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ニコラ・ド・スタール、調和の果てに

ニコラ・ド・スタール、調和の果てに

近頃の息苦しさは梅雨の煮詰まったような空気のせいだろうか。
何だか息をするたびにごろごろとした夾雑物が肺に取り込まれ、そのまま大きな花に生長してしまいそうな季節である。

先日、初めてニコラ・ド・スタール(1914-1955)という画家を知った。
日本ではあまり知名度はないが、作品のどれもが力強さと繊細さをあわせ持つ、未だかつて見たことのない抽象画だった。

わたしは部屋に「飾れる絵」と「飾れな

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「世紀末ウィーンのグラフィック」展

「世紀末ウィーンのグラフィック」展

くすんだ黄金色の、長い手足の女性たち。
散りばめられた星や月、うっとりと閉じられた瞳。
まちがいなく同じ世紀末芸術であるのに、フランスのそれとは何かが違う——

退廃、幻想、神秘、異教といったフランスの世紀末文化に親しんでいただけに、ウィーンのグラフィックから発される力強い「大義」に圧倒されてしまった。
デザインの表象は似ているのに、決して本質は唯美主義ではない。むしろ、正反対にある。

19世紀

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