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高齢者の不眠と物忘れ、体調不良はあなどれない!

「私の心が弱いから眠れなくなっちゃって」


80代になる実家の母を連れて、睡眠障害外来に来ている。
そして今、モーレツに困っている。

「私はどうして眠れなくなったのかしら、ダメダメよね・・・」
「もう皆に迷惑を掛けて申し訳ないわ・・・」
「普通の人になりたい・・・」
「このまま認知症になるのかしら・・・」

家でも言っていることなので、本人が本当に思っている事なのだが・・・
お願いだから睡眠障害外来の待合室で言うのは止めてほしい。

今時不眠症なんて普通だから!

繊細で頑張りすぎの現代人は、多かれ少なかれ、睡眠に悩んでいるものである。
むしろ「私の方こそ、惰眠をむさぼってごめんなさい」とあやまるレベルだからね!

きっかけは睡眠導入剤?

母は、昨年の秋から年末にかけて、趣味でやっている会の発表に向けて、かなりハードな練習をしていた。
そこにプライベートでもトラブルが多発したことが、今回の症状の引き金となってしまったようだ。
ストレスは時間差で身体に現れるようで、半年ほどしてから不眠症になってしまったのだ。

聞いている自分も、そんなに続けば眠れなくなるわぁと思うような出来事の連続である。そのため、年明けから6kgも体重が減ってしまったらしい。

しかも皮肉な事に、症状が酷くなったのは、かかりつけ医で高血圧の薬をもらうついでに、睡眠導入剤を出されてかららしい。
もともと薬嫌いで、出来るだけ薬を飲まないようにしている母にしては珍しいなぁと思って、くわしく経緯いきさつを聞いてみると・・・

軽い気持ちで「最近眠れない」ことを相談したらしいのだが、その症状を聞いた医師が、こちらから頼んだわけでもないのに、親切に薬を処方してくれたようだ。
その薬が合わなかったことから、次々と薬を変えることになり、それがまた、本人にとってはストレスとなったようで、
「自分の我が儘で薬を変えてもらって悪い」とどんどんドツボにはまる結果となったらしい。

元々とても真面目で不安が強く、戸締まりを何度も気にしたりするタイプ。
それに加えて、「期待に応えたい」「前向きになれることを良しとする」昭和の価値観をもっている高齢者である。

そんな価値観のまま、母親は自分を責めるのだ。
『睡眠障害』専門外来の待合室で!
「眠れないから、半分○チガイになったみたい・・・」
(周囲からの視線が痛い・・・)

高齢者の不眠からくる体調不良は進行が早い

眠れないことがストレスとなり、増々眠れないという悪循環に陥り、緊張からか血圧もドンドン高くなっている。

母は、高齢女性に多く見受けられる薬の感受性が強いタイプである。
そのため、もらった薬を服用しても、効能よりも副作用の方が強くでるため、結局飲めなくなってしまった。
本当に1ヶ月も立たずに、ストンと悪くなっていく。
介護の責任者家族としては、とても怖い。

睡眠不足だと、記憶力も下がるらしい。
それもあってか、めちゃくちゃネガティブになっている。

「この間、30年くらい前の知人に連絡を取ろうと思ったんだけど、電話番号が思い出せなかったのよ。もう、すっかり馬鹿になってしまって・・・」
「この前もお釣りの計算が遅くなってね。あぁ、このまま認知症になるのね・・・」

そんなあなたの娘は、最初から電話番号は覚えられないし、覚えようと思ったこともないです。
忘れたと言っていた電話番号も、市外局番が変わっていたことが原因だったからで、自分の市ならともかく、余所の市外局番なんて知りませんけど・・・何か!?
最近はキャッシュレス決済の恩恵をこうむっているので、お釣りなんか計算したのはいつのことやら。

カウンセラーさんが、母親に「個人によって『普通』はそれぞれ違います」と言っていたが、本当にそうだと思う。
人によっては「最初から無い」悩みだもの。

介護と育児は本当に似ている

不安があるとき、高齢者は何となく子供っぽくなる。
「今夜も眠れないかもしれない」という不安におびえる母をマッサージすると、わずかでも寝付けるようだ。

朝方に夢を見て震えるので、一緒の布団に入って抱っこをせがまれる。
私の魅惑の前足(パンダみたいらしい)がお気に入りだ。

思えば、孫の寝かせ付けも抱っこだった。
「介護」と「子育て」は本当によく似ている。
もうすぐ娘が第二子を出産するために里帰りしてくる。
子供3人(母・1歳児・新生児)と、出産後の娘のケアが重なるため、今から少し不安だが、頑張らないとね。

高齢者の物忘れへの対応は

母に対しては、意識して「穏やかな物言い」と「笑顔」を絶やさないように心掛けている。
以前から福祉や医療系の人達の笑顔に共通点があると思っていたけれど、こういうことなのね。

カウンセラーさんの話では、高齢者の話しは遮ったりせずに、否定しないで受け止める事が大切だそうだ。
本人が悩みにばかり集中しないように、気持ちが明るくなる方向に心が向くように手助けをすると良いらしい。

お母さん、物忘れしたっていいよ。
一緒にやっていけば大丈夫。
誰だって忘れること、あるよね。

そんな娘の言葉を聞いて、母も少し安心してくれたのか、涙ぐんでこう言う。

「こんなに良い娘に、成績が悪いと怒ってごめんね」
「部屋の掃除をしないからって、アニメのコレクションを捨てちゃってごめんね」
「登校中に鞄を落としたことに気づかずに、学校まで行ったことを叱ってごめんね」
「朝寝坊したから修学旅行のバスに乗り遅れて、先生に迎えに来て貰ったことを叱って悪かったわ」

・・・などなど。もう出るわ出るわ。
当の本人も忘れているような私の黒歴史を思い出しては「叱ってばかりで悪かった」と謝ってくる。

もうしっかり覚えてるじゃん!
しかもドンドンと遡ってるんですけど!

「仮病を使って学校を休んだ事を頭ごなしに叱ってごめんね。もっと寄り添ってあげれば良かったわ」
「駄菓子屋で無駄遣いしたからって、お小遣いを減らしてごめんね」
「おねしょが・・・」

母の話はどこまでも続く。

高齢者の話しは遮らず・・・否定せず・・・ううう・・・。
「お、お母さん!新しい趣味を見つけるとかどうかな?」

『note』っていう、とっても楽しくて、友達もできるおすすめのものがあるんだけど・・・やってみない?
語彙力もあるし、きっと私より人気でそうな気がするんだけど・・・。




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