日本史授業脚本「35.憲法制定過程」
アジア初の憲法となる「大日本帝国憲法」が1889年に公布になります。「漸次立憲政体樹立の詔」で立憲国家になることを約束してから15年かけて作成されたんですね。
世界一長く続く国の伝統と、近代化で目指す新しいビジョンの両方を織り込み、「国民みんなが幸せになるような憲法(日本の国体)」を目標にした結果、作成にかなりの時間を要することになりました。
また、日本人のものづくり精神がここでも発揮されていますね。「とりあえずこんなもんで」といった妥協を一切せず、世に出す段階で素晴らしいものでなければならないって感じが溢れています。
「国会開設の勅諭」の後、伊藤博文が憲法調査のために渡欧。戻ってきて本格的な憲法作りを始めます。集められた”チーム伊藤博文”は「制度取調局」と言って、凄いメンバーで構成されています。
顧問のロエスレル、メンバーの金子堅太郎、井上毅、伊東巳代治(覚え方:金庫、壊してみよう)の経歴を知るとその凄さに気づくと思います。ここがこのテーマ1つ目の感動ポイントです。
さらに、この憲法づくりには、「明治天皇の思い」が込められています。それは「国家の繁栄と国民(大御宝)の幸福」を実現するための憲法でなければ意味がないということです。
これぞ「日本の国体」ですね。憲法作成自体は「制度取調局」のメンバーが行います(その後枢密院での審議もあります)が、その議論の様子を明治天皇は厳しい目で見守っているのです。
口は出さないけれど、きちんと方針に沿って作られているかを確かめている。一つ一つの条文が、ちゃんと「国民の幸福」を実現するためのものになっているかを、国家元首が厳しくチェックしているのです。
そのような目がある中で、「一部の人の利権」や「政治家自身の保身」に有利となる内容を組み込むことは不可能です。主権は天皇にあっても、その天皇が望む内容は「国民の幸せ」。まさに「民本主義」なんですね。
憲法とは国の価値観や方向性を表す顔みたいなもの。その制定過程にこれだけの優秀な人材と、天皇をはじめとする多くの人の思い、妥協せず精査し続ける労力と時間が掛けられていたことを、私たちはぜひ知っておきたい。
「日本国憲法の改正」が言われる現在、改正の是非や、その改正内容よりも先に、改正の議論にかかわる人たちや、主権者である国民の「心の状態(国を良くしたい想い)」が整わないといけないのではないでしょうか。
そんな思いを感じさせてくれる今回のテーマ。しっかりと心が動く内容にしないといけないですね。
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