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400字ショートショート「夕焼け当番」

前書き

「我ら朝を撃つ」のアナザーストーリーです。この話だけ読んでも大丈夫かと思います。


夕焼け当番



眠るエマ。雪の肌に淡い薔薇の唇。彼女が起きるまで、僕はずっと手を握っている。

僕らは十五で出会った。それ以来ずっと一緒にいる。
ここは、夜を拒む町だ。暗闇を遠ざける方法は沈みゆく夕日にロープを引っ掛けて繋いでおくというもの。それでも太陽が隙を見て逃げることもある。その時は家じゅうの明かりを灯して偽物の昼を作るんだ。

「ねえクラウス、明日私が当番なんだ」
「太陽のロープ掛けか」
「力仕事だから食べなきゃ」
屋台のホットドッグにかぶりつくエマを、僕は微笑ましく眺めていた。

翌日の夕方、日没が起きた。逃げた太陽、真っ暗な町。
「当番が足を滑らせたらしいぞ!」
病院に駆けつけた僕にエマは擦り傷だけだと笑った。
「ちょっと寝ていい?」
「うん」
そっとエマの手を握る。そして昔聞いた噂を思い出した。地球の裏側じゃ、朝が来ないでほしいあまり昇ってきた太陽を撃つらしい。信じられなくて笑ってしまう。
「どうしたの?」
「何でもないよ」