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「好き」を綴る365日、269日目。

父のつくるカレーが好きです。

もう食べられないけれど。
父は2年5ヶ月ほど前、彼岸の彼方へと旅立っていったから。

我が家……正確には我が実家にとって、カレー=父がつくるもの、でした。

いつ頃からか、そう刷り込まれていたのですよ。
わたしの脳にも、生活にも。

父はたたき上げの国家公務員。
在職中に調理師免許を取得していました。
職務上、調理師免許が必要だった時期があったようです(わたしが生まれる前の話ではないでしょうか、あるいはわたしが幼い頃の話)。

仕事で必要だったから免許を取ったとはいえ、料理が好きだったんだと思います。
というより、「食」にこだわりのあるひとだった、というのが正解か。
家での食事も、外食も、父の好み大全開だったから。

父が家でつくる料理のレパートリーは決まっていまして。
★お好み焼き
★肉じゃが
★クリームシチュー
★ふわふわ揚げ(さつま揚げみたいなもの)
★南予鯛めし
★伊予さつま汁
そして、カレー。

どれも素材からこだわり抜いていたため、採算度外視(笑)
男の料理、ってやつですね~。
お好み焼きなんて、「全部入り」でしたから。
牛肉、イカ、タコ、エビ、山芋・・・豪勢なこと極まりなし。
南予鯛めしは、鯛の刺身をいつもクルマで1時間かかる町の市場まで買いに行っていました。

母は父を手伝うことこそありましたが、口出ししなかったのがえらかったな、と思います。
「こんなにコスパの悪い料理、やってられるかぁぁぁ!」と主婦なら怒りたくなっただろうな、と。

さて、父のつくるカレー、略して父カレー。
レシピより何より、つくるためにかける時間と、つくる量に特徴がありました。

カレーに費やす時間は約3日間。
七輪に炭火をおこし、家の前でトロトロトロトロ煮込みます。

真っ赤にいこった炭火。


あとで知ったのですが、ご近所さんからは「七輪おじさん」と呼ばれていた模様・・・
わかる気がする。
カレーを煮込むだけでなく、ステーキ肉も秋刀魚もサツマイモも、なんでも七輪で焼いていたから。

そして、つくる量は約100人前!
炊き出しかよ・・・(笑)

ジャガイモを下茹で中……って、この量は?!


寸胴鍋で大量につくるのです。

横に置かれているのは炭袋。


たっくさんつくるから、おいしい。
おいしく仕上がるから、みんなに食べてもらいたくて配り歩く。
・・・あ、配り歩きたいからたくさんつくっていたのかもしれない。

しかし、寸胴鍋は扱いが大変でした。。。
両親が年老いてくると、父と母では鍋の上げ下ろしが難しくなり。
わたしは出勤前と退勤後に実家へ寄り、鍋の上げ下ろしを手伝わされておりました。
さすがに夜中鍋を外に出しておくわけにはいきませんからね。
夜は玄関の内側へと入れていたのです。
炭火も毎朝おこし、夜には消す。
なんと手間のかかるカレー。

父カレーの詳しいレシピは、実は母が持っていましてね。
今は母が引き継いでつくっています。
ただし、炭火ではなくガスの火で。
量は父がつくっていた頃の半分以下。
母にもできる無理のない範囲での引き継ぎです。

夏野菜を添えて、ちょっとアレンジ。

・・・これは、いつかはわたしが引き継いでつくるようになるんだろうか。
そして、わたしの娘たちへとバトンは渡され、そのまた子どもたちに・・・って。
今は想像がつかないけれど、きっと連綿と受け継がれるカレーになる予感。
レシピは家宝ということになりますね、ふふふ(笑)

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