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連載中|A Ghost of Flare.

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安いという理由だけで事故物件への入居を決めた霊感ゼロの青年・斎篁(とき たかむら)は、奇跡の見逃し率で平和な日々を送っていた。篁の入居を機に、かつてこの家で首吊り自殺を図った男の…
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小説|A Ghost of Flare.  #3

小説|A Ghost of Flare. #3

   * * *

 首に浮かんだ不吉な痣が漸く薄れてきた。
 篁はいたって元気だ。
 心配されていた怪我や病気もなく、平常通り様々な怪奇現象を見逃しながら生活していた。
 篁は自身の両掌を眺めながら考えていた。
 なぜ自分はこんなにも霊感がないのか。
 霊的なものと無縁なこの手相が悪いのではないか。
 今の時代はとても便利だ。
 スマホさえあれば何でも調べられる。
 自分はどうもスピリチュアルな

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小説|A Ghost of Flare.  #2

小説|A Ghost of Flare. #2

   * * *

『斎篁先輩、今日は出ました?👻』
『おん👻』
 毎晩恒例となった後輩からのラインに写真付きでいい報告(?)ができたことで、篁はすっかり満足していた。
『え、ちょ、やば』
『呪われてる』
『お祓いしよ』
 鳴り止まない通知音を無視しながら、篁は揚げたての唐揚げを頬張っている。
 やはり唐揚げは揚げたてが一番美味い。
(やっぱりこん家、誰かはおるがじゃな)
 怪奇現象を奇跡的な

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小説|A Ghost of Flare.  #1

小説|A Ghost of Flare. #1

 不動産屋に案内を嫌がられ、内見なしで契約したこの部屋は、東京都O駅から徒歩五分の距離に位置する1LDKの賃貸物件だ。
 広いリビング、南向きの窓、セパレートタイプのバス・トイレ・洗面台。同条件での家賃相場は十五万円ほどだが、斎篁はこの物件を八万二千円という安さで借りている。
 理由はもちろん──。
『斎篁先輩、もう出ました?👻』
 事故物件だからである。
 自殺、他殺、不審死、失踪、心理的瑕疵

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