矢野燿大監督らが発案した。
どちらもちゃんと本物のようだが、これは・・・「せめてもの思い出になれば」と配られたものが、転売されているということだろうか。
あらためて商品を細かく見てみると、恐らく土は数グラム程度の量だ。そして、このとき(2022年6月)は50個ほど出品されていた。
価格は1個1,300円~4,000円ほどと高めで、すべて購入しても100gになるかどうか。ポット1杯分にもならなそうだ。
出品の経緯がグレーな上に、栽培に必要な量も確保できなさそうなので、このルートは苦しくも断念した。
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・ルート2:阪神園芸
リサーチを進めていくと、2010年に甲子園の土が販売されたとの情報に行き着いた。
甲子園の土を整備・管理する会社 阪神園芸が、同じ配合の土を発売したとのことだ。
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阪神園芸は、プロ野球の試合中にも、甲子園のグラウンド整備に登場することがある。
その手際の良さは「神整備」と称され、コアな野球ファンにはお馴染みの存在だ。
しかし、土の一般販売は問い合わせが殺到し、あまりの売れ行きからすぐに中止。その後、業務用を前提に10袋(150ℓ)単位での販売に切り替えたようだ。
なお、オンラインショップや購入フォームはなく、買いたい場合は直接問い合わせるしかなさそうだ。
少々値が張るかもだが、甲子園の土が手に入るなら・・・ということで、阪神園芸に電話してみた。
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800kgの甲子園の土がダンプで運ばれてくる・・・
急にスケールが大きくなり尻込みしてしまったが、覚悟を決めて聞いてみた。
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どうやら、阪神園芸の人も、甲子園の土で野菜を育てたことはないようだ。
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なんと、甲子園の土の転売は阪神園芸も認知しており、問題と感じていることが分かった。
これが原因で販売をやめてしまった上に、阪神園芸側が対策の手間を取っている状況も判明した。
話を聞いて、改めて転売の良くない面を知り、悲しさが芽生えた。
軽い気持ちで野菜を育てようとして、社会問題に触れることになるとは思いもしなかったが・・・。
改めて転売について、阪神園芸側がどう感じているか、聞かせてもらうことができた。
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・・・
後日、阪神園芸から回答があった。
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残念ながら、阪神園芸から甲子園の土を入手することはできなかった。
転売問題もあって、昔よりも買い手の素性や目的を厳しく見ているようだ。
ただ、購入は難しいとしても、ここまできて検証を諦めたくはない。
ふと、リサーチ中に目にした情報を思い出した。
甲子園の土は、特定の産地の「黒土」と「砂」をある比率で混ぜ合わせて作っている、というのだ。
これは、甲子園の公式HPや、新聞の記事などでも公表されている。
・黒土の産地:岡山県日本原、三重県鈴鹿市、鹿児島県鹿屋、大分県大野郡三重町、鳥取県大山などの土をブレンドしている。
・砂の産地の変遷:甲子園浜及び香櫨園浜社有地 ~ 瀬戸内海産の砂浜 ~ 中国福建省 ~ 京都府城陽
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もし土の産地と比率が分かれば、同質の土で再現実験ができるかもしれない。そう思い、質問してみた。
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≪ 鹿児島県志布志市の黒土6:砂4! ≫
これがリサーチ当時の ”甲子園の土のレシピ” だ。
この情報を手掛かりに、一般人でも入手できる土で甲子園の土を再現し、野菜を育ててみることにした。
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・ルート3:ふるさと納税
まずは市販のグラウンド用土を調べ、スポーツ用品店、園芸店、さらには土の卸業者など、10社ほどに問い合わせてみた。
しかし、複数の土を混ぜたものや、そもそも産地不明の土が多く、リサーチは難航。
ところが、楽天市場で思わぬ出会いがあった。
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なんと、鹿児島県志布志市が、志布志の土を使ったグラウンド用土を、ふるさと納税の返礼品として出していたのだ。
志布志市は、九州南部・鹿児島湾東岸の大隅半島に位置する、「大隅地域」の市の一つだ。
このエリアの土壌は、桜島や霧島の噴火によってできている(鹿児島県「鹿児島県の土壌の概要」より)。
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そんな志布志の土は、クッション性、水はけのよさなど、グラウンド用土としての長所があり、全国から問い合わせが来るという。
だからこそ、市も特産品の一つとして売り出しているようだ。
あくまで甲子園の土とは違うようだが、志布志の土が予想外のルートで手に入りそうな状況に胸が高鳴る。
あとは配合比率。取り扱い元の業者に問い合わせてみると・・・
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との返答。惜しい!!!
しかし、このルートで志布志の土を入手する以外なさそうだ。
幸い、20kg×2袋という大量の土が届くので、比率の問題は後で考えることにした。
念のため、野菜の栽培についても聞いてみた。
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やはり、誰も育てたことがないようだ。こうなると、俄然試しがいがあるというもの・・・
と思っていたところ、何やら不穏な質問が投げかけられた。
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なんと言うことだ。甲子園の土で野菜を育てようとしたら、産業スパイを疑われてしまった。
あまりに衝撃的で一瞬フリーズしてしまったが、冷静に話を聞くと、そういうことが実際にあるという。たしかに、業者にとっては切実な問題だ。
そんな事情があるなか、野菜を育てたいという謎のモチベーションで問い合わせまくるヤツが現れたら、警戒して当然というもの。
とても優しく丁寧に対応してもらったので、大変申し訳ない気持ちになった。丁重に謝罪をし、経緯を説明して納得いただいた。
・・・
紆余曲折ありながらも、何とか土の入手ルートが見えてきた。
ちなみに、楽天市場のふるさと納税ランキングには、うなぎや黒毛和牛など、思わず納税したくなる返礼品がずらりと並んでいる。
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そんな誘惑を必死に振り払い、土を買い物かごに入れて「寄付を申し込む」ボタンを押した。
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甲子園の土を再現する
注文から5日後、わが家に志布志のグラウンド用土が届いた。
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早速開封し、中身を確認。
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袋にはさみを入れると、湿気混じりのムワっとした空気が上がってきたが、土っぽい自然の匂いはあまりしない。
見た目は黒に近い茶色で、野球場のそれを思い出す。触ってみると少し水気があるが、粒が均一で細かいのでさらさらとしている。
さて、この1袋の土は今、黒土7:砂3の割合で配合されている。つまり、およそ黒土14kg:砂6kgが入っている。
これを黒土6:砂4に変えるためには、黒土を5kg取り出し、黒土9kg:砂6kgにする必要がある。
そのために着目したのが、小学生の理科で習った土の堆積実験だ。
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水の中で土壌をかき混ぜて置いておくと、土・砂の沈殿スピードの差で層が分かれる。
この方法なら、黒土だけを取り除くことができるかもしれない。
さっそく試すべく、大きめの水槽に土を入れ、水を張って十分にかき混ぜ、3時間ほど置いてみた。
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すると・・・
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黒土の層と砂の層にちゃんと分かれた!!
ここから上の黒土だけを回収する。土が混ざらないように慎重にすくい取り・・・
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天日干しにし、水分を飛ばす。
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この工程を繰り返し、5kg分の黒土を採集することができた。
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この黒土を除いたら、残った土を袋に戻し、念入りに混ぜ合わせ・・・
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甲子園の土を再現した、黒土6:砂4のグラウンド用土が完成した!
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野菜の種を選ぶ
土の準備が整ったところで、野菜の種を買いに出かけた。
向かったのは、東京都練馬区にある大型園芸店、オザキフラワーパーク。店員さんにおすすめを聞いてみた。
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暑い時期には、発育が止まってしまう野菜も多いそうだ。
店員さんの情報を参考に、暑くても比較的育ちやすく、入門にもおすすめというこの4品種を育てることにした。
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とても力強い回答だった。なるほど、甲子園の土は野菜にとって栄養不足ということだ。
となれば、最悪まったく育たないかもしれない・・・
そんな不安を察してか、退店時にオザキフラワーパークがエールを送ってくれた。
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「感じよう!植物の力!」
やけに壮大な言葉に背中を押され、野菜を信じて最善を尽くそうと心を強く持つことができた。
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野菜を育てる
ようやく種と土が揃ったので、いよいよ栽培を進めていく。
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プランターに土を入れたら、それぞれの品種にあったまき方で種をまく。
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土に深さ5mmほどの溝をつくり、それに沿って直線状に種をまく。
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直径5cmくらいのくぼみをつくり、縁に沿って円形に種をまく。
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間隔を取りながら、全体にパラパラと種をまく。
種をまく作業は純粋に楽しい。実験が終わっても、色々育ててみたい。
なお、ベーシックな土で育てた場合との違いが分かるよう、通常の培養土も用意した。
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グラウンド用土と比較すると、開けた瞬間の匂いから全然違う。
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培養土には、雑木林の土のような、自然を感じさせる湿度と生臭さがある。
手で触ってみると、根っこや木くずが混じっているのが分かる。粒も粗く、空気を含んでいる感触がある。色もかなり赤茶みがある。
一口に土と言っても、ここまで違うものなのか・・・
こうして無事、種まきが完了した。
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左列が培養土、右列が甲子園の土(再現)だ。
水やりをすると、土質の差がまたあらわれた。
甲子園の土はとにかく水はけがよく、水を注ぐと泥のようになり、種が浮いてきてしまった。
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慎重に埋め戻すが、この土に野菜がなるイメージが湧かず心配になる。
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1日目。
まだ土には変化がない・・・
と思いきや、よく見ると甲子園の土で発芽している!
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これは良いスタートダッシュだ。
対する培養土の方には、まだ変化が見られない。
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やはり甲子園の土は野菜を育てるパワーも秘めているのか・・・
そんな予感が湧いてくる。
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2日目。
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おおっ、どちらも一気に芽が出てきた!
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特に小松菜と水菜の成長が早い。
ちなみに、甲子園の土は水やりで種が流されるので、直線的に生えるはずのすじまきの小松菜が、広範囲で発芽している。
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5日目。
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どちらの土も成長しているが、徐々に甲子園の土の伸びが悪くなってきた。早くも、栄養の差が影響しているのか・・・
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培養土の方はしっかりと茎が育ち、葉が立っている。
一方で、甲子園の土は茎が細長く伸び、葉の重さに耐えられず横倒れてしまっている。
収獲できる大きさまで育つか、不安が大きくなってきた。
倒れてしまった苗、狭い間隔で生えた苗を間引きながら育てていく。
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10日目。
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どの野菜も、成長の差が開いてきた。
培養土の方はすくすく大きくなっているが、甲子園の土の方はなかなか大きくなれない・・・。
劣勢になるほど、応援したくなる気持ちが強くなってくる。
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こんな調子で、収穫可能な大きさに育つまで、50日間育てていった。
その結果が
・・・
・・・
・・・
これだ!!!
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最終日までその差が縮まることはなく、むしろ開く一方。
大逆転勝利のドラマを期待したが、野菜ではそうもいかなかった・・・。
培養土の野菜は青々と茂った。一方、甲子園の土の野菜も伸び続けてはいたものの、終始細く短くという感じで、30日を超えるとほとんど育たなくなってしまった。
過酷な環境で、苦戦を強いられたに違いない。むしろ、よくここまでがんばったと健闘を讃えたい。
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以上、約2か月に渡る再現実験の結果は、
甲子園で高校球児は成長するが、野菜は成長しない
という結論になった。
・・・
なお20日目頃に、台風が近付いたため室内栽培へ移行した。
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ワンルームの我が家の半分を野菜に割き、太陽光を補うためLEDライトも3基用意。
人生で最も「農耕に支配された人類」を体感した時間だった。
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どんな味がする?
いよいよ実際に食べてみる。甲子園の土で育てた野菜は、どんな味になるのか。
再現実験ではあるが、どんな答えが待っているのか気になるところだ。
収獲した野菜を皿に盛ってみると、以下のようになった。
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ちなみに、可食部の大きさはだいたい5cmくらい。
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培養土の野菜と比較すると、ご覧の通り。少なすぎて、扱いも丁重になる。
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この貴重な野菜の味をなるべく感じられるよう、少量の塩とごま油だけのシンプルな味付けでいただく。
まずは小松菜から。
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量が少ないことで、かえって高級品のような雰囲気をまとい、美味しそうに見えてくる。期待しつつ食べてみると・・・
「…歯ごたえ強っ! でも美味しい!」
茎は細くて堅く、油断すると歯の間に挟まりそうだ。
その分、シャキシャキ感は通常のものより勝っていた。
野菜の青っぽさも強い気がする。あと、カイワレ大根のような辛みが少しある。
過酷な環境で育ち、酸いも甘いも凝縮された結果、主張の強いベビーリーフのような感じになった。
小松菜っぽくはないが、これはこれでかなり美味しい。
評点は【 ★★★★☆ 4/5点 】
小さい葉と、存在感のある歯ごたえ・味がマッチしており、思いのほか好印象だ。
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続いて、水菜。
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口に入れてみると・・・
「堅っ」
第一印象は、とにかく堅い。水菜の細い茎が力強さを増した。いわしの骨のごとく、喉の奥につっかえる頑丈さだ。
そして茎だけでなく、葉も堅い。甲子園の土は、高校球児も野菜も打たれ強くするらしい。
が、噛んでいくうちにちゃんと美味しい水菜になった。みずみずしさを犠牲にして、シャキシャキ感に全振りした感じだ。
あと、水菜なのに少し辛みを感じた。
評点は【 ★★☆☆☆ 2/5点 】
歯ごたえを超えた堅さと、本来ないはずの辛みに意表を突かれ、美味しいよりも驚きが先に来てしまった。慣れてくると、その奥にある美味しさも分かるようになるが・・・
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続いて、ラディッシュ。なのだが・・・
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根っこがまったく育ってない!
ただ、葉もちゃんと食べられるらしい。せっかくなので、そのままいただいてみる。すると・・・
「堅っ。あと辛っ!!!」
頑丈に育っていることにはもはや驚かないが、かなり辛い。
「はつか大根」の和名よろしく、シャープな大根の辛みが襲ってくる。大量のカイワレ大根を一気に頬張ったような味がする。
ちなみに、培養土で育てたラディッシュの葉も食べてみたが、辛みはアクセント程度でそこまで強くない。
野菜はツラい環境に身を置くと、辛くなるようだ。
評点は【 ★☆☆☆☆ 1/5点 】
堅い葉と茎をがんばって咀嚼するほど、辛みが強くなる。また、葉に産毛のような繊維が生えているのだが、それも堅く育っており、口のなかに刺さって食べづらかった。
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最後に、レタスをいただく。
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最も採れた量が少なかったので、食べるのに一番緊張した。その味は・・・
「無っ・・・!」
まあ、レタスってもともとそんなに味しないけど、小さい分余計にしない。
でも、葉はとても肉厚で堅く、シャキシャキ感だけは劣らなかった。だから余計に、少ない&味がないことに虚無を感じる。不思議な食感だった。
評点は【 ★★★☆☆ 3/5点 】
水菜とラディッシュの落差からかもしれないが、もはや堅さが適切なだけで美味しく感じた。歯ごたえを楽しむための食材、と捉えれば十分アリだ。
・・・
以上、4種の野菜を食べてみて、
甲子園の土で育てた野菜は、堅くなる&辛くなる
ということが分かった。
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専門家に聞いてみた
結果、野菜は育たなかった。それはそれで興味深いので、さらに理由を知りたくなった。
そこで植物園を訪ね、専門家の方に質問してみた。
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なるほど。栄養不足は前にも聞いたが、特に窒素が足りないというのは新しい発見だ。
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植物の話と、酸性・アルカリ性の話は、どちらも小学校の理科で習う。だが、結び付けて考えたことはなかった。
こんな形で、学びが繋がる日が来るとは・・・
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甲子園の土は水はけがよすぎて、水やりのたびに種が流されていたが、それは土の構造が関係しているようだ。
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汗や涙は栄養になりそうなイメージがあったので聞いてみたが、本気で野菜を育てるならもっと根本的に土を改造しなければいけないようだ。
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甲子園の土で育てるなら、らっきょうがおすすめとのこと。
皆さんも、甲子園の土が手に入ったらぜひらっきょうを育ててみてはいかがだろうか。
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・・・
結論
ということで、「甲子園の土で野菜は育つのか?」の検証結果は、
・育たなくはないが、かなり育ちにくい
・何なら堅くなるし、辛くもなる
ということになった。
思うように育たず、死ぬほど焦ったし苦戦もしたが、それはそれで興味深かった。
問題を深掘りすればするほど、思わぬ発見に繋がるのも、知的な喜びがあった。
ただ、プランターの室内栽培をワンルームでやるのは、足を伸ばして寝られないわ、小さい虫が湧くわで、とにかく不便なのでおすすめしません。
最後に、「野菜を育てたらやりたかったこと」を思いっきりやってみた。
それは・・・
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甲子園の土で育てた野菜を食べながら、甲子園観戦!!!
おわり
企画・撮影・構成・執筆:
種橋 由夏/丸山 優河
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