「僕らはそれに抵抗できない 依存症ビジネスのつくられかた」を読んで
気付いたら、Netflixでドラマの1シーズンを丸々見てしまった。
「この動画を見たら終わりにする」と決めていたのに、つい他の動画も見てしまった。スマホゲームにのめり込んでしまったり、InstagramやTwitterを一日に何度も確認してしまった。
以上のような経験がある方は、少なくないのではないでしょうか。
そして、このような体験をなるべく避けたい、どうにかして改善したいと思われている方もいらっしゃるかもしれません。
本書は、「何らかの悪癖を常習的に行う行為(行動嗜癖)」という観点から、現代の依存症について様々な事例・研究を紹介している本になります。
冒頭に挙げた例も行動嗜癖の一種であり、体験された方なら分かると思いますが、本人が気付かぬうちにのめり込み、抜け出せなくなってしまう点が、怖い点です。
本書では、行動嗜癖の6つの要素(目標・フィードバック・進歩の実感・難易度のエスカレート・クリフハンガー・社会的相互作用)の観点について、詳しく解説がされています。
もちろん、スマホに関する事例も紹介されますが、それ以外の事例も紹介されています。そのため、スマホ依存に困っていない方でも、ハッとさせられる部分があるかもしれません。
また、問題提起だけに終わるのではなく、解決策が提示されている点も、本書の良い点だと思います。第10章から第12章では、「子供とスマホの関係」「行動アーキテクチャ」「ゲーミフィケーション」といった形で、対処法も提示しています。
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さて、本書の題名に「依存症ビジネスのつくられかた」とあるように、ビジネスの観点から見てもヒントが得られるかもしれません。
一例としてですが・・・
・Instagramの例では、顧客の獲得と維持に関する戦略
・Netflixの「自動再生」の例では、顧客の行動を変えるちょっとした工夫
などが、もしかするとビジネスのヒントにつながるかもしれません。
本書の内容は、オンラインでのマーケティングだけでなく、オフラインでも取り入れることが可能だと思います。例えば、スタンプカードを導入する際、顧客に上手く目標を持たせる設計をすることによって、顧客をより効率的に維持できるかもしれません。
また、多くの論文が引用されており、研究の参考にもなるでしょう。
消費者行動・消費者心理系の論文は面白いものが多いのですが、最近はあまり追えていませんでした。いくつか面白そうな研究も見つけたので、改めて色々と論文も追っていきたいなと思っています。