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【読書】ブックサンタになってみた~あるいは、プロイスラーの『小さい魔女』の感想~

「ブックサンタ」というプロジェクトをご存じでしょうか。困窮家庭など、大変な境遇にある子どもたちに、主にクリスマスプレゼントとして本を届ける試みです。詳しくは、ブックサンタの公式ホームページをどうぞ。


以前から興味はあったものの、うまく参加の機会をとらえられなかったのですが、数日前にNHKのラジオで取り上げられていたのをきっかけに、思い切ってやってみました。

ブックサンタのサイトからオンライン書店経由で参加するのが、一番簡単だとは思ったものの、やはり自分の手で探したかったので、賛同している書店に行くことにしました。
オンライン書店だと、選べる本が限定されるのに対し、実際の書店なら、趣旨に合った本である限り、何でも選べるというのもありました。


しかし、予想より大変でした。というのは、1軒目に行った書店(どこの書店かは伏せます)の品揃えが、予想以上に悪かったからです。
もちろん、この本で決めてしまおうかと思うものはあったのですが、何かちょっと納得がいかなかったのです。ブックサンタの賛同書店になっているのに、児童書の品揃えがこれかい、と思ってしまったから。

その書店の名誉のために言いますと、絵本であれば、選んでも構わないものはありました。でも絵本は比較的集まりやすいと聞いたので、最初から児童書にするつもりだったのです。それなのに……。

出来れば2軒目に行くことは避けたかったので、結構粘って探したものの、結局断念しました。オンライン書店にしてしまおうかとも、改めて思いましたが、後日2軒目に行きました。


そして買ったのが、プロイスラーの『小さい魔女』です。


子どもの頃から、ホッツェンプロッツのシリーズをはじめ、プロイスラーの作品が好きなのです。同じプロイスラーの『小さいおばけ』でも良かったのですが、私が読んだ大塚勇三訳ではないものしかなかったので。もしかしたら新訳の方が良い可能性もありますが、自分が読んでいないバージョンのものを贈るのは、ちょっと嫌だったのです。


実は『小さい魔女』は、ブックサンタのオンライン書店経由でも贈ることができます。そういう意味で、実店舗に行った意味はあまりないというか、ある意味時間の無駄だったとも言いますが、まぁ一応他の作品も含め検討した末なので、良いんです。ブックサンタの可愛いステッカーも頂けたし。

『小さい魔女』(私物)、ステッカー、お礼のチラシ


『小さい魔女』について、ちょっとだけ語らせてください。なおどうしてもネタバレが入るので、読みたくない方は、ここでストップしてください。


子どもの頃は、小さい魔女が最終的に「大きい魔女」たちに意趣返しをする結末を、「正義が勝つ」的に、単純にとらえていました。しかし大人になってこの本を読み返した時、号泣しながら読むことになりました。

なぜなら、小さい魔女が「よい魔女」になろうと思ってやったことが、すべて「大きい魔女」たちに否定されるからです。仕事場でのがんばりが評価されずに辛かった、当時の自分の状況と重なったというのが、号泣ポイントその1。

号泣ポイントその2は、問題の意趣返し。確かに「大きい魔女」たちの鼻は明かしたけど、小さい魔女が一人で(正確にはカラスのアブラクサスもいますが)ワルプルギスの夜を祝っているシーンに泣けました。世界でたった一人の魔女となった小さい魔女は、もはやこの後もずっと一人で、ワルプルギスの夜を祝うしかないのです。


こう書くと、ブックサンタで贈る本として相応しいのか分からなくなります。でも、私と同じように、子どもの頃と大人になってからで読み方が変わっても良いと思うのです。子どもの頃は単純に楽しく読めたからこそ、何度も繰り返し読んだのですから。誰に届くか分かりませんが、ちょっとでも喜んでくれると良いな。


ちなみにこのプロジェクト、嬉しい思いをするのが、本を受け取る子どもだけではないのが良いです。本が売れることで、著者や出版社、書店も嬉しいし、本を買うことで、自分の好きな作家を応援できる贈り手も嬉しい。三方よしどころか、六方よしくらいになっている気がします。


最後にもう一度、ブックサンタの公式ホームページを張り付けておきます。



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