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作者にとって、書くべき意味のあった話~『風と行く者』(上橋菜穂子)~

*この記事は、2020年7月のブログの記事を再構成したものです。


「守り人」シリーズの最新刊で、外伝にあたります。最新刊と言いつつ、なぜか発売されたことに気づいておらず、1年半以上経ってから読んだわけですが(^-^;

↑kindle版


本編終了後のバルサが、若いリーダーであるエオナに率いられた集団の護衛を、ある事情から請け負う話です。バルサはその集団を約20年前、エオナの母親にあたるサリに率いられていた時も護衛したことがあります。

エオナの姿に、かつての自分の姿を思い起こしつつ、旅は進んでいくのですが、そこにはるか昔、バルサやサリたちが生まれる前の歴史的事情が絡んできます。


感想はというと、正直個人的には、あまり読む必要がなかったかなと思いました。いえ、物語としてはよく出来ています。「守り人」シリーズのファンにとっては、またバルサに会えることが嬉しいでしょうし、何よりも作者である上橋さんにとって、この話は書くべき必然性のある話だったのだと思います。


どういう意味で、私自身は読む必要がなかったかというと、エオナやかつてのバルサをはじめ、未成熟な存在がてんこ盛りに出てくる話で、読んでいて、何だか疲労感を覚えたからです。もやもやするというか。

もちろんヤングアダルトを主要な読者層に想定したジュブナイル小説なのですから、未成熟な存在が出てくること自体は当然です。でも、今回は人数が多すぎました。


あと、外伝には本編で描き切れなかった事情を描くものと、完結した物語のプラスアルファの部分を描くおまけ的なものがあると思いますが、この『風と行く者』は完全に後者でした。身もふたもない言い方をすれば、読んでも読まなくても本編の物語世界には影響しません。

同じ外伝でも『炎路を行く者』はもちろん前者で、あれがあるからこそ本編の物語世界が更に厚みを増したわけです。


登場人物をしぼるなど、もう少し整理すれば、もっと良い話になったような気がします。偉そうな感想ですが。


見出し画像には、「みんなのフォトギャラリー」で「風」で検索して出てきた画像の中で印象的だった、雲の画像をお借りいたしました。


↑単行本



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