ゾーンに入るためのメンタルスキル byうさみ
Madoyaca代表の宇佐美円香です。
私はスポーツメンタルトレーニングを事業の1つにしており、ソフトテニス競技を中心に全国の小学生から大人まで指導させていただいています。
また社会人大学院生として、スポーツメンタルトレーニングの専門家になるためにスポーツ心理学を研究中でもあります。
こちらの記事は前回の記事に引き続き、
こちらの図の中にもある「心理的コンディショニング」の中でも、ゾーンに導くための心理的スキルについて
極力簡単に説明していきます。
ゾーンに入るためのメンタルスキルとは
スポーツの試合や練習場面だけでなく、日常生活上においてもメンタルをいい状態に保つためのコンディショニングスキルです。
日頃の講習会でもこの話はさせていただくのですが、基本的にスポーツだけでなく日常生活でもトレーニングするのが大切です。日頃の思考や生活の癖が人の心理には大きく関わっているので、日常でトレーニングすることを前提にいつも指導しています。
自己分析の記事で触れている逆U字仮説をベースに
過緊張状態である「あがり」の状態からゾーンへ調整するスキルと、緊張不足状態である「さがり」の状態からゾーンへ調整するスキルをそれぞれ紹介していきます。
あがりをさげる方法
あがりをさげることを「リラクセーション」といいます。
リラクセーションの方法はたくさんありますが、簡単なものを5つ紹介します。
①深呼吸
リラックスをするための基本的なスキルです。
様々な方法がありますが、
・腹式呼吸で
・鼻から吸って口から吐くのを1:3で
・吐く時はゆっくり補足長く、身体を緩めながらする
と普段指導しています。
意外とできない選手が多いので、その場合は練習が必要です。
1回でも効果が感じられるものなので、身につけておくスキルのひとつです。
②漸進的筋弛緩法
漢字で書くと難しそうに見えるスキルですが、ジェイコブソンという人がつくった心身のリラクセーションスキルです。
意識的にどこかの筋に力を入れて緊張させて、パッと一気に力を抜くことで、筋が緩んだ感じを体感して、リラックス感を得るという方法です。
ポイントとしては、
・寝転がるか、椅子に座って行う
・筋を緊張させる時は、筋肉に10秒くらい、全力を10とした時に7~8くらいの力を入れ、緊張を感じるように意識を向ける
・緊張を感じたら、パッと、ストンと、力を抜いて、筋の緊張が緩むのを感じながら20秒くらいリラックスする
と指導しています。
筋が緩んでくると、緩んだところが暖かくなるような感じや、血流が良くなった感じがして、心身ともにゆるみます。
肩や顔などで行う選手が多いです。(手や脚でもできます)
③暗示呼吸
基本的には①の深呼吸を行うのですが、こちらは年齢層が低い選手に対して教えると、面白がってしまってなかなか真剣にできないので、信じて行わせる指導が必要です。
腹式呼吸にプラス暗示、マイナス暗示などの暗示語を加えて行うのが暗示呼吸です。
【吸うとき】
・ゆっくり大きく鼻から息を吸い込む
・大きいものを吸い込む(イメージ)
・太陽のエネルギーを吸い込む(イメージ)
・大きな力、光を吸い込む(イメージ)
・勇気、自信、やる気を吸い込む(イメージ)
・上記の中のイメージを選んで、イメージしながら、心で言いながら吸う
【吐くとき】
・ゆっくりと細く長く吐く
・不安、恐れ、迷い、緊張、ストレスなどをゆっくり息と一緒に全部吐いてしまう(イメージ)
・嫌なものが身体の外に出ていく(イメージ)
・上記のイメージをしながら、心で言いながら、息を吐く
深呼吸よりも効果がありますが、イメージをする分難度が上がります。
④暗示放尿
これも原則は③と同じですが、イメージと暗示語を添えながら、放尿をするというものです。
「嫌なものが身体の外に出ていき、スッキリする」
というようなイメージと暗示が効きます。
⑤ポジティブフェイス
基本的にはスマイル(笑顔)がいいとされていますが、スポーツの場面では俗にいう「キリッとした顔」などでもいいと思います。
笑顔をしている時が最高の免疫状態、メンタル状態になると言われているので、意識的に笑顔を作ることで心を変えることができます。
さがりをあげる方法
さがりをあげることを「サイキングアップ」といいます。
リラックスの反対の意味で、興奮や緊張を高めるのがサイキングアップです。簡単な方法を5つご紹介します。
①大きな声を出す
シンプルですが、大きな声を出すとあがります。これは経験がある選手も多いはずです。
コロナ禍で声を出さないことに慣れてしまった世代が、昔ほど声を出さなくなってしまったことに悩む指導者が最近増えています。が、大きな声を出すことは徹底していきたいですね。
②気持ちが高まる音楽を聴く・香りを嗅ぐ
五感へのアプローチはとても有効です。
気分が高まるアップテンポな音楽を聴いたり、気分が高まる香りを嗅いだり(最近はスポーツアロマなどもあります)、お世話になっている人の写真を眺めたり、気分を高めることをします。
③身体を叩く
格闘技などの興奮状態を高めたい競技では、入場時に選手が身体を叩きながら入場してきますよね。
身体に物理的に刺激を入れることで、興奮状態を高めることができます。身体をある程度温めてから行うことがおすすめです。
④セルフトーク
自分の心の中で話している言葉や自己暗示のことをセルフトークと言います。ついネガティブになってしまいがちですが、自分を奮い立たせるような言葉を自分自身にします。
おすすめは松岡修造が心の中に住んでいると思って、自分の心の中から励ましてもらうことです。(結構選手たちには分かりやすくて人気です)
Youtubeを見てイメージをつけておきましょう。
⑤動作・姿勢を変える
こちらもシンプルですが、
・目線を上げる
・背筋を伸ばす
・胸をはる
・肩を開く
などを行うと、積極的な気持ちが強くなります。(逆をやるとさがります)
注意点
ここでは「あがりをさげる」「さがりをあげる」方法として書きましたが、ここに書いたスキルの使い方は絶対的ではありません。
基本的には指導者と選手の話し合いによって、いろんな意味づけが可能ですし、メンタルトレーナーが指導する際も、チームや選手の競技レベルや特性に合わせて練習や試合でどのように使うかを決めて指導していくのが一般的です。
むやみに取り入れてもなかなか継続できないため、こういったスキルを取り入れることを検討する際は、専門家に指導をしてもらうか、指導者が専門家に相談をしてから選手と取り入れてみるということが必要です。
次回もお楽しみに!
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