インティメート・ボランティア 15
1週間雨が降り続き、憂鬱な気分で、志穂はミヤケのアパートを訪れた。自分のワンルームのマンションと同じぐらいの広さだが、かなり老朽したアパートで、1階にあるミヤケのドアを叩くとき、ためらうほど気持ちは落ち込んでいた。
仕事と自分の将来についてぼやがかかったように先が見えないでいる。
しかし、2週間ぶりにミヤケの顔を見ると、自分でも驚くほど気が晴れた。天気雨のあと、ぱっと青空が広がるみたいに。
今はミヤケだけが、志穂をふわりとした気持ちにさせてくれる。
ミヤケは、志穂を見ると、掛け値無しに嬉しそうな表情をした。このごろ、少しずつ幼子のように無垢になったと、志穂は感じる。
その日もミヤケと身体を交じ合わせた。湿った蒲団のなかで、ふやふやとした柔らかい肉体に触れながら、志穂自身も妙な充足感を持った。
あらためて、今の自分の存在を確認するには、ミヤケが必要なのだと感じる。星野は、自分にこんな精神的な満足感を与えることはできないだろう。
星野は持っているものが多すぎる。志穂がいてもいなくても不自由はしない。自分は星野にとって、人生に無くてはならないものではない。
先ほどから交わす言葉はなく、ミヤケと志穂は身体で会話している。二人の間で言葉を交わすということは、面倒なことだった。二人のセックスは、スローモーションのように、ゆったり、うつらうつらと進み、2時間はすぐに過ぎてしまう。
いくらミヤケと一緒にいると気分転換になっても、あえてそれ以上の時間、居座ろうとは思わなかった。
限りある時間だから楽しめる。もし、何時間も一緒にいたら、飽きてしまうだろう。二人のつながりはそういうものだった。
ミヤケのアパートを出ると、いつの間にか雨も上がり、外はまだ薄明るかった。満たされた身体は、蛍のように甘やかな光を放つ感じがした。