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インティメート・ボランティア

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親切心ではじめたボランティアが、いつの間にか自分の空虚の穴をうめるものになっていた。
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#仕事

インティメート・ボランティア 17

このまま行くと、自分の人生は、うまくいっても、もう少しましな仕事につき、もう少し大きな、多分1LDKのマンションに住むぐらいで終わってしまうだろう。さりとて、悪くいっても、このままフリーターで食いつなぐことはできるかもしれない。しかし、病気になったときなど、何も保証もない。

田舎に帰ることもできるだろうが、帰って何をするでもない。早く結婚しろと両親や周りにとやかくいわれることを思うと、億劫になる

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インティメート・ボランティア 16

「まったく、何やってんの。メールにちゃんと書いておいたのに、読まなかったの」

沙紀が、呆れたような表情で腕組みして、威圧的に志穂にいった。

グループみんなに当てたメッセージの下に数行のメッセージが志穂宛に書いてあったのを、見逃し、志穂は沙紀にいわれたサンプルの手配をしていなかった。

「あと、1時間後に、クライアントのところに行かなければいけないのに、どうしてくれるの?」

志穂は表情を消して

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インティメート・ボランティア 15

1週間雨が降り続き、憂鬱な気分で、志穂はミヤケのアパートを訪れた。自分のワンルームのマンションと同じぐらいの広さだが、かなり老朽したアパートで、1階にあるミヤケのドアを叩くとき、ためらうほど気持ちは落ち込んでいた。

仕事と自分の将来についてぼやがかかったように先が見えないでいる。

しかし、2週間ぶりにミヤケの顔を見ると、自分でも驚くほど気が晴れた。天気雨のあと、ぱっと青空が広がるみたいに。

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インティメート・ボランティア 12

働き始めて5ヵ月半すぎたとき、グループマネージャーの川崎に呼ばれた。話の内容は、次の3カ月の延長をしてくれるかどうかの確認だった。志穂は、他の仕事のあてもなかったので、よろしくお願いしますと頭を下げた。

仕事場に戻ると、沙紀が隣の2歳年下の男と何やら盛り上がっていた。どうやら今、人気のグラビアモデルにちょっと似ているといわれ、気をよくしてはしゃいでいるようさだった。

志穂に話すときとは、全然違

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