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ワクチン接種状況比較!購買履歴データで消費者行動と意識を探る

新型コロナウイルス変異株・オミクロン株により感染拡大が再び始まり、2022年1月からまん延防止等重点措置が実施されています(2022年3月4日時点)。3回目のワクチン接種が徐々に開始されていますが、繰り返される外出制限などで先の見えない日々が続いています。この見通しの立たないコロナ禍で、消費者の購買行動はどう変化したのでしょうか。この記事では、マクロミルの消費者購買履歴データ「QPR™」を使って、ワクチン接種状況を軸に新型コロナウイルスの感染拡大時の購買傾向をひも解いていきます。


1.年代別のワクチン接種率状況、10~20代は出遅れ

初めに、厚生労働省のデータから新型コロナウイルスの感染状況およびワクチンの接種状況について見ていきます。既にメディアなどでも報道されていますが、日本のワクチン接種は急速に進んでおり、2回以上の接種完了者は7割に達しています(2021年11月時点)。
年代別のワクチン接種率を見ると、60歳以上のシニアは8割以上の方が2回の接種を完了、10代や20代などの若年層は1回以上の接種者が6割ほどの状況です。

引用元:厚生労働省 オープンデータ 新規陽性者数推移(日別)、
ワクチン接種状況オープンデータ 政府CIOポータル
引用元:年齢階級別接種実績-首相官邸

2.接種にポジティブな人はドラッグストアで購買?ワクチン接種状況別の購買変化とは?

<ワクチン接種状態別の購買傾向>
次は、QPR™を使った購買動向の変化について見ていきます。以下のグラフは購買動向の前年比較のデータです。赤いラインは前年比97.3%のTOTAL(市場全体)を指標としたものです。2回接種、1回接種、未接種(接種意向あり)、未接種(接種意向無し)の4つのセグメントに分けて前年比の購買傾向を見ると、4つのセグメントは全て赤いラインを下回る状態となりますが、未接種の人と接種完了している人の前年比を比べると、接種完了している人は前年割れが小さい傾向にあります。ある程度コロナのワクチン接種が購買動向に与える影響があるということがわかります。

<ワクチン接種時期別の購買傾向>
接種前後の月次変化を見ていくと、特徴として、接種後に大きく消費が増えるといったことはなく、2回目のワクチン接種の月にわずかに消費が増える様子がうかがえました。ワクチン接種時期の月次消費額を前年比較すると、下の図の黄色の ハイライト箇所は別のデータでみるとワクチン接種月に解熱剤の購入や、合わせて食品、日用品の購入がわずかに上がったため、接種月の付近で前年比がトータルよりも増加している傾向がうかがえます。特に7月は早期ワクチン接種の高齢者が落ち着いたタイミングと夏休みのタイミングが重なり他の月よりも前年比を上回る傾向です。
※本データの各セグメント(ワクチン接種状況)は、購買モニタの方々のアンケート回答に基づくデータより再現しております。資料内のTOTALは、市場全体の動向を捉えるためアンケート非回答者も含むQPR™モニタ全体の数字を指します。各セグメントの足し上げとは異なるため、ご注意ください。

<購買チャネル>
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ECサイトの4つの購買チャネル別の動向を前年比で見ていくと、「接種完了した人」と「接種意向ありの人」はドラッグストアでの購買金額が高くなっています。一方、「未接種×接種意向なしの人」は、ECサイトでの利用が目立つという結果になりました。やはりワクチンを接種することで外出のハードルは下がり、ワクチンを接種していない人は、少し外出を控えた結果、ECサイトの利用が目立つといった傾向になっていることが推測されます。

<全業態の購買カテゴリ>
全業態の食品と日用品のカテゴリ別の動向を昨年、今年、前年比という形でTOP10を見ていきます。「接種完了した人」は、解熱鎮痛薬が1位になっている点が特徴です。「未接種×接種意向あり」の人も解熱鎮痛薬が上位にランクインしており、接種後の副反応の強さなどがメディアでかなり取り上げられていたため、事前に対策として解熱剤を買っている人が多く現れているのではないかと考えられます。その他のカテゴリに関してはビールや飲料、アイスなど日常的に飲食するカテゴリが上位にきているという結果で、特筆すべき差はありませんでした。

<ドラッグストアの購買カテゴリ>
ドラッグストアにおける、食品と日用品の購買カテゴリ別の動向TOP10を前年比較で見ていきます。下の図の「接種完了した人」は前年比120%近くを超えている食品カテゴリが多くあり、「未接種×接種意向なしの人」と比べると食品の購買の増加が顕著に表れています。普段ドラッグストアで食品を買う人は多くいると思いますが、メインは日用品のカテゴリを買う場所になっていると思います。ただ、「接種完了した人」を見ると、アイスやサラダ、パン、冷凍野菜などの食品の購買が増加している点が特徴的です。つまり、ドラッグストアで解熱剤を買いに来る人はワクチン接種者が多かったため、食品を合わせて買っているのではないかと推測されます。

<解熱剤の購入状況>
ワクチン接種の時期と解熱剤を購入した時期で、解熱剤の購入状況を見ていきます。下図の左側「1回目のワクチン接種時期」とそのタイミングにおける解熱剤の購入状況を見ると、接種時期に解熱剤を購入している山ができているのが見て取れます。一方で、下図の右側「2回目のワクチン接種時期」を見ると波形は1回目と似ていますが、2021年9月以降に2回目の接種をする人(水色線)は8月にピークが来ていることから、2回目の接種をする前に解熱剤を買っておくという方や、1回目の接種状況を見て事前に対策をしておこうという方が多く出てきたと推測できます。今後も3回目のワクチン接種が進むにつれて解熱剤の購入が接種時に大幅に伸びていくことはあまりなく、事前に対策されていくのではないかと思います。

3.74.2%が変化なく自粛。ワクチン接種状況別の意識変化とは?

<ワクチン接種が進み「自粛」から「アクティブ」に変化したのか>
新型コロナワクチンの接種が進み、生活意識には変化が表れているのかどうか、「自粛」「アクティブ」という視点で見ていきます。ワクチンを接種した人のうち、接種後も気持ちに変化がない層が58.7%、ワクチンは未接種で継続的に「自粛」ムードの層が15.5%でした。合計すると、74.2%が生活自粛を継続していることがわかります。2021年9月の調査結果であるため、デルタ株の新規感染者が減少する前の時期にはなりますが、ワクチンの接種状況が進んでも自粛する気持ちに変化がない人の割合が大半を占めていました。

<接種時期別の生活や気持ちの変化>
接種時期別の生活や気持ちの変化を見ていくと、接種時期によって意識に差があるということがわかりました。2021年9月以降を見ると86.4%が「変化なし」と回答していて、接種時期が遅いほど気持ちの変化がない層が多くなるという傾向がありました。おそらくワクチン接種が早く終わった人は、世の中に比べて早めに安定剤を手に入れたというアクティブな気持ちになりやすかったのではないかと推測されます。また、2回目接種完了した人の24.6%は、ショッピングや外出機会が増え気持ちが明るくなりました。
一方で、接種時期が遅かった人はワクチンを接種したいのになかなか打てないという状況が続いた人と思われ、ブレイクスルー感染なども考慮し、ワクチンを打ってもすぐにアクティブな気持ちにはつながらなかったものと推測されます。

<性年代別の生活や気持ちの変化>
性年代別の表を見ていくと、若年層ほど自粛意識が希薄化していることが顕著に出ています。特に男性10代では全世代で最も高く22.7%、女性10代では16.5%が「アクティブ」(ワクチン未接種で外出している・特に自粛等はしない)と回答しています。
一方で、男女60代はともに「気持ちに変化がない」と回答している人が7割ほどいることから、特にシニアの世代に関してはワクチンを打ったことですぐにアクティブな気持ちになる方は少ないことがわかります。

<世帯年収別の生活や気持ちの変化>
世帯年収別の表を見ていくと、年収の高い層ほどワクチン接種が進んでいて、前向きな気持ちであるという変化が特徴的です。世帯年収1,500~2,000万円未満、2,000万円以上の層は、ともに19.0%と全体より「アクティブ」が高い傾向にありました。年収が高いからワクチンが打てるということは無いですが、金銭的な余裕がある方ほどワクチンを打とうという気持ちや前向きな気持ちへの切り替えができていると推測されます。

<意識×購買カテゴリ別の気持ちの変化>
続いて、今の接種状況および気持ちの変化に対して、購買行動を掛け合わせたTOP10を見ていきます。こちらは前年比の高い順でまとめています。「接種×外出増加」の層を見るとブロー・スタイリング剤の購入が増加しています。髪型をセットするなど外出に伴う購買が増えているとことが特徴です。また、外出頻度が高い「未接種×自粛意識が薄い」層も、ブロー・スタイリング剤が前年比でもっとも高くなっています。
一方、「未接種×自粛意識がある」層にも、ブロー・スタイリング剤が7位に入っており、自粛している意識はありつつもどこかで外出したい気持ちがありそうだと推測できます。

4.まとめ

本記事ではワクチン接種状況および消費者購買履歴データ「QPR™」を掛け合わせた消費行動の変化を見ていきました。今回のデータは2021年9月末時点のものですが、ワクチン接種による消費変化は小さかったと言えます。現在はオミクロン株が再び感染拡大をしている最中であるため、今後も変化に注目することが必要です。今回はカテゴリごとでのブレイクダウンなどは行っていませんが、QPR™はワクチン接種状況によって「自社のカテゴリがどのように変化していくのか」「購買チャネルの利用状況がどのように変わっていくのか」など今後の消費行動の予測にご活用いただけます。

<購買履歴データで見た“ワクチン接種況別”の特徴まとめ>

  • ワクチン接種/未接種では、未接種者の方が前年より消費鈍化の傾向

  • あくまで2021年9月末時点のデータではあるが、ワクチン接種前後では劇的な変化はない

  • ワクチン接種月に購買がわずかに増加する傾向

  • ドラッグストアでは、解熱剤と食品の購入が前年よりも増加

  • ワクチン接種月に解熱剤の購入が目立つ中、2021年9月以降にワクチン接種した人はすでに2021年8月に解熱剤の購入の山があり、需要を先食いしている様子

  • 世帯年収の高い層ほど、ワクチン接種は進み前向きな気持ちの変化が見える

■分析仕様
<QPR™/消費者購買履歴データ>
データソース :QPR™(パネルスキャン型購買履歴データ)
分析対象者 :15~60代(一部70代含む)の人口構成比に合わせた男女個人
対象カテゴリー :JICFS食品+日用品
集計期間 :2004-2009(2020年4月1日~2020年9月30日)、2104-2109(2021年4月1日~2021年9月30日)
エリア :全国(沖縄除く)
業態 :全業態
金額 :税抜き
有効モニタ数 :(全体)2020年 28,788 / 2021年 28,809
有効モニタ数 :(2回接種完了)2020年 12,013 / 2021年 13,707
有効モニタ数 :(1回接種完了)2020年 3,457 / 2021年 4,060
有効モニタ数 :(未接種✕接種意向あり)2020年 3,149 / 2021年 3,838
有効モニタ数 :(未接種✕接種意向なし)2020年 2,181 / 2021年 2,606

・・・【付録】皆様のご参考情報としてご活用ください・・・

消費者購買履歴データ「QPR™」
全国3万人のモニタにバーコードリーダーを貸与し、日々の購買履歴データを収集・分析し、商品購入実態をリサーチ。アンケートの実施により、なぜ購入したのかという意識も掛け合わせて聴取することができます。

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