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02.16
仕事を終えて腕時計を見ると20時をまわったところだった。
会社から最寄り駅までどれくらいで行けるだろうか。
だいたい10分ほどだろうな。
そんなことを考えて、パソコンの電源を落とし、通勤リュックを背中に抱えて会社を出る。
「一緒に帰ろう。」
そう言ってくれた上司といつもの帰り道をいつものように帰るけれど、今日は少し違っていてお互い無口だった。
気づけばいつも帰るのはこの時間帯。
やっぱり疲れはしっかりたまってきているんだろうなとちらりと横目でみた上司の横顔を見てそう思う。
おそらく僕も疲れがたまったような顔をしているんだろうか。
と駅までを歩きながらにまた思う。
「今日も寒いね。」
「そうですね。」
そうして最寄り駅に着くとお互いがそのまま電車がやってくるホームへと続く階段をのぼる。
僕は西行き、上司は東行きだから別々の電車になる。
いざホームに着き電車を待っていると、ホームを通り抜ける風が冷たく、冬の寒さを改めて実感する。
ズボンのポケットに手を突っ込んだら、幾分かはあたたかく感じた。
ホームから目の前の大きなマンションを眺めてみていたら、住人のかたが足早に自宅まで駆けていくのが見えた。
あの人にもきっとお疲れ様と言ってくれる人がいるんだろうな。とそんなことを考えていたらホームに電車がやってきた。
電車に乗り込み、席に座る。
スマホを取り出してそういえば、にしなの「春一番」が2月14日のバレンタインにFM802で初オンエアされたんだったっけと思い出す。
すっかり忙しい日々が続いていたからか、以前のように聴けなくなってしまったラジオ。
電車を降りて、足早に改札を抜ける。
そして久しぶりにラジオ、聴いてみようと思い、スマホからradikoを起動してタイムフリーからにしなの"春一番"が初オンエアされた落合健太郎さんの番組を聞きはじめる。
あぁ、とってもいい一曲だった。
どうしてこうも、"春"をイメージした音楽というのは心に届くものがあるんだろうかと"春"をテーマにした曲を聴くたびに思う。
それは僕が四季の中でも"春"が好きだからというのもあるけれど、やっぱり心機一転の"春"をどこか待ち侘びているからなんだろうな。
気づけば「春一番」を繰り返しリピートして聴き込んでしまっていた。
今、ぼくはどうしたいんだろうか。
目の前にはいろいろ山積みで、以前はすっきり目に見えていたものも見えなくなってきているような感覚にすっかり陥ってしまっていることに気づく。
それは僕が忙しさを理由にすっかり後回しにしてしまった、いやしなくなってしまったものの積み重ねであったりもするんだろう。
久しぶりにラジオを聴いて思ったことは、やっぱり自分の大切な時間というものは確かに必要でそこから何か楽になれる日常の気づきというものを得ることができるんじゃないだろうかということだ。
だったら、もうすぐ春がやってくるまでにすっかり蔑ろにしてしまっていたたくさんのことについてもう一度向き合って、やってみるべきだよなと自分に問いかける。
蔑ろにしてしまっているもの、旅行、読書、音楽、ラジオ、カメラ、挙げればキリがない。
ただ、どれからやってみようかと考えはじめた今は少しだけ気分が軽くなって心地いいように感じる。
春がついにやってきたときは、それらの経験を通して今より自分のことを好きになれているんだろうか。
今の自分も好きな自分で変わりはない。
けれど、今の自分には好きになれないところもある。
まぁ、春がついにやってきてくれるまではゆっくり考えていけばいいかーと前向きに考えてみるけれど、すぐもう1人の自分が「あ、また後回しにした!」とぼくの後ろで笑いながら語りかけてくる。
これはこれでいいんだよって。
とりあえず歩き出せたことに意味があるんだよって言ってやると、「そうだね。」って納得してくれた。
だから、僕には春が待ち遠しい。
春までもうすぐ。
春がやってくるのが少しだけ楽しみでならない。