大変やけど「おもろい」教師の仕事を徒然と書いてみた。
巷で「教師の仕事」=”多忙、大変、人手不足”というイメージが、すっかり定着している今日この頃。
見るたび読むたび、教師の仕事の理不尽な出来事や、過重労働などを報道する各種メディア。
いやいや。
たしかに、学校現場は年々人手不足で、退職してしまう先生もいますよ?
しんどいなぁ~っていう日も多いですよ?
だけど、しんどい中にも「くすっ」と笑えるエピソードが、実はあるんです。
取りようによっては「いや、それは可哀そう」とか、「やっぱり教師の仕事とか理不尽だらけやん」という意見もありそうですが・・・
あえて、今回は理不尽だったり、ちょっとしたトラブルだったりを取り上げてみようかと思います。
ちなみに、取り上げたものは私個人としては「一周回って、おもろい」と感じたもの。
マイナスエピソードではなく、「おもろい小話」としてお付き合いいただけましたら幸いです。
case1:「お箸の使い方」を指導してほしいお母様(高校)
これは私が実際に経験したこと。
数年前、とある関西の高校で勤務していた時(25歳)の話である。
当時私は高校1年生のクラスの担任をしていた。クラスは明るく、やんちゃな子はいるものの、生徒はよく懐いてくれていて、それなりに楽しい担任ライフを楽しんでいた。
そんな中、担任の先生にとって、その年度の最初の関門ともいえるBIGイベントがやってきた。
【1学期の三者懇談】である。
1学期の三者懇談は、ただ通知表を見て成績や学校生活の話をするだけではない。
担任にとって1学期の三者懇談とは、1年間保護者の方と「円滑に」、「より良い関係で」、「ほほえましく?」付き合っていけるかどうか、そんな信頼関係の基礎を作る場なのである。
そのため、会話や仕草にいたるまで細心の注意を払わねばならない。
少しでも不信感や不満を抱かれてしまうと、後の信頼関係構築が難しくなる。
・・・失敗できない。
そんな極度のプレッシャーを抱えながら、私は懇談の初日を迎えた。
しかし、そんな私の心配やプレッシャーとは裏腹に、事前の準備などが功を奏したのか、懇談はスムーズに進んでいった。
私の勤務校では懇談は3日間あり、基本的には8:30~17:30の時間で、ほぼ休憩なく進めていく。
なかなか精神が削られる3日間なのである。
しかし、集中力を切らすわけにはいかない。
私の先輩先生の教えを何度も頭の中で反復した。
【懇談の場では、保護者にいかに満足して帰ってもらうかが勝負や。成績や学校生活、進路の話・・・懇談に来てよかったと思ってもらえるように、事前準備をしっかりして、誠心誠意保護者と話すんやで。】
生徒を褒めるだけではいけない。が、褒められてうれしくない親はいないし、褒めてから直してほしい点を言うほうが聞いてもらえる。
そんなことも先輩先生から教えてもらった。
これらを実践していたおかげか、懇談が終わるときには、どの保護者の方とも和やかな雰囲気になっていた。
上出来だなぁ・・・
と我ながら思った。
しかし、2日目の夕方。事件は起こる。
生徒(男子)が部活で懇談に10分遅刻するという、なんか不吉な始まりであった。僭越ながら校内放送で呼び出しをさせてもらった。
お母様にたしなめられつつ、生徒は自分の通知表が気になって仕方がない様子。
ほほえましいなぁ、と思いながら生徒とお母様に通知表を渡す。
すごく悪いわけでもないが、良いわけでもない。平均的な成績で、普段の学校生活も特に問題なく過ごしている。「2学期は成績アップ目指してがんばりましょう。」そんな言葉で済む予定だった。
あとは家での様子や、悩みがないか聞かないと・・・
と思っていると、お母様がおもむろに、
「この子、お箸がちゃんと持てないんですよぉ」
と話しかけてくださった。
まあ、ちゃんとお箸が持てない子も一部いるし、他愛のない会話かなぁと思い、私は「あら、そうなんや~。ちゃんと持てるようにせんとなぁ」と生徒に話しかけた。
が、次の瞬間、お母様は私の予想の斜め86度上くらいを攻めた返事をされたのだ。
「もう、小学校・中学校でちゃんと教えてくれへんから~!高校ではちゃんと教えてくださいねっ!!」
・・・ん???????
お母様の発言のあと、私は5秒くらいフリーズをしてしまった。
人は驚きすぎると、頭の処理機能がストップしてしまうと聞いたことがあるが、まさしくその状態だった。
・・・これは・・・・関西特有のボケなのか???
・・・え、ツッコまないとダメ!!????
いやでも、なんか小学校・中学校に対して結構本気で怒っていらっしゃるように見受けられる。そして気付く。
・・・あ、これ、ボケじゃなくて本気のご要望か!!!!???
どうお答えするのが正解なのか・・・どうお答えすれば「今日の懇談来て良かったぁ」とお母様に満足していただけるのか・・・!!
くっ・・・!!!事前準備でこんなこと想定できなかった・・・!!!
あまりにこのお母様のご要望に対して応えるには、私のスキルが足りてなさすぎる・・・!!!
「あはぁ~~~」
とぬるい笑い声を発しつつ、精神を全集中させ、なんとか精一杯の答えをひねり出した。それがこちら。
「お箸の持ち方についても、日頃からチェックさせていただきますねぇ~・・・」
と、給食ではなく、個々で食事をする高校では到底無理な返事をしてしまった。
いや、というか高校まで来てお箸の持ち方指導は無理・・・
というか、小中でもそこまでは絶対無理・・・
というかこれは、お家でご指導いただきたい内容でございます・・・
・・・なんて、昨今の学校界隈でそんなこと言えるはずもなく、ひとまず聞き入れる姿勢を見せねばならない。この時思った。
きっと、小中の先生方もどうしようもなかったんだろうなぁ・・・
と、顔も知らない彼の小中の先生方に思いを馳せた、そんな夕暮れだった。
しかし幸運にも、私の生ぬるい返事に対してそこそこ満足していただけたのか、お母様は「2学期もよろしくお願いしますねぇ~」と帰っていかれた。
その後、彼のお箸の持ち方について頭を悩ませていたのだが、どうやら友人たちに指摘されたらしく、1年生が終わるころには多少改善されていた。
そのおかげか、お母様からのそれ以上もご要望は出なかった。
指摘してくれた生徒たちには感謝してもしきれない。
・・・要は色んなシチュエーションを想定しないといけないよって話。
case2:ミニマリストお母様(小学校)
こちらは、私の先輩が、県内の教員合同研修会に参加した時に、小学校の先生から聞いたお話である。
※小中高の先生が集まり実践報告などをする研修会
子供たちが本を読まなくなった、という話はよく聞く。
たしかにスマホやゲームを持つ子供たちにとって、本より楽しいツールが世の中に溢れすぎている。
でも、本でしか学べないこともたくさんあるし、そういうことを伝えていくのも仕事だと考えている先生も多い。私もそうである。
・・・のだが、そんな先生の「思い」を打ち砕いたのが【ミニマリストお母様】だ。
とある小学校では図書館の本を貸し出すことに力を入れていた。
クラス対抗で借りた本の数を競ったり、「月に2冊は本を読もう!」といった目標を掲げていたらしい。
数値化すると、子供たちは頑張る。
毎月かなりの数の生徒が図書館で本を借りていたらしく、図書館利用率の高い小学校なのだという。
目的なしに本を読むのは、大人でも難しい。
子供たちを見習って、先生たちも本を積極的に読むようにするなどしていたらしく、見習うべき点の多い学校である。
さて、ここまでは何の問題もなかった。
事件というのは、急に起こる。
ある放課後、職員室に1本の電話がかかってきた。
児童のお母様からだった。
電話に出たとき、既にお母様は超絶怒っていたらしい。
「これは・・・ちょっとヤバいか・・・?」
と電話を受けた先生は思ったようで、まずは落ち着いていただこうと、「何がありましたか?」と問いかけた。
すると、その内容は驚くべきものだった。
「学校で本を借りるよう呼びかけるの、やめてほしいんです!!」
電話を受けた先生は、はじめ訳が分からなかったらしい。ひとまず、詳しく話を聞いていくと、
「学校の本なんて誰が触ってるか分からなくて汚いし、本に興味が出て、本を買ってほしいなんて子供が言い出したら、部屋が散らかるじゃないですか!!!」
という内容だったらしい。
本を読まなくて困ってるんですよねぇ・・・という保護者の意見はよく聞く。しかし、本に対してこんな否定的な意見は(少なくとも私は)初めて聞いた。
そのご意見を受けた学校は対応に困ったらしく、しばらくは大々的に本を読むよう勧めるのを控えたようだ。
どうやらそのご家庭は、いわゆるお母様が【ミニマリスト】なのだという。そしてかなりの潔癖症らしい。
まさか、こんなご意見が出るとはなぁ・・・とベテランの先生方もビビり倒していたそうだ。
恐らくお母様に「本を借りてくるな」と怒られたのだろう。その子は借りはしないが、学校の図書館で本を読むようにしていたらしい。
各家庭の事情や考え方には、なかなか先生でも意見できない。
が、さすがにこのまま放っておくこともできないようで、お母様には
kindleなどでも本は読めるし、図書館じゃなくても良いから本を読ませてあげてくださいね!
と後日、校長先生自らお母様と話してくださったらしい。
なかなかの大騒動である。
ミニマリストも高じすぎると考えものですねぇ・・・
こんな話をしつつ、私と先輩はそんなご意見もあるのだと、また1つ賢くなったのであった・・・
読んでいただいて、ありがとうございました!
好評なら続編書きたいです(^ ^)