腰痛はビーチで治す、キューバの予防医学
キューバ人に取材のアポを取ったら、待ち合わせ場所にビーチを指定されました。
「ガールフレンドが腰の調子が悪いみたいだから、3人で一緒に海に行きましょう」
その彼女は報道の現場で活躍していて、最近仕事が忙しいとのこと。
首都ハバナの中心部から、タクシーで30分ほど走ると、地元の人に愛されているサンタマリアビーチに到着しました。
五感でくつろげる空間
彼女はさっそく、ビーチチェアを倒してビキニ姿で横たわり、くつろいでいます。
私も同じようにビーチチェアに寝っ転がって、一緒に話をしていたら、腰が痛くなった彼女が、わざわざ海に来た理由がわかる感じがしました。
目の前に広がる、エメラルドグリーンの海と白い砂浜、波打ちぎわで遊ぶ子どもたち。穏やかな波の音。さりげない潮の香り。心地よいそよ風が、ふんわり肌をくすぐります。
開放感とともに、五感でリラックスできるなあと思っていたら、ラム酒やパステレス(グリーンバナナの葉で包んだまきのような食べ物)も売りにきました。「味」も楽しめる!
予防医学が発展した背景
この2人のように、身体の不調をビーチで調整するという発想の背景には、キューバの医療システムがあります。
キューバは医療先進国で、人口当たりの医師数も世界トップレベル、国民は医療を無料で受けられます。一方で、経済状況のひっ迫により、薬が手に入りにくいという厳しい台所事情もあります。
そこでキューバ政府は、病気を未然に防ぐための、予防医学に力を入れてきました。治療のための西洋医学のみならず、プライマリケア(家庭医)の段階でも、自然医療や代替医療、東洋医学などを取り入れ、「総合医療」を進めています。
日本で2017年、キューバから医師を招いて、統合医療のシンポジウムが開かれました。そこでは、キューバの医師たちが、
Mind (マインド、心)
Body (ボディ、身体)
Spirit (スピリット、魂)
Emotions (エモーションズ、感情)
の4つに働きかける医療を心がけていると話していて、なるほどと納得しました。
キューバの医学生は西洋医学のみならず、薬草や花を使った治療、鍼灸、東洋医学、ホメオパシー、オゾン治療など多岐にわたる分野を学ぶので、大変だそうです。
ビーチリゾートでの治療も、実際に医療現場で取り入れていて、カリブの島国キューバならでは、という感じがします。
身体の不調を総合的に解決
私も、肩や背中、腰などのコリがひどくなると、よく整体にかけこみます。原因として、座りっぱなしや運動不足といった生活習慣が思い当たるのですが、整体の先生には、
「何と闘って背中がこんなふうになるんです?」
「怒りをちゃんと誰かにぶつけています?」
「ボクシングで相手を倒して、すっきりしてみたらどうでしょう?」
なんて聞かれてしまいます。きっと、身体の緊張状態から、いろいろ見抜かれているのでしょう。
やはりマインドとスピリット、エモーションにも働きかけなければ、根本的にボディの不調が解決されないのかもしれません。
身体が疲れてきたなと思ったら、海に行く。肩コリや腰の痛みは未然に防ぐ。
キューバのようにほぼ年間を通して海水浴を楽しめるわけではないけれど、電車に揺られて、波の音を聞きにいってみようと思います。
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