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400字ショートショート

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いつしか積み重なった泡のような。色違いの飴玉のような。ちょうど400文字の小さな世界です。(前書きと改行はカウントしていません)
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記事一覧

400字ショートショート「十三月のこころ」

無人のお店で赤いベレー帽を買いました。見栄え良く少し斜めにかぶって、それから地面に横たわ…

須田真梅
1か月前
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400字ショートショート「スナイパーズ」

二人の殺し屋、九と零の話です。いいコンビに見えて実はビターかも。 向こう岸のビルを見つめ…

須田真梅
1か月前
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400字ショートショート「助けを待ち続ける人々について」

ロングスカートが揺れる。刺繍されているのは原色のブーケ。振り向いた見知らぬ顔に 「こんな…

須田真梅
6か月前
3

400字ショートショート「夏の飴玉は」

ソーダの味がするらしい。何かって夏の飴玉のこと。実を言うとうちにもあるんだ。去年、茹であ…

須田真梅
9か月前
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400字ショートショート「月のフルーツパーラー」

下弦の月は角度によっては器になる。久しぶりの宇宙旅行で降り立った星には、その器を利用した…

須田真梅
9か月前
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400字ショートショート「芽吹き弾く人」

まえがき たらはかに(田原にか)さんが毎週ショートショートの投稿イベントを開催されていま…

須田真梅
10か月前
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400字ショートショート「夕焼け当番」

前書き 「我ら朝を撃つ」のアナザーストーリーです。この話だけ読んでも大丈夫かと思います。 夕焼け当番 眠るエマ。雪の肌に淡い薔薇の唇。彼女が起きるまで、僕はずっと手を握っている。 僕らは十五で出会った。それ以来ずっと一緒にいる。 ここは、夜を拒む町だ。暗闇を遠ざける方法は沈みゆく夕日にロープを引っ掛けて繋いでおくというもの。それでも太陽が隙を見て逃げることもある。その時は家じゅうの明かりを灯して偽物の昼を作るんだ。 「ねえクラウス、明日私が当番なんだ」 「太陽のロー

400字ショートショート「金曜夜のオレンジバウム」

週末に行くカフェがある。きっちりとベストを着込んだ男の人がやっているお店だ。 コーヒーは…

須田真梅
10か月前
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400字ショートショート「オリオンに恋した乙女」

宇宙には網が吊るしてあるのをご存知ですか。細い細い銀の糸で編んだものゆえ、そちらからは見…

須田真梅
10か月前
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400字ショートショート「我ら朝を撃つ」

夜通し起きておく。そうして午前七時頃、太陽が細い光を放ったらすかさず撃つんだ。煉瓦の街へ…

須田真梅
10か月前

400字ショートショート「泡の一生」

前書き ずっと行きたかった喫茶店で念願のゼリーポンチを食べることができました。 写真をあ…

須田真梅
10か月前
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400字ショートショート「十年後のハマナス」

noteさん10周年おめでとうございます! 感謝を込めてショートショートを書きました。 noteは私…

須田真梅
10か月前
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400字ショートショート「天気の目次」

二階には私専用の本棚がある。リスのブックエンドに挟まれた、大好きな恋愛小説を入れておく場…

須田真梅
10か月前
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400字ショートショート「人魚のコレクション」

いつからかハンカチを集めている。人間が海に落としていったもの。 手に入れても使うことはない。濡れても拭うだけだ、私達は人魚なのだから。 そのハンカチを拾ったのは春待ち時だった。まだ冷たい水を吸って吐いて、水面下を遊泳する私。尾に銀の小魚がまとわりついて、くすぐったい。 ぽちゃんと音がして、見上げたら紺色のハンカチが浮かんでいた。持ち主はどんな人だろう。見えたのは船上の後ろ姿だけ。かっこいい気がする。優しそうな気がする。 私、あの人がいい。 彼を一目見たい私は計画を立てた。