【第3回】スキーマ療法開始後の最初の宿題

みなさんお久しぶりです。
第2回を更新してからどのくらいの月日が経ってしまったのでしょうか……。

私のスキーマ療法は2年以上のうつ状態の人を対象にしたスキーマ療法の効果測定の臨床試験への参加で、いつものメンタルクリニックではなく連携している大学病院に行って毎週1回20回のプログラムでどの程度改善するかというものでした。

2019年7月に臨床試験20回を終え、同年11月にアフターセッションというものを終え、2020年1月に試験後の脳のMRIを測定し、2020年1月からクリニックで月1回のペースでスキーマ療法を続けていくことになりました。
2020年7月現在も月1回ちょっとのペースでスキーマ療法を受け続けています。

一通りスキーマ療法のやることを1周したあと、また基礎からスキーマ療法をやり直しているという感じです。

この体験記では、臨床試験で行われていたスキーマ療法を紹介していき、臨床試験の部分が終わったら現在受けているクリニックでのスキーマ療法を紹介していきます。

2018年12月20日に出された宿題

前回の記事では、私がスキーマ療法をはじめる決意をした話と検査結果の共有をしました。

検査結果の説明を一通り受けた後、セッションの時間が来たので宿題が出ました。

宿題
①モニタリング
②今回のセッションの感想を書いてくる
③検査結果の復習

私は③の「復習」の意味がわからなかったので、何をしたらいいか聞きました。

すると「③検査結果にコメントする」という宿題になり、書けばいいのか聞いたところ「③検査結果へのコメントをノートに書いてくる」という宿題に変わりました。

ここのやり取りでのポイントは、わからないものをわからないまま受け取らずに、きちんとわかる状態で帰るということです。

私はASDの「具体性を好む」という特性があるので、「復習」という言葉では何をしたらいいのかわからず、質問しました。
(20回のセッションが終わったときに、どんなところが効果が高かったポイントか聞いたところ、率直正直な反応や感想があったことがよかったと言われました)


スキーマ療法ではかなり個人個人に合わせたセラピーを行っていくので、クライアントが自分の状態を隠してしまうとセラピストにはそれが伝わらないため、セッションが難航することがあるようです。


スキーマ療法を受けるときは、「こんなこと言っていいのかな」ってくらいのことまでずばずば言うくらいがちょうどいいって感じだと思いました。

宿題の実施

12月20日にだされた宿題を12月23日に実施しました。
検査結果の用紙に書いてある説明だけでは用語の意味が分からなかったので、ヤング『スキーマ療法』を参考にしながらコメントしました。

事前にスキーマ療法の本を読んでいて、スキーマひとつひとつに当てはまるエピソードを語らせる事例が多いことを知っていたので、それと同じことをすればいいのだろうと思って、結果を見ながら自分の生活状況と比較して、当てはまるエピソードがあるかを考えながらコメントしました。

次のセッションまで1週間しかなく、当時は手書きだったのでとても大変でした。
スキーマへのコメントだけでなく、モードへのコメントもしたのですが、長くなりすぎるのでこの記事ではスキーマへのコメントとそれへのセラピストの反応を書くことにします。

数字の読み方
自分の得点(健常者平均点)/満点→数値が高いほどよくない

ヤングスキーマ質問紙(YSQ)へのコメント

●断絶と拒絶の領域 91(58)/150

見捨てられ・不安定スキーマ 25(11)/30

日常的に、見限られないように生活している。
パートナーの些細な表常筋の変化・声色・発話のタイミング・間の取り方等でパタートナーの機嫌を察知し、なるべく存在感を消したり話しかけないようにしたり、パタートナーの嫌がることを避けようと行動する(軽度かつ日常的)。
仲のいい(というよりも仲良くしていたい)友人の場合、相手の喜びそうな反応や返答を意識して考える。その際「一歩間違えたら(友人関係は)終わりだ」という緊張感が常にある。

不信・虐待スキーマ 20(12)/30

不信が強い。何かあればすぐに見捨てられるという不安があるので、相手が「怒ってないよ」と発言しても疑ってしまい、不安が消えない。また、夜間に暴行事件の被害にあったことがあり、男性一般への不信がある。うかうかしているとまた被害に合う気がするので、夜間はひとりで外を絶対に歩かない。どうしてもの時は短距離でもタクシーを使う。

情緒的剥奪スキーマ 5(11)/30

大切にされている自覚は十分にある。家族・パートナー・友人・教員等。ただ、共感してもらえない感覚は強い(養育の剥奪はないが、共感・保護の剥奪はある気がする)ので、結果の数値が正しいのか微妙。

欠陥・恥スキーマ 13(11)/30

知的にも人間的にも能力的にも自分の周囲にいる人間より劣っている感覚があるので、もっと数値が高く出てもいい気がする。特に知的な劣等感は、一般教養・基礎学力・論理的思考力・倫理観のことを指していて、誰かと話すときは常にボロが出ないように警戒している感じ。

社会的孤立・疎外スキーマ 28(12)/30

日常的に些細なことで疎外を思い知らされる。どこにも居場所がない感じ。私が仲良しだと思っている人はみんな私よりも親しい別のコミュニティに所属していて、私はそのコミュニティに混ざれない。


●自律性と行動の損傷の領域 87(45)/120

依存・無能スキーマ 28(12)/30

無力感というよりは甘えている感じ。自分のできることもすぐ人に頼んでしまう。でも、実際にできないこともたくさんある(パソコンの初期設定とか、賃貸の契約とか、税金関係とか)。学ぼうとせず、助けてもらおうとする。

損害や疾病に対する脆弱性 23(11)/30

3年ほど前は、心気症の気があり、医学的問題が多かったが、夜間に暴行被害にあってから、夜道を歩くのが不安になり、タクシーを利用するようになった(外的な問題)。感情的問題は12月13日にメルトダウンを起こしてから(以前にも離人感が強いときなど)「変人」になることがとても怖くなるようになった。けど、安定しているときはそれほど不安にならない。

巻き込まれ・未発達の自己スキーマ 9(11)/30

「依存」の項目に関連して、もっと強い気がする。具体例は「依存」の項目参照。

失敗スキーマ 29(12)/30

失敗へのこわさより劣等感の方が強い。劣等感は中学校の時からある。父親が高校中退の中卒で、母親が高卒、兄が勉強が苦手だったことから、遺伝で頭が悪いと思い続けていた。実際にずっと追試ばかりで、頭が悪いと思っていた。大学も一般入試ではなくAO入試で入学したので、周囲の人と比べて基礎学力がないので会話しながら言葉をスマホで調べていて、大変だった。今の仲のいい人たちはフルIQが140だったりして、知的にも劣等感がある。大学院でも研究生活についていけず、テーマ変更をした。全部が中途半場で最後までたどり着いたことがない。


●制約の欠如の領域 34(23)/60

権利要求・尊大スキーマ 14(11)/30

他者をコントロールしようとするというより、他者が自分の思い通りになるように自然とふつまって、気が付いたら思い通りになっている。けど、自分を特別な存在だとは感じていない。

自制と自立の欠如 20(12)/30

自覚はたくさんあるが、これは人として普通のことなのでは?


●他者への追従の領域 55(35)/90

服従スキーマ 10(11)/30

重要他者(特にパートナー)に大して、感情(怒り)抑制の服従を日常的かつ意識的に行っていて「突然の制御不能な感情爆発」を月1くらいでおこす。欲求を犠牲にすることはない気がする。

自己犠牲スキーマ 18(12)/30

自分の欲求に罪悪感の自覚はほぼ全くない。他者の欲求を満たそうとする傾向は「服従」と同じような感覚である。怒らせないように相手のペースや好みにあわせたりする。

評価・承認の欲求 27(12)/30

日常的にほんの些細な拒絶をストレスに感じ、不機嫌になったり、怒ったりする。自身をよくみせようとする自覚はなかったが、業績至上主義であるかもしれない。(バイトの指導方針など)業績のない人はある人の意見に従うべきだと思うこともある。


●過剰抑制の領域 66(51)/120

否定・悲観スキーマ 21(13)/30

世界や社会・他者に対してネガティブなことばかり目がつく。

感情抑制スキーマ 11(12)/30

むしろ感情表現は豊かすぎる。

厳密な基準・過度の批判スキーマ 17(14)/30

大学入学後2年くらいまでかなりこの傾向が強く、「プロならちゃんとしろよ」とか「できないなら断れ」と思っていた。最近は、この考え方は自分の首を絞めると気が付いて、少しずつやめるようにしている。でも今でもスクールカウンセラーがヘルプマークを知らないとイライラする。

罰スキーマ 17(13)/30

傷ついたとき限定に、特に他者に対して思う。言葉遣いひとつとっても気になってしまう。


宿題に対する心理士からのコメント

心理士と話したとき、特にポイントになったのが「評価・承認の欲求スキーマ」でした。
というのも、通常ASDの特性上、このスキーマは持ってないことが多いからです。
私はこのスキーマの得点が27点と高かったけれども、普通のASDなら低く出るはずなので、「どんな承認欲求ですか」と聞かれました。

「承認欲求は昔からとても強いです。ありのままの私を認めてほしいって思います」

こう答えました。
返ってきたのは以下のような説明です。

①この評価承認の欲求スキーマは、承認欲求を満たすために周りに認めてもらえるように何でもするっていうスキーマです。たとえば、愛されメイクを研究したり、彼氏がショートヘアがいいって言ったらショートにしたり、みたいな感じです。
まりんさんの承認欲求はたしかにあるけれど、まりんさんは自分を変えてまで承認されたいとは思ってなくて、むしろ自分の信念やありのままの姿を認めてほしいっていう欲求ですよね。
特定の自分の状態を認めてほしいっていうのは、ASD特性の「こだわり」に分類されます。それはスキーマではなく、特性由来の「こだわり」なんです。

このような説明を聞いて、承認欲求にも種類があるのか、という感想を持ちました。

スキーマタイプの承認欲求は「他者中心の承認欲求」で、他者に認められるために自分をいくらでも変化させるタイプ。

こだわりタイプの商品欲求は「自分中心の承認欲求」で、他者に認められたいがそのために自分を変えず、ありのままの自分を認めてもらいたいタイプ。

私は「自分中心の承認欲求」が強いんだなぁと思いました。

スキーマ質問紙によるスキーマの調査はあくまでもあたりをつけるための調査であって、エピソードのヒアリングをすることで実は持ってないとか、実は持ってるとか、変化しうるものなので、検査結果だけをうのみにしないことが大切だと言われました。


今日はここまでにしたいと思います。
次回は宿題の続きで、「モード」について説明します。

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発達障害者まりんのスキーマ療法体験記
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