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身体が欲するもの

自分の身体が何かを欲していると思うことは、誰にでもあるだろう。

コーヒー飲む人なら、カフェインを欲している。
お酒を飲む人なら、アルコールを欲している。
煙草を吸う人なら、ニコチンを欲している。
甘いものを欲している。
辛いものを欲している。
もっと根源的に、水分を欲している。

身体が欲するのは、口にするものだけではない。
愛を欲している。
友情を欲している。
もっと身体的に欲するものもある。

だが、僕の妻の欲しているものはそんなものではない。

夕食後、テレビをつけて何を見ようかとなった。
ちなみに僕も妻も、地上波のテレビ放送でリアルタイムで見る番組は、2つか3つだけだ。
あとは、見たい時にTVerで見るし、それ以外は海外ドラマや映画を、配信や録画で見ている。
ただし、妻が絶対に見ないものがある。
日本のドラマや映画、韓国のドラマや映画、そしてアニメだ。
これだけは、いかに話題になっていようが、NetflixやAmazonプライムでおすすめされようが、見向きもしない。
ところが、珍しく、「SPY×FAMILY」を見ようかと言い出した。
僕も最初に数話を見てそのままになっている。
「いいよ、それでも」
ところが、妻は「うーん」と考え出した。
まるで自分と対話しているように。
そして、
「いや、今は別のドラマ見るわ」
「どうして」
すると、少し間を置いて、

「身体が字幕を欲している」

僕もこれまで、人に言えるもの、言えないもの、様々なものを欲してきた。
また、人が、なんでそれをと思うものを欲するのも見てきた。
しかし、こんな人は見たことがない。

「身体が字幕を欲している」

僕は、突然現れたキャプテン・マーベルを見るように、妻を見つめた。
そこには、初めて見る妻がいた。
結婚して、34年、妻がこんな体質だったとは。
字幕を欲する身体。
おわかりだろうか。
これこそ、海外ドラマや洋画を、愛して愛して愛しきった人からしか出てこない言葉だ。
もしかすると、妻の身体の中には、赤い血ではなくて字幕が流れているのかもしれない。
それほどに、名言ではないだろうか。

あらためて僕はすごい人と一緒になったと認識を新たにした夜だった。

皆さんも、人生のどこかで口にしてみてはいかがだろう。

「身体が字幕を欲している」

※妻も最近noteを見ているようで、時々、ネタの見返りを要求されます。それでも、スイーツひとつで許してくれる優しい妻です。

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