これが日本の『アルマゲドン』!天体の地球衝突を避けるために地球の軌道を変えてしまうという設定に「昔の邦画って元気だな」と思った『妖星ゴラス』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:11/21
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★★☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★☆
【作品情報】
原題:-
製作年:1962年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:88分
ジャンル:特撮、SF、パニック
元ネタなど:なし
公式サイト:https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1319/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
土星探査に向かっていた宇宙船・隼号は、途中、黒色矮星ゴラスの観測に赴いたが、その強大な引力に引き寄せられて爆散、乗組員全員が殉死する。
隼号から送られたデータによると、ゴラスが今の進路のまま進めば2年半後に地球に衝突するという。事態を重く見た宇宙物理学会の田沢博士(池部良)と河野博士(上原謙)の働きかけにより、全世界の科学者が一堂に会し、衝突回避のため地球を40万キロ移動させ、軌道を変える計画が立案された。
【感想】
※以下、敬称略。
今年最初の「午前十時の映画祭14」にて。1962年の日本映画。黒色矮星という天体が地球に衝突するのを回避する話なんですが、「昔の邦画って元気だな~」と思うぐらい、その設定と特撮技術に圧倒されました。
<ハリウッドもびっくりな設定?!>
今回の映画は、地球の6000倍の質量を持つ黒色矮星ゴラスが地球に衝突するときたもんです。ハリウッドなら『ディープインパクト』(1998)も『アルマゲドン』(1998)も衝突する隕石を破壊する方向に舵切をしたじゃないですか。ところが、本作では妖星ゴラスの破壊が無理だと判断し、なんと地球の軌道を変える策を実行したんですよ!南極に重水素ならびに三重水素を利用したロケット推進装置を設置して、100日間で地球を40万km移動させます。一応、科学的考証は行った上での設定ではありますが、そもそも地球規模のパニック映画なんて昨今の邦画ではまず観ませんよね。この映画は1960年代に世界的に宇宙開発事業が盛んだった背景を踏まえて制作されたらしいですけど、CGもろくにない時代によくそんなドストレートなSF映画を作ったもんだなあと。ある意味、当時の邦画ってすごく元気があったんだなって感じました。
<日本の特撮技術を目に焼きつけろ!>
本作の壮大なスケールにおけるSF要素を可能にしているのが、日本が世界に誇る特撮技術の数々です。特にミニチュアを使用したシーンの精巧なこと。先の南極大陸においては、砕氷船が進むシーンでの氷原は、当時最新の素材だった発泡スチロールで作成されたそうです。そう、発泡スチロールって1950年にドイツで開発されて、日本で生産が始まったのは1959年かららしいんですよ。そう考えると当時は最新の素材ですね。
さらに、妖星ゴラスが地球に接近した際に起こる天変地異のシーンも迫力ありまくりなんですよ!高波によってあらゆる家屋が押し流され、山々も崩れるところもすべてミニチュア。ラストで国会議事堂や大阪城が水没したシーンは荒川にビル群のセットを持ち込んで撮影したそう。こんなセット作るだけで気が遠くなるような作業だと思うんですが、それをやってのけてしまうところに感服します。もし、今同じような作品を作ったら、CGを使って人々が妖星ゴラスに吸い込まれるシーンも生々しく描きそうです(笑)
<当時の方がハリウッドを意識していた?>
あと、所々ハリウッド映画っぽい感じがするのも特徴的でした。この映画が作られたのは1962年ですけど、劇中の設定は少し未来の1979年。街はクリスマスムードで盛り上がっていましたが、令和の今観てもそんなにはしゃがないだろってぐらいみんなはしゃいでいましたね(笑)また、妖星ゴラスの観測で再び宇宙へ行くクルーたちには壮行会なるものが開かれてダンスなどを楽しんでいて、こういうシーンってハリウッド映画ではよく目にするから、当時の方が今よりもハリウッドに追いつき追い越せって感じもあったのかなあって思ったり。
<そんなわけで>
日本が世界に誇る特撮技術の粋を集めた圧巻のSF映画でした。現代の映画よりも制作スタッフたちの苦労が垣間見えるのが感慨深いですね。それにしても、若い頃の白川由美って本当に美人ですねぇ。