読書感想文コンクールで入賞できる書き方を教えてください(by高校生)
高校生「自分でも賞取れますか?」
わたし「取れるよ。ただ、条件があって」
高校生「やります!」
わたし「うん。時間と力を確保できるかな」
こんにちは(*^-^*) 作文教室のまちか先生です。
夏休みには、公共施設やカルチャースクールでの読書感想文一日講座のほかに、個人レッスンで読書感想文に取り組むケースもあります。ここ数年は多忙すぎてなかなか人数をお受けできないのですが、今年も数人の中高生と一緒に読書感想文を書いています。
「読書感想文コンクールで賞を取りたい!」
こういう個別のゴールがあるケースは、マンツーマンでのレッスンがおすすめ♡ とてもじゃないけれど、1日講座の2時間で到達できるものではないからです。
今の自分の全力でぶつかる経験、応援します!
①コンクールの趣旨を理解
何をいまさらと思うなかれ。
何を求められているのか、何が評価に値するのかを確認しましょう。コンクール名で検索して公式サイトをチェック。必ず開催趣旨が書かれてあるのでしっかり読んでね。
また、指導するわたしの頭の中にはこれまでの歴代の受賞作がある(作文に目を通している)のですが、この時点で子ども自身はそれらを読む必要はないと思っています。どういう読書感想文が評価されるかを知るのも大切ですが、わたしは個人的におすすめしていません。「ウケ狙い」に走ってしまうおそれがあるので。
②まずいつものように書いてみる
普段通りの書き方で、一度通しで書いてみましょう。一気に仕上げるつもりじゃなくてOKです。むしろこれは「たたき台」として使うためのものなの。
わたしがおすすめしている「読書感想文の楽な書き方」は、こちら↓の記事で紹介しています。書き方に困ったときは参考にしてみてね。
わたしがおすすめしている書き方の、何がポイントかって「書くネタ」ごとに紙(A4サイズでスペースに余裕あり)を分けるところです。
さっき「たたき台」といったけれど、この書き方↑なら、作文用紙を埋めなくて、「書くネタ」を紙に書き出すだけでもじゅうぶん「たたき台」になります。
書くネタごとに紙を分けるってどういうこと…?という人は、この教材プリント↓を使うとイメージしやすいと思います♡
③弱い部分を洗い出す
さあ、書けたものをチェックしていきましょう。さらっと書き出したものでは、完成度はまだまだなのです。そのためのたたき台だったというわけですね。
宿題として学校に提出する読書感想文なら、”思ったまま”書いたものでいいんです。まちか先生は「気負わず書けてちゃんと形になってる」をコンセプトに読書感想文講座をしているくらいなので(^^) 思ったまま=等身大の言葉って、その時の自分にしか書けないものだから、まちか先生はそのきらめきがとても好きなのです。
でも、君が「読書感想文コンクールで賞を取りたい」と思うのなら、”思ったまま”に手を入れていかなくちゃいけません。別の言い方とするなら「ブラッシュアップ」とかかな。自分で決めたから頑張る。かっこいいと思う。一緒に頑張ろーね!
じゅうぶん素敵に思える読書感想文でも、賞を取りたいのなら、「これでいいや」というラインを自分で取っ払わないといけないの。まちか先生がダメだと言うから直す、こういう作文がウケる、そういう気持ちは全部捨ててください。
読んだ本を利用して、自分の成長物語を書く。
それが、コンクールで賞を取れる読書感想文なのです。
④動機を練る
やらされ感ではなく、自分から求めるとき、人は大きな力が出ます。
まちか先生の普段の読書感想文講座では、感想文のはじめの方に「本を読んだきっかけ」を書こうねって指導しています。課題図書だから、なんとなく気になって、お気に入りの本だから、…どんなきっかけもOKです。って。
けれど、賞を取りたいなら、別の動機が必要です。ここでいう”動機”は「この本で感想文を書こうと思った理由」です。ちょっとしたニュアンスの違いなんですが、わかりますか?
この本を読んだのがたまたまであっても、元から気になる分野だったからにしても、それは読むまでのお話。僕が/私が本気でこの本(テーマ)に向き合いたいと思ったのはなぜか。それが感想文を書く理由です。
あるかな?
考えてみよう!
⑤本の概要とともに作品の背景に触れる
読書感想文にあらすじを書くか書かないか。あらすじ問題。まちか先生はそう呼んでいます。書かない方がいいというアドバイスをする人も多いようですが、まちか先生はあらすじをぎゅっとまとめて書いておいた方がその後の感想を書きやすくなるんじゃないかなって思っている派です。
コンクールで賞を取れる読書感想文は、あらすじをどうしているか?については、「本のあらすじではなく本の概要を書きましょう」とお伝えしています。
↑この記事、裏技といいつつ、けっこう大事なポイントを書いているので、よかったら一読してみてね!
書店に並んでいる本は、多くの場合「出版企画」といって「何の目的で誰に届けるのか」といった意図があって制作されます。君が読んだこの本について、どうして本になったんだろう?何を伝えたいんだろう?どう評価されているんだろう?そういう視点で考えてみるのが大事なんです。
評価される読書感想文に必要とされるのは、あらすじより本の概要です。あらすじの代わりに、作文の冒頭(はじめ・なか・おわりでいう「はじめ」)で触れておくと良いと思います。
⑥言及する箇所を2~3個ピックアップ
まちか先生、普段の読書感想文講座なら、「好きな場面」「お気に入りのセリフ」「自分の経験」を中心に据えて「このなかのどれかひとつでも書けたら、それってもうちゃんとした感想文だよ♡」と教えています。
うん。それは本当です。本を読んで思ったことを書く、いいかえると本を読んだ自分の反応を書き残す。それが広い意味での読書感想文なので。
でもね。何度も何度も繰り返して耳タコかもしれないけれど、コンクールで賞を取る読書感想文に求められているのは、「反応」ではなく、「成長」なんです。
(というか、まちか先生いつも不思議に思ってるんだけど、世の中にあふれている読書感想文を上手く書くコツって、ほぼ上手い人の自語りじゃん……書けない人を書けるようにするアドバイスじゃないじゃん……再現性ゼロじゃん……そこを改善しないと読書感想文アレルギーって減らないと思うんだよね。というのが、まちか先生がnoteをはじめた理由です。だからガンガン手の内さらしていくよー!)
閑話休題。
話がそれちゃった。読書感想文で何を中心に据えるかってことよね。「好きな場面」「お気に入りのセリフ」「自分の経験」は、手がかりにしていいと思うの。ただ、賞を取れる読書感想文を意識したときには、これらは言及する箇所という捉え方になります。
「この部分について、詳しく書こう」と思えるところを2~3カ所ピックアップします。本を読むとき、付箋とかなにか印をつけてると思うから、そこから絞るといいと思います。
ピックアップできたかな?
そしたら、次にすることはこれ。↓
⑦自分の立ち位置を明らかにする
だんだん評論文っぽくなってきたよね。
まあ、賞を取る読書感想文(過去の受賞作)を読んでみると、「おーーこれ、評論文じゃん」って思いますよ。そういうことなんです。別の言い方をするなら、自分がどう思っているかに縛られず、他にはどんな考え方があるか、自分の意見にはどんな反論があるだろうか、……そういう、俯瞰した視点で物事を捉えられるかってことだと思うのです。
https://jp.indeed.com/career-advice/career-development/how-to-write-a-critical-analysis
あれー。良記事だから紹介したいのにサムネで出ない。インディードさんなにかしらそういう方針なのかしら。わからん。
仕方ないからわたしの記事を参考にしてね(仕方ないとは)。自分の意見、その他の意見、反対意見、と分けて解説しています。
読書感想文はその本を絶賛すれば良いってわけじゃないの。「⑤本の概要とともに作品の背景に触れる」でも少し触れましたが、その本の評価を知るってとっても大切です。
この本を取り上げて読書感想文を書こうとしている自分。作者・著者にまるっと賛同できるわけじゃない、でもすごく考えさせられる、だから読書感想文を書くことでもっと考えを深めたいと思った。そういうことだと思うの。
だからこそ、自分の立ち位置=自分はどういう風に考えている人間なのか、どういう角度で眺めてるのか、そういう自覚をしっかり書いておきましょうね。
⑧関連本を最低○冊読む・資料を探す
まだ読むのーーーって声が聞こえてきそう。
まあまあ、文句言わないで。コンクールで賞を取りたいなら、時間と力をそそぎこむ覚悟はあるの?って、まちか先生は最初に聞いたでしょう。あれ、言ってなかったっけ。
ちょろい裏技なんてありません。
本質を押さえた方法は、やれば当然結果につながる。
結果がセットになってるからちょろく見える。
それだけのことなんです。
あなたが読んだ課題図書は、おそらく”10代におすすめ”のものだと思うの。この記事をここまで読み進めたあなたなら、もう分かってると思うのだけれど、読んだ1冊でいったい何が分かるというんだろう?って思いませんか?
「本の概要」や「自分の立ち位置」の項目ともつながるのだけれど、あなたが読んだ本が”その分野”においてどういう位置付けなのかを意識するってとっても大事なんです。自分の意見を固めていくときにも重要なプロセスなんだよね、これって。他にどういう見方があるかな?なんかつかみどころがないなあ。このテーマは今後どうなっていくんだろう? 気になることいっぱい出てくるよね。文章にするにはもう少し手がかりがもっと欲しいと思いませんでしたか。
それ、すっごく大事な気付き!
”その分野”を立体的に捉えるためには、関連する本を読みましょう。
物語本の場合、作者の他の作品だったり、同時代の他の作家の作品だったり、近いテーマの作品を手に取ってみよう。テーマを理解するのに役に立ちそうな本もぜひ読んでみようね。
今まちか先生の近くにあったこちらの本で例を挙げてみます。お金って何だろう、お金の価値って何だろう、そこを掘り下げてみたい人はお金に関して調べてみよう。女性同士の友情、関係性が気になったら、対人関係に関する心理学コーナーを覗いてみるといいよ。生き方・働き方を考えるなら、ビジネス書にヒントがあるかもしれない。
そういうふうに関連本を探すとき、まちか先生がおすすめしているのは「図書館」です。新刊を中心に取り扱う書店も、もちろんいいんだけれど、図書館は知りたいことにアクセスできる場所だからだよ。
カテゴリーに分けられた本は、蔵書としての価値をクリアしたもの。概論から個別のテーマまで並んでいます。もしどの書架に行けばいいのか迷った時は、キーワードで検索もできるからとっても便利。あなたが読んだ本を持って、図書館司書さんに「この本に書いてある○○や××についてもっと詳しく知りたい」と相談してみると、丁寧にアドバイスしてもらえるよ。
ちなみにまちか先生が小学生だった頃、家にあった”世界の児童文学全集”で赤毛のアンを読んで「なんかいいなぁ」と思って、県立図書館に行ったのね。そんなふわっとした気持ちでも図書館司書さんは汲み取ってくれて、アンの続編、似ている他の児童書、アンの解説本、作者についての本、お菓子作りの本、ガーデニングと家づくりの本、子どもの病気とケアについての本、孤児に関する本、カナダのガイドブックなど、いろんなジャンルから一緒に本をピックアップしてくれたことを覚えています。お菓子作りは失敗の連続でやめちゃったけど、インテリアや暮らしに関する興味は今でも続いていてそれで仕事をしていたりする。自分のルーツの1つかなって思います。
脱線してごめんね。
「資料を探したい」という気持ちに寄り添ってもらえるから、図書館司書さんに相談することを強くおすすめしているまちか先生なのでした。本を借りて帰るだけでなく、資料をコピーして持ち帰ることもできるから、上手に利用してね。
資料について、もう少し補足。
読書感想文に書こうと思っている内容に関連したことで、現実に起こっている問題が何か調べてみよう。周囲の人たちに聞いてみるのもいいと思う。あなたより長く生きている大人は、もしかしたら何かヒントをくれるかもしれないよ。人によって興味関心は違うから、同じ質問をしてもそれぞれ返ってくることが違うのも、すっごく面白いと思う。「自分で考えなさい」って流されちゃうこともあるけど、めげないしょげない諦めちゃダメ。(突然のがんこちゃん)
特に自然科学系で読書感想文を書こうとしている子は、最新のデータや新しい取り組みなどを資料として使うのをおすすめだよ!
⑨持論を展開する
10のうちの9まできました。自分の意見を書こうというプロセスがここでやっと出てくるわけですね。「遅すぎん?」「もしかして書き方あんまり教えてくれない感じ?」というツッコミが聞こえてきそうです。
うん。この記事では文章術は出てきません。「大人っぽい文章を書きたいな」「かっこよく書けるコツが知りたい」そういうニーズがあるのは、まちか先生もよくわかってます。でもね、何度も繰り返すけど、コンクールで賞を取るなら、そういう付け焼刃なんて意味がないの。審査員にはバレバレなんです。騙されないよ!(まちか先生は審査する側の仕事もしてるからぶっちゃけます)(あ。コピペには騙されるかも。だって古今東西の受賞作文ぜんぶ目を通すとか不可能だし)
大人っぽくなくていいから、今の自分の全力で。
本腰入れて取り組んだ軌跡がかっこいい。
まちか先生はそう思っています。わたしが思ってるだけじゃなくて、これってけっこう重要なことだから忘れないでね。
「書き方」に関しては、こちらのテーマ型の作文を参考にしてください。読書感想文だけれど、これに近いから。自分の考えを固めていくプロセスだからね。
この本を読んで、こういうことを考えました、いろいろ調べてみました、自分の身近な出来事ともつながっていると知りました、この問題について考えられる課題がいくつかあります、新しい視点を得てこう考えるようになりました、……。
ざっくり書くとこういう流れです。
持論を展開するというのは、この↑太字部分にあたります。自分の立ち位置を明らかにしてこの問題について一石を投じるなら、という感覚で取り組むといいと思うよ。自分なんかが…まだ学生なのに…なんて遠慮する必要はないの。フレッシュな視点はとても素敵だと思う。それに、今の自分にしか書けない文章を書き残してるって、すっごいことだと思わない?
⑩段落構成に時間をかける
いよいよアドバイスもラストだね。
最後にしっかり取り組みたいのは、段落構成。押さえておきたいのは、基本の書き方。↓永久保存版と掲げた通り、普遍的なメソッドなのでまずはここからはじめましょう。
そのうえで、どう崩していくかだよ。
基本形を自分の言いたいことが伝わるように、アレンジする。それが「崩す」。よくいわれる「工夫」より、型を意識している点が特徴かなと思います。
この本で読書感想文を書こうと思った動機
本の概要や作品の背景
言及したい箇所を取り上げる(テーマ作文の書き方を参考に、項目ごとにその意義を考えたり自分の解釈を書く)
自分の体験談に絡める(すでに起こった出来事を消化する。この本を読み、テーマについて考えを深めたから出来るようになったというBEFORE→AFTERを描く)
この本で読書感想文に取り組んだことで得られたもの、今後について思いを馳せる
1のところ、つまり冒頭に、本の中で作者がいちばん言いたかったことや、最初に読んだときの印象などをドラマチックに持ってくるとインパクトが生まれるよ。きっとそこに、「この本で読書感想文を書こうと思った強い動機」が関わってくるはず。
3のところは、言及したい箇所の数で段落が増えていくよね。2であらすじを書かなかった代わりに、取り上げたいトピックに言及するタイミングで「○○の×××な△△△では」という感じに、話の流れを凝縮して引用します。1つの話題に対して、本の中のあちこちからピックアップしてもOK。本に出てきた順に感想を書いていくと、こういう束ね方ができないよね。抽出する視点を持って書くと、作文の完成度が上がるからぜひやってみて!そういうふうに、引用→持論を展開、という流れを複数回繰り返します。
4はテーマを自分事として捉えるというステップです。人によっては、「3」より前に「4」を持ってくる方が書きやすいかもしれません。それは選んだ本や取り扱いたい内容によって変わってくるから、自分で決めていいんだよ。「3」「4」「3」「4」と繰り返すパターンもあるしね。
「②まずいつものように書いてみる」のところで書くネタごとに紙(A4サイズ)を分けて書き出していくとアドバイスしたのは、段落構成の時に組み立てやすくなるからなの。付箋よりかなり大きいから、余白にどんどん書き足したりできるしね。おすすめだよー!
5の振り返りが、読書感想文にとって大事なポイントです。「③弱い部分を洗い出す」のところで書いた、「読んだ本を利用して、自分の成長物語を書く。」その総まとめが、「5」にあたります。自分自身を見つめ、本を通して世界を広げていくこと。新しく見えた景色、そのドラマを聞かせてね。それが、コンクールで賞を取れる読書感想文なのです。
あとがき
いつもいつもやたらと記事が長いまちか先生ですが、やっぱり今回もやらかしてますね。8800字です。みんなここまで読んでくれてありがとう!おつかれさま!
わかる。ほんとごめんね!せめて7月にこの記事をアップできたら良かったんだけど。まちか先生、6/29にnote始めたばかりなの。めちゃめちゃ急いで、いろんな作文の書き方について記事にしてきたんだけど……。どうしても、基本的な書き方→そのQ&A→発展的な書き方、という流れで伝えていきたかったから最後になっちゃった。
でもこの書き方は、今年の夏だけでなく、これからもずっと使える普遍的な方法だから。心のどこかで覚えておいてもらえたらうれしいです。
そして、まとめとして書いておきたかったことを記して、この記事を終わりにしようと思います(^^)
作文を教えていると、生徒さんの合格歴や受賞歴について聞かれることがよくあります。すっごく聞かれる。まあ、気になる気持ちも分かる。でも、まちか先生はそれらを一切公開していません。理由は、
まちか先生は、ちょっと偏屈なのかもしれない。一人ひとりの頑張りを勝手にわたしの実績にしない、という気持ちはポリシーにもしているほど大切にしているの。詳しくは↓の2記事にも書いてるから、気になる人は読んでみてね。
みんな、作文頑張ろーね!
応援してるからねーーー!