斉藤真紀子

ジャーナリスト、バイリンガル・インタビューアー(日英)。日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)記者、朝日新聞出版「AERA」記者を経てフリーランス。キューバ倶楽部編集長。

斉藤真紀子

ジャーナリスト、バイリンガル・インタビューアー(日英)。日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)記者、朝日新聞出版「AERA」記者を経てフリーランス。キューバ倶楽部編集長。

マガジン

  • キューバな生活

    キューバのインスピレーションを生活に取り入れてみたら!?

最近の記事

「亡命ダメ、ゼッタイ」の何が駄目なのか

中日ドラゴンズのキューバ系選手へ贈った、お祝いのケーキに描かれた「亡命ダメ、ゼッタイ」とのメッセージに非難が集まっています。 ドラゴンズ広報部は「シャレのつもりで」と釈明しましたが(「女性自身」の記事より)、悪意がなければいいというものではありません。 「亡命ダメ」を受け取った、キューバの選手がどんな気持ちになるか。想像できないのがイタいところです。 中日側は「他意はなく、これからもずっと一緒に頑張っていこうねという意味」(「女性自身」)と説明しているけれど、それをその

    • 分があるのはウィル・スミス?それともコメディアン?文化の違いで感じたこと

      映画の祭典で起こった平手打ち騒動が、いまだ衝撃を持って受け止められています。 アカデミー賞授賞式は3月27日。俳優ウィル・スミスが舞台でスピーチをしていたコメディアン、クリス・ロックの頬を打ち、席についてからも強い言葉で怒りを表現したのです。 直後に様子を伝えたYouTube動画のコメント欄には、英語でクリス・ロックをたたえる言葉があふれていました。 "props"(おめでとう) "So professional" (真のプロフェッショナルだ) "You became

      • 映画「ウエスト・サイド・ストーリー」で撃沈した理由

        衝撃と悲しみ。緊張と不安。ウクライナをめぐる情勢に、心が重く沈んでゆきます。 そんなときこそ、歌と踊り。映画「ウエスト・サイド・ストーリー」を観に行ったのは、心を軽くしたかったから。 少し前のミュージカル映画「イン・ザ・ハイツ」でも、心が晴れやかに吹き飛ばされるような勢いがありました。 ところが――。 涙がこぼれ落ちるようなロマンチックなデュエットの旋律も、野球のオオタニサーンにどこか似ていて応援したくなる健気なヒーローも、活気と野性味にあふれるニューヨークの街並みも

        • キューバと日本、「まなざし」の意味はどう違う?

          人をじろじろと見るのは失礼。そう思っていた日本人男性が、 「どうしてあなたはちゃんと私のことを見ないの」 と、取引先のキューバ人女性に怒られてしまったそうです。 たしかにキューバに行くと、お互いがお互いをよく見ている! あるときハバナを歩いていたら、私と一緒にいた友人(日本人女性)を、キューバの男性が目で追っていました。地面を指さして、何かを必死に伝えようとしています。 「ビーチサンダルが左右逆だよ」 彼女は「あっ」とあわてて右と左を履き替えていました。 視線と

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        • キューバな生活
          15本

        記事

          キューバの料理好き男性とテレビドラマの影響

          キューバで料理好き男性が増えている!?  首都ハバナの民泊に滞在していたときのこと。キューバの民泊はホームスティ型が多く(民泊についての記事はこちらに)、その日は、家主さんの娘さん(注)がボーイフレンドを連れて遊びにきていました。 (注:家主さんは再婚しているので、ふだん娘さんは別の場所に住んでいる) ふたりとも、医者を志す学生さん。娘さんより5歳年上だというボーイフレンドがひとりキッチンに入って、料理に取りかかります。チキンソテー、サラダ、トマトスープとライスのディナー

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          ショパン、ピアノそしてキューバ

          ショパン国際ピアノ・コンクール(ショパコン)のようすを、動画配信で視聴していた10月。 審査発表を待つあいだ、「コンクールが終わったら何をしたいか」と聞かれ、「ゴーカート」と答えた異色のピアニストがいました。 優勝したカナダのブルース・リウさんです。 ブルースさんの演奏は、カーレーサーのごとく、疾走する感じだけど、聴く人を置いてけぼりにしない。一緒に走ってくれるような自然体の心地よさがある。輝くようなキレのある音の並びも、調和がとれて気品がある。 と、「もっと聴いてい

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          キューバで受けたサルサレッスンが、思いのほか厳しかった

          本場のキューバでサルサを習ってみたい。 ダンス留学をしていた友人がすすめてくれた場所で、マンツーマンレッスンを受けてみました。 首都ハバナの中心部にあるダンス教室、「ラ・カサ・デル・ソン」の個人レッスンは、1時間で15CUC(注)とリーズナブル。 (注:通貨単位と価格は2016年当時、CUCは米ドルに連動、約1600円) テレビ番組の企画で、フィギュアスケートの浅田舞さんが指導を受けた、ホルヘ先生に教わることにしました。 以前、ニューヨークや東京でステップを習ったこと

          キューバで受けたサルサレッスンが、思いのほか厳しかった

          キューバの友人が日本で釘付けになった、店員さんのスマイル

          当たり前になりすぎたのか、私も気が付いていませんでした。 「コンビニの店員さんが、ずっと笑顔でびっくり。頬の筋肉は痛くならないのか。私にはできないな」 2年前、日本を訪れた、キューバの友人たちが、こう話していて驚きました。 アニメを通じ、日本文化が大好き。食べ物も口に合う。「ここに住んでみたい」というほど絶賛しているのに、絶え間ない「スマイル対応」は、うれしいより、いたたまれないとのこと。 この反応は、意外でした。 そういえば、私も学生時代、バイトで笑顔を絶やさず応

          キューバの友人が日本で釘付けになった、店員さんのスマイル

          移動に時間がかかっても、イライラしなかったキューバの友人

          あっ日曜日だ! あわてて外に出た、友人と私。そのとき、ハバナの中心部近くに滞在していました。 いざ、「アフロキューバン」の音楽イベントへ!  タクシーに10分も乗れば、会場の「カジェホン・デ・ハメル」に着き、「ルンバ」とよばれる音楽とダンスのイベントに間に合うはず。 すると、あら偶然! 夕方に会う約束をしていた、キューバ人女性の友人とボーイフレンドが、目の前にいるではありませんか。 キューバ人の友人は、デートがてら、早めに着いて、あたりを歩いていたようです。 「これ

          移動に時間がかかっても、イライラしなかったキューバの友人

          チップとは何ぞや、キューバで生演奏を聴いたらどうする?

          キューバで、流しのミュージシャンにはいくらチップを払う? そんな話がツイッターで話題になり、とある記憶がよみがえりました。 首都ハバナの中心街は、どこかでリズムが鳴り、メロディが漂っています。 店でランチにありついたら、突如始まった、流しのミュージシャンの演奏が見事すぎて、ほおばっていたチキンを飲み込んでしまった。なんていうこともありました。 音楽で身を立てるキューバ人は、クラシックの基礎を積み、鍛錬を重ねた、すご腕が多いのです。 とはいえ、観光客を前に演奏する、流し

          チップとは何ぞや、キューバで生演奏を聴いたらどうする?

          キューバの家具に遊び心を見いだす

          リサイクル(再生)、リユース(再利用)、エコ(環境にやさしい)といえば、「真っ当なことをしている」という、背筋がのびるようなイメージがあります。 ところが、遊び心でいっぱいの、キューバのリユース家具を見て、そんな概念がひっくり返りました。 「あれっ。もしかして自転車? どうなっているの?」 ハバナにあるレストランは、そこかしこにリユースの「しかけ」がありました。見てすぐにわかるものもあれば、不思議なかたちだけれど何だろうと、はてなマークが頭を泳いでしまうことも。 テー

          キューバの家具に遊び心を見いだす

          キューバ「朝のコミュニティ体操」でマインドフルネスを実感する

          「今ここ」にすべて集中する感覚を持つ。 そんな意味合いをもつ、”マインドフルネス”の概念が数年前から、米国シリコンバレーのIT起業家たちに注目され、話題になっています。 米国のような激しい競争社会で勝ち抜くには、強くて「駆け引きに長けていること」が大事なのかと勝手に想像していたのですが、それより「優秀な経営者に共通しているのは、マインドフルネスを持ち合わせていること」と、ある米国人IT起業家が話していました。 経営の文脈でいえば、観察力や客観性をあわせ持ち、バランスが取

          キューバ「朝のコミュニティ体操」でマインドフルネスを実感する

          キューバで考えた「ありがとう」の意味

          キューバのカフェで、日本語を勉強している若者たちと話したあと、4人分のコーヒー代をまとめて支払ったときのこと。なかでも日本語の流ちょうな20代男性はすまなそうな表情で、こう気遣ってくれました。 「まとめて払ってもらって心苦しい。(外国人でなくとも)キューバ人同士でも、そのとき払える人がみんなの分を持つことが多いし、ぼくたちは『ありがとう』とも言わないんです」 コーヒー代はひとり200円もせず、外国人が使う通貨(昨年まで、キューバ住民と、外国人の通貨は別だった)で支払う店だ

          キューバで考えた「ありがとう」の意味

          日常の音やリズムが愉快になる、キューバ街歩き

          「マニー、マニー、マニー」 ピーナッツ(マニー)売りが声をはりあげます。 するとどこからともなく、「マニー」の調子をまねする声。タイミングをずらして輪唱する声。高いトーンでハモろうとする声が加わり、あたりが笑いに包まれました。 首都ハバナの中心部に近い、下町風情あふれるセントロハバナの夕方。学校や仕事を終えた人たちが、外に出て遊んだり、話したりしていたところに、ピーナッツ売りの男性が来て、しばし盛り上がっていました。 清掃しながら腰でリズムキューバの街を歩くと、あちら

          日常の音やリズムが愉快になる、キューバ街歩き

          キューバの野球ファンは議論が好き

          宗教と政治、そして野球は、酒の席でタブーとされる話題といわれます。 口論になりやすいというのがその理由です。 ところ変わって、野球大国キューバには「野球の話をするための場」が、街のあちこちにあり、"エスキーナ・カリエンテ"(ホット・コーナー)と呼ばれています。 首都ハバナの中心部にある、パルケ・セントラル(中央公園)の一角もそのひとつ。よく野球ファンが集まって、人だかりができていました(写真)。 チームのこと、選手のこと、試合のこと。大声で白熱するさまは、ときにけんか

          キューバの野球ファンは議論が好き

          キューバ人に聞いた、ストレス解消の秘訣

          料理に使う油がない! 店に行っても品切れ。朝から晩まで並んで2日目にようやく手に入った。 モノ不足が深刻なキューバでは、こんなことが起こり得ます。 こうした日常はさぞかしストレス源になるだろうなあ。それでなくても、人との関係や仕事で、うまくいかないことだってあるはず。 しかし、キューバの人たちは笑顔が明るい。冗談もよく言うし(おかげで笑いすぎておなかがいたくなったことが何度か)、街かどで、海沿いの通りで、なんとも楽しそうに過ごしている人たちによく出くわします。 不思議

          キューバ人に聞いた、ストレス解消の秘訣