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1 一宮中学の裏手には山があり、戦後に植林されたと思われる杉林には街をまかなう送電線の鉄…
以下、上記、シェアード・ワールド企画に応募した作品になります。 ―――――――――――…
弟は月光雨にうたれて、死んだ。 月光雨の年間死者数が、だいたい百人くらいだと知ったの…
ジェーン・ドゥが死んだ。 新しいマネージャーに変わって以来、このモーテルで人が死ぬの…
本部から基地の放棄を下命された時、管制室とは名ばかりの掘立小屋に、私は一人だった。相棒…
地面が揺れていた。鈍い脈動が後頭部で膨らみ、揺れに合わせて、ひどく痛んだ。眠りの膜は薄…
深い青紫の封筒には、こう書かれていた。 「月灯りの夜へようこそ。日が暮れて、三度目の時計の鐘が鳴る時に、あなたをお迎えに上がります」 見れば、銀の箔が押された封筒は、こうこうと月が照らす群青色の空の色をしていた。上質な紙とインクが、涼し気な初夏の夜風のように匂った。 文章は、二枚目の紙に続く。 「身体を清め、部屋の灯りを消し(注釈、常夜灯を点けておいてもかまいません)、そして、まぶたを軽く閉じてください。そのまま、ゆっくりと深呼吸をして、秒針の音を数えます。あるいは、窓
1、そらの場合 「わたしがいなくなったら、バイクはそらが使ってよ」 ひなたと最後から二…
1 人喰い狗が手負いを受けた、との報が知れたのは昨日のことだった。 狗追いに参加した…
先輩のアパートは、私の下宿と道を一つはさんだ向こう側にあった。道といっても、車がすれ違…
非公式自殺クラブを知ったのは、つい先日のことだった。 中へ入ると、放課後の職員室は、…
1 春の午後の光を受け、虹色に輝く硝子の切っ先の向こうに、折れたクレパスのようなビルが…
1 「へたくそ」 声の方へ、千代が振り返った時、そこには誰もいなかった。 「どいて」 …
かなたの日焼けした指と、私のヘビのように白い指が絡まり、描き出すしまもよう。 南から吹く風は生暖かく、防波堤に寝転ぶ私たちの身体をゆるく包み込んでは、べたべたと潮を含ませ、消えていく。午後の気怠い光に、海の水は油を流したみたいに穏やかだった。風は、ちょっとの波も立たない海に愛想をつかしたのか、すっかり止んでしまい、降り注ぐ太陽の光に焼かれる私たち。 お尻の下では、じゅぅと音を立てて、水が蒸発し、鉄板みたいに熱されたコンクリートが作り出す、人間のホットケーキ。 バターみ