みんなが主体性を発揮できる社会は、どんな社会か
本noteは「主体性と力」シリーズの第三弾です。
今回は個人が組織や社会の中で主体性を発揮するのはなぜ難しいのか、という問いから、すべての人が主体性を発揮したらいったいどうなるのか、というビジョンについて考えていきます。
第一弾、第二弾のnoteはこちらから。
ここまでのnoteでは、個人の主体性(agency)と組織・社会の力(power)について説明した後、個人の主体性を組織・社会の中で発揮するためには、主体性、公平性、民主主義、リーダーシップの四つのステップを踏むことが大切だということについて話しました。
すべての人が主体性を発揮できる社会とは、どんな社会なのか。
そのヒントが、ハーバード・ケネディ・スクールでコミュニティ・オーガナイジングやパブリック・ナレーティブを教えているマーシャル・ガンツ先生による主体性(agency)の説明の中に垣間見えます。
これを読んでいるあなたは、自らの人生・地域社会・未来を創造しているという希望を日々持って過ごすことができているでしょうか。
戦後〜高度経済成長期にかけての日本では、経済成長を通して安定した生活ができる社会を「創る」ことが社会通念的な価値観でした。
しかし、その社会を「創る」ことが達成されてきた頃、例えば仕事の「やりがい」は1980年前後から低下しているデータがあります。そしてその後、日本社会は「失われた30年」に突入していくのです。
日本は世界的に見て、社会や経済が安定した。
しかし、その安定した社会や経済のルーティンを盲目的に回すことは、人間的な幸せを意味するのでしょうか。
マズローの欲求五段階説でいう生理的欲求や安全欲求が満たされていても、さらなる根源的な人間の欲求が満たされず、メンタルを壊したり、命を落としたりすることもあります。
大人のメンタルヘルス・幸福度に関しても2022年の労働政策研究・研修機構のデータでは、大人についても41.8%がメンタルヘルスの不調を抱えているという報告があります。そして2023年の世界幸福度報告書では日本は人生の選択の自由度や寛容さに課題があり、47位と先進国の中では低い順位になっています。
また、大人の世界が投影された子どもの世界を覗いても、2022年の文部科学省の報告によると、299,048人の小中学生が不登校の意思表明をしており、10年連続で増加して過去最高となっています。小中高でのいじめの件数も681,948件と増加傾向にあります。
私は個人が組織・社会の中で主体性を発揮できること、自らの人生・地域社会・未来を創造できることに、希望を見出しています。
自分の主体性を明確にすること
他者の主体性とともに組織や社会の場に出せること
全員で共創できることを模索すること
このことによって、すべての人が主体性を発揮できることは、画期的なアイディア・工夫・知恵を生み出す源泉になると思っています。
例えて言うと、化石燃料で電気を生み出す必要があるというA案と原子力発電で電気を生み出す必要があるというB案がそれぞれあったときに、どちらかを力で押し進めるのではなく、どちらも共通の場に出します。
そこでAサイド、Bサイドの目的や懸念を場に出すことで、最後にそれぞれの意見を融合したウルトラC案が生まれるというイメージです。
このようなウルトラC案を生むためには主体性、公平性、民主主義、リーダーシップの四つのステップのトレーニングが必要だと考えているため、その方法について今後ご紹介したいと思います。
最終的なゴールイメージは、世界80億人全員が主体性を発揮できたら、いったいどんな世界が立ち現れるのだろうと夢想しています。
世界80億人全員が主体性を発揮して、そこから画期的なアイディア・工夫・知恵が生まれたとしたら、ひとつしかない地球の限られた資源を巡って今起きている紛争や気候変動などの世界規模の課題も解決できるのではないか。
そんな希望を胸に抱きながら、このnoteマガジンでは主体性について綴っていきます。