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『超図説 目からウロコのユング心理学入門』

ユングの入門書や彼に関する本は数多くあるが、これだけ欲張った1冊も珍しいのではないか。
本書の前半では、ユングの生涯が年代順に紹介され、後半では「心のタイプ論」から、宗教や錬金術とユング心理学の関係までが取り上げられている。
シュールなイラスト入りで広範な知識が提示されており、初心者が全体像をつかむのに最適だ。
また、占いや神秘主義などさまざまな話題に広がっていくので、テンポが速く、読者を飽きさせない工夫もしてある。

本書によれば、少年のころからユングは超自然の現象をよく知っていた、という。降霊会に顔をだし、予知夢を見ることもあり、晩年は中国の易経と錬金術の研究に没頭した。
彼は「科学者ユング」と「占い師ユング」のふたつの顔を持っていて、それらの間を橋渡しするために「元型」「集合的無意識」「象徴」という独特の概念で人間(自分)の心を説明しようとした。
いずれにせよ、彼の心理学には神秘的な現象への情熱が隠されており、それがよくフロイトと比べられて、ユングが「女性的」だと言われる由縁だという。

著者はロンドン占星術師組合の理事を務めている。というと、本書がかたよった観点から書かれているように聞こえるが、そんなことはない。
「精神分析の確かな後継者」と目されつつ、ユングが師のフロイトと仲たがいをし、理論的にも決別していった背景には、オカルト的な興味の有無が大きく影響していた。
ニューエイジの思想などにも影響を与え、単なるサイエンスに終わらなかった「ユング心理学」の世界。全ページイラスト入りの読みやすい本書を携えて、その入口に立ってみてはいかがだろうか。


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