『音楽が本になるとき』
アルテスパブリッシング代表の木村元さんが書かれた著書、『音楽が本になるとき』を拝読しました。
アルテスパブリッシングは、私が初CD『Winterreise』をリリースした際に、
シューベルトの『冬の旅』について大きなインスピレーションをいただいたこちらの書籍の出版社。
内容自体、とても知的で、深い洞察力と豊かな情感のバランスに優れた名著であることはもちろんのこと、本としても、ものすごく丁寧に作られたということが否が応でも漂ってくる世界観に、最初から最後まで圧倒されっぱなしの作品でした。
そんな数々の素晴らしい書籍を世に生み出している木村さんの書かれた文章とあって、ずっと楽しみにしていました。まずは、思わずそっと手に取りたくなるような美しい装丁にうっとり。色合い、紙の手触り、フォントやレイアウト、随所にこだわりが散りばめられ、なんと木村さんセレクトによるプレイリストまで紹介されています!ひとつひとつの言葉も誠意をもって選び抜かれているのが伝わってきました。
そんな私のハートを鷲掴みにしたのは、最終章「あなたとわたしと音楽とーーーあとがきにかえて」に出てくるこちらの一文。
音楽が好きなことと、音楽を専門的に勉強しようと思うこととのあいだに横たわる、果てしない懸隔。その深い淵をこえて、音楽の道に進もうと決意させるものーーーそれは、自分にはそれがわかるという感覚だろう。
ここからアートのあり方、そして、現代のコミュニケーションへの問題提起にいたるまでの数ページは、是非ご自身の目で読んでいただきたいと思います。
私は、インタビューや演奏会でのトークのときに「共感力」という言葉をよく使うのですが、双方の距離感であったりジレンマのようなものを、やさしく、かつ誠実に表現してくださっていると思いました。そして、今私自身が取り組んでいる方向性についても、背中を押していただいたような気に勝手になっております。笑
木村さん、素敵な作品を、ありがとうございます。
さて、シューベルトの本を読んでいた頃はこんな風にご縁が繋がるなんて1ミリも思っていませんでしたが、大事な友人ベルンハルト・ケレスの著書の日本語版「クラシック音楽家のためのセルフマネジメント・ハンドブック」が、ついに7月27日にアルテスパブリッシングから発売されることとなりました。音楽家に限らず、夢やアイデアを実現したい多くの方に読んでいただけたらと思います。私自身、数多くの一流アーティストたちを間近に見てきたベルンハルトに相談に乗ってもらったり背中を押してもらった経験があり、その彼の本を日本に紹介する橋渡しをさせていただけたことをとても光栄に思います。
こちらからお読みいただける後藤奈穂子さんによる訳者あとがきには私も登場しております。また、「第2章 パーソナル・ブランディング」が試し読みできますので、是非ご覧ください。