見出し画像

サッカー日本代表が勝てた理由を経営学的に分析してみた

ワールドカップが始まり早2週間。
ワールドカップ開催前に、日本のグループリーグ突破を予想していた人は、どれくらいいるでしょうか?

というのも、日本は強豪国であるドイツ・スペインと同組。
欧州の報道などでは、ドイツ・スペインの二強が突破するという予想が盛んに報道されていました。日本でも、「厳しい」と予想する声が少なからずあったかと思います。

しかし、ふたを開けてみると、初戦ドイツに2-1で勝ち、負けたら敗退の可能性もあったスペイン戦でも、2-1で逆転勝利をしました!

スペイン戦は日本時間の朝4時キックオフだったにもかかわらず、Abemaでの視聴者数は1700万人を突破したそうです。

日本代表が勝てた理由には、監督の采配や選手のパフォーマンス等、様々な観点から分析がされていますが、ここでは学術的な観点から、日本代表が勝てた理由を考察していきたいと思います。

人間が何かを達成する際、目標は非常に大切です。
目標があるからこそ、目標を達成するために努力をしますし、パフォーマンスを改善していこうとします。

こうした目標に関する理論の一つに、「目標設定理論」と呼ばれるものがあり、1960年代頃から、心理学を中心に様々な研究成果が発表されてきました。

例えば、目標とパフォーマンスの関係については、ぼんやりとした目標よりも、より明確な目標設定によって、パフォーマンスが向上すると言われています(※1)。

また、明らかに達成不可能なゴールではなく、ある程度現実可能性のある目標がある際に、人はよりハードワークするといった研究もあります(※2)。

すなわち、どのようなことに対しても、きちんと目標を定めることが成功へ近づくために重要なわけですが、サッカーにおいて、「明確な目標」とはどういったものでしょうか。

サッカー日本代表は「ベスト8」を目標に掲げていますが、それはパフォーマンスを上げるために適切な目標と言えるのでしょうか?

もちろん、こうした目標も選手のパフォーマンスを向上させているとは思いますが、実は「意図しなかった目標」が試合中に形成されていたように思います。

ここで、ドイツ戦とスペイン戦の試合の流れを簡単におさらいしましょう。

まずドイツ戦。
前半33分にギュンドアン選手に先制ゴールを許すも、後半少しずつ日本にも有利な展開が増え、後半75分に堂安選手の同点ゴールが生まれます。
そして後半83分、浅野選手が劇的な逆転ゴールを決め、ついに逆転します!

次にスペイン戦。
前半11分にモラタ選手に先制され、その後もスペインにボールを保持される展開が続きました。
しかし、後半にはボール奪取から48分に堂安選手のミドルシュートが決まり同点。そして、三苫選手のギリギリの折り返しから、田中碧選手が押し込み逆転ゴールが生まれました。

この2つの試合の共通点として、「1点ビハインドの状況が生まれた」という点が挙げられます。

どちらの試合も、勝ち点を得るためには、「1点を取る」という目標が試合中に形成されました。もちろん、試合が始まる前から「点を取る」という目標はあったとおもいますが、先制されたことで「1点」というより明確な目標ができたと言えます。

また、1点という「現実的に追いつける点差」を苦しい時間帯に維持したことも、大きい要因でした。

実は、先行研究においても、試合途中までビハインドだったチームの方が、最終的には勝つ確率が高いということが分かっています。

マーケティング研究で世界的にも非常に有名なJonah Berger先生たちの研究では、バスケットボールの試合を分析して、ハーフタイムに少し負けているチームの方が、最終的には勝つ確率が高いことを明らかにしました(※3)。

バスケとサッカーで競技は異なりますが、ビハインドの状況は選手のパフォーマンスを向上させることはこの研究からも示唆されており、日本代表が勝てた理由の一つとして考えられるかもしれません。

さて、今夜は運命のクロアチア戦。
勝つことを祈りつつ、観戦したいと思います!

※1:例えば、Locke, E. A., Shaw, K. N., Saari, L. M., & Latham, G. P. (1981). Goal setting and task performance: 1969–1980. Psychological bulletin, 90(1), 125.など
※2:Heath, C., Larrick, R. P., & Wu, G. (1999). Goals as reference points. Cognitive psychology, 38(1), 79-109., Berger, J., & Pope, D. (2011). Can losing lead to winning?. Management Science, 57(5), 817-827.など
※3:Berger, J., & Pope, D. (2011). Can losing lead to winning?. Management Science, 57(5), 817-827.



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集