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広州の託児所を訪問!中国の幼児教育ってどうなっているの? 〜若き園長の挑戦!〜
12月5日に、第6回広州まちかどセミナー「広州下町の託児所を訪問!中国の園児たちってどんな風に過ごしているの?」を実施しました。
セミナーを引き受けてくれたのは、安安託児所の若き園長・ブンさん(馬慶雯さん)。今回は、このセミナーの舞台裏をレポートしたいと思います。
1.下町で34年続く託児所
「安安託児所」は、広州市の茘湾区と呼ばれるエリアにあります。この茘湾区というのは、広州市の中心地から見たら西側に位置します。広州市の中心には、珠江と呼ばれる大きな川が流れていますが、その珠江が北から流れてきて、大きく東側に蛇行する場所、そのL字の角の部分にあたるエリアになります。
そのため、清末の時代からは貿易拠点としても栄えました。元々、広州市の中心は、城壁に囲まれた場所の中にあり、それは今の行政区分で言えば「越秀区」というエリアと重なります。茘湾区は、その行政の中心である城壁の西側に栄えた商人の町という訳です。
そのため、この辺りには、古い建物が密集しており、「西関文化」と呼ばれる古い伝統的な文化を色濃く残しているエリアになります。
今回、広州まちかどセミナーを引き受けてくれた「安安託児所」は、この茘湾区の住宅街の片隅にあります。下町にある「地域密着型の託児所」、そんなイメージがピッタリの託児所です。
※ブンさんには、先日、茘湾区のグルメも紹介してもらいましたので、こちらも併せてご覧ください。
「安安託児所」は、1987年に設立。今年で34周年を迎えます。
現在の園長であるブンさんの両親が始めた私立の託児所になのですが、開園して数年後にお父さんが病気で亡くなってしまいます。一時は、閉園も考えたそうですが、その後、親戚の助けもあり、母親が今まで切り盛りをしてきたとのことです。
住宅街の中にある校舎は、建物の一部を施設として改造したもの。1階〜2階に教室が並んでおり、3階に図書室やダンス用のスペース、給食の厨房などがあります。また、決して大きくはないのですが運動場が併設されており、樹齢100年を超える大きな樹が児童の成長を見守っています。
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ここは私立の託児所とはいえ、規模や効率を追い求めた経営ではなく、公立と比べてもあまり大差ないような低廉な学費で、地域の子どもたちに優れた幼児教育を提供してきました。現在も児童の数は100名ちょっと。最も多かった時でも200名くらいの児童数という規模です。
かつて、ここから学んだ児童の中には、優秀な成績をおさめて優れた大学に進学して活躍している人もたくさんいるそうです。こうして大人になったかつての生徒の中には、ここでの体験が良かったと、自分の子供をわざわざ入園させにくることもあるそうです。
まさに地域密着型の人情味ある託児所といった感じがしますね。
2.園児たちの生活
園児たちの1日の生活は、下の図のような感じです。
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中国では、通常、通園バスのようなものはなく、朝になると親や祖父母が児童を連れて登園してきます。一人一人手の消毒をして、健康状態を確認して登園完了です。朝の時間は早いですけど、託児所が朝ごはんを提供してくれるので、忙しい両親にとってはありがたいですよね。
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朝の体操と朝ごはんの時間が終わると、次は「授業」。そう、「授業」なんです。
中国では、やはり「託児」より「教育」の要素を望む保護者も多く、安安託児所では、以前から「教育」の部分に力を入れているそうです。社会のマナーやルールから、漢字を読んだり、簡単な計算ができたり、漢詩をおぼえたり、英語の歌を歌って踊ったり…といったことまで教えているそうです。
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授業が終わったら、後は果物の時間(これは日による)があって、屋外活動、お昼ごはん、お昼寝と続きます。広州の他の託児所の中には、屋外のスペースが確保できていないところもあるので、小さくても運動場があるのは、児童のためにも良い環境だ、と園長のブンさんは語ります。
また、樹齢100年を超える大きな樹が運動場に影を落とすため、広州の強い日差しがギラギラと降り注ぐ中にあっても、運動場には木陰ができ、子供たちが元気いっぱいに遊んでまわることができるそうです。
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さて、こうした託児所での園児の生活ですが、日本と一番違うのは、「お昼寝」時間の長さではないでしょうか。12時〜14時半まで、実に2時間半もお昼寝が設けられています。
実は、中国は元々、昼寝の習慣が残っている国で、官公庁などでも昼休みが2時間近くあり、昼食に1時間、昼寝に1時間あてられているといったことが珍しくありません。日本でも最近は昼寝の効能が言われるようになってきていますが、ここまでしっかり昼寝の時間を取るところは、まだ少ないでしょう。
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そして、お昼寝から目覚めると、再び屋外活動。バレエやバスケやダンスに歌、様々な活動があって、子供たちは伸び伸びと学んでいます。
16時になると、もう退園の準備。仕事を終えた両親や祖父母が児童を迎えにきて、1日が終わります。話を聞いているだけで、毎日楽しそうに過ごしている児童たちの姿が目に浮かぶようですね。
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それにしても、驚くのは、園内で、①朝ごはん、②朝の果物、③昼ごはん、④おやつと、4回も食事の提供があることですよね。1日に4回も、100名以上の児童の食事を用意するのは大変でしょうね。
ブンさんには、1週間の献立の例を見せてもらいました。保護者は、この献立を参考に、家での子供の食事バランスを考えるそうです。中国語のままですが、参考までにアップします。八宝粥に揚州チャーハンに饅頭…、さすが中国、美味しそうです。
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3.若き園長・ブンさんの奮闘
当日のアーカイブをYouTubeで流しているのでご覧いただきたいのですが、ご紹介してくれている園長・ブンさん、実は今回の紹介を全部日本語で行ってくれました。というのも、実はブンさん、2年前の2019年まで日本の筑波大学で学ぶ留学生だったのです。
元々「ちびまる子ちゃん」などの日本のアニメをきっかけに日本が大好きになったというブンさん。大学でも日本語を専攻しており、学部を卒業した後は、どうしても大好きな日本に行って暮らしてみたいと、日本の大学院で研究を続けることを選びます。
国際地域・社会学を専攻として、ブンさんが行った研究は、中国人華僑が建てた碉楼(楼閣)で有名な広東省の世界遺産「開平」について。実は、ブンさんの祖母は開平出身で、当時は、観光開発の波に飲み込まれ変化する「開平」について興味関心を寄せていたようです。
また、筑波大学では日中交流にも興味を持ち、日中交流サークルで学生や地域住民に中国語や中国文化を教える活動もしていました。「ブンちゃんのおかげで中国に興味が出たよ!」と言われるのがとても嬉しかった、と話します。
そして、大学院の卒業が迫った頃、託児所の園長である彼女の母親から、ぜひ託児所を継いでほしいと頼まれ、中国への帰国を決めます。しかし、当初は折角身につけた日本語を生かす道を諦められず、広州の日系貿易会社へ就職したということです。
ところが、そこへ襲ってきたのが新型コロナウイルスによる大混乱でした。防疫措置に対する対応で憔悴する母親や、混乱の中、已む無く閉園を決める同業者を見ている内に、ブンさんにはある決意が生まれてきます。
それは、
「私が園長を継いで、この素晴らしい託児所を残したい!」
ということです。
そして、そのことを母親に伝え、よく話し合った上でこの秋に母親は引退。ブンさんは、若くして園長になりました。
「私は『幼二代』なんですよ!」と笑って話すブンさん。
『幼二代』とは、幼稚園経営者の2代目という意味で、「富二代(金持ちのボンボン)」といった言葉をもじった造語だそうです。周りには、やはり若くして園長を引き継いだ同年代の幼稚園経営者がいて、自分達が抱える共通の苦労を、そんな風な冗談に変えているようです。
「幼二代」のブンさんの目の前には問題が山積しています。
拡張の余地のない施設は、既に老朽化しています。社会の発展とともに急速に変化する幼児教育へのニーズにも対応しきれているとは言い切れません。コストは上昇するのに学費が低いままだと経営改善の糸口は見えません。
都心部には、高い学費を受け取る代わりに、最新設備の清潔な環境で、外国人教師を含めた優秀な教師による高度な幼児教育を提供するような幼稚園が続々とオープンしています。下町で、低額な学費のまま、どこまで地域密着型の託児所が続けられるのか…、不安は尽きません。
「それでも…」とブンさんは、ゆっくりと力強く語ります。
「私は、自分も過ごしたこの託児所を残したいのです。大きな樹が子供たちを見守るこの環境を、父と母や先生たちが築いてきた伝統を、これからも残していきたいのです。私は、幼児教育を学ばず、日本語を学びました。でも、日本語を学んだ私だからできることがあるはずです。今度は、幼児教育の分野でも日中交流をしてみたいです。それに、日本の幼児教育を取り入れた広州の託児所なんてできたら素敵だと思いませんか?」
正直、私は、この時、グッときてしまって「今のブンちゃん、とても格好いい…」と返事するのが精一杯でした。
まだまだ経験が浅い若き園長さんですが、こんな素敵なブンさんが一生懸命に取り組む「安安託児所」。ブンさんと幼児教育の国際交流をしてみたいと興味がある方がいらっしゃいましたら、是非是非、当会までご連絡ください。
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【中国】広州下町の託児所を訪問!中国の園児たちってどんな風に過ごしてるの?「第6回広州まちかどセミナー」(2021 12 05)
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《 ライチ局長の勝手にチャイナ!vol.22 》
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