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東チベットエリアを旅する

チベット・インド旅行記
#11 ルーフォー(炉霍)


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【チベット文化圏】一般的に「チベット」という言葉を使う場合、中国国内にある「チベット自治区」の事を指して言う事が多いが。実際にチベット族と呼ばれる人たちが暮らす地域や、チベット仏教を信仰する地域など、いわゆる「チベット文化圏」はかなり広く、西はインドのラダック地方から南はネパールの山岳地方。ブータン。東は中国四川省と、広範囲に渡る。


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私がこれから向かうのは、四川省山奥の「東チベットエリア」、ヒマラヤ山脈を頂くチベット自治区ほどの標高は無いが、それでも3000mクラスの山々がそびえる峻険(しゅんけん)な土地である。



早朝、荷物をまとめ宿を出た私は、ボロボロの乗合バスに乗り込み、成都の街を出発した。
雄大な山の懐に抱かれ、バスはトロトロと走っていく。


次第に深くなる緑、車窓から吹き込む8月の風が心地よい。
遠く山の向こうまで、くねくねと曲がりくねった道がいろは坂のように続いている。
カーブを曲がる度にガタンと車内が揺れる。

少しずつ、少しずつ、バスは標高を上げていく。


バスの歩みは亀のように遅い。
1日中走り続けても進んでいるのはせいぜい100〜130㎞程度。


途中、エンストやパンクは日常茶飯事で、バスがガタンと止まる度に、乗客は外に出て昼寝をしたり、タバコを燻らせたり、思い思いに過ごしたりしている。

ルーフォー4

のどかな旅である。


日が暮れる頃、ようやくバスは村に辿り着く。
大抵、村には1つしか宿がないので、そこで宿をとり食事を済まし。(さすがに宿泊拒否はされない)翌朝、再びバスに乗り、また山を登っていくのである。


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山から山へ、バスからバスへと乗り継ぐこと数日。
あたりの景色は変わった。

背の高い木々は姿を消し、ゴツゴツとした岩肌や、草原が姿を表す。
あまりにも高い標高に木々が育たなくなったのだ。

気がつけば人里は遠く離れ、雲の海の上へ。
厚く垂れこめた雲海からは、山の尾根が島々のように突き出している。


車窓から目を凝らす。
対岸の尾根の向こうに、チベット遊牧民が家畜のヤクを放牧する姿が見えた。


ルーフォー5


今はどうか知らないが、半農半遊牧で暮らすチベット族は、一妻多夫制で暮らす家族も多い。
片方の夫が遊牧に出ている間、残った方の夫婦で家を守るのだそうだ。 

この地上で、自分と違う暮らしを送る人々がいる。

車窓から遠ざかる遊牧民の日常に想いを馳せた。


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夕方、バスはルーフォーの街に着いた。

ルーフォーの街は今までの漢民族風の街並みと異なり、チベット様式の建物が目立つ。

ようやくやってきたチベット世界に心躍った。


道ゆく女性はトルコ石や、紅いチベット石などを長い髪に結い付け、黒地に刺繍の入った服を身に纏っている。
旅行者の私をみてニヤニヤしているので「タシデレ〜(チベット語でこんにちは)」というと、笑いながら逃げていった。


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朱色の袈裟を着たチベット僧侶も道を歩いている。

 
食堂に入ると、小麦粉を練ってねんどのようになった食べ物と、ミルクティーのような飲み物が出てきた。
ヤクの乳で作るチベットの伝統食「ツァンパ」と「バター茶」だ。


恐る恐る口につけてみる。
もわっとした野生の臭みと、しょっぱい塩気が口の中いっぱいに広がる。
雨の日に室内干しした洗濯物の匂い、と言えば良いだろうか。
正直、食べ易いとは言い難い。

ルーフォー9

バター茶も鼻をつまんで一気に飲み干した。



宿は一泊10元(150円)、何も無い狭い部屋に、ボロボロのマットレスと毛布が1枚置かれてあるだけ。

トイレも野外に据え付け。
崖の上に板が突き出ていてそこで用を足すと、崖の下で待ち構えている豚たちが処理してくれる仕組みだ。
 

ルーフォー8

宿に戻っても特にする事もない。
寝袋にくるまってCDプレーヤーから流れる音楽を聴きながら、こうやって日記を記し、早々に寝る。


そうしてまた夜が明ける頃、荷物をまとめてバスに乗り込む。




一歩、また一歩と、山の更に奥深くへ。


旅はその深度を増していく。



ルーフォー1

⇨ ラルンガル・ゴンパ編へ続く



【チベット・インド旅行記】#10,成都編はこちら!


【チベット・インド旅行記】#12,ラルンガルゴンパ編はこちら!



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